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ネダム・オヌオハ。大西洋を越えても続く“赤い悪魔”との因縁

2019.11.11

名優たちの“セカンドライフ”

欧州のトップリーグで輝かしい実績を残した名優たちが、新たな挑戦の場として欧州以外の地域へと旅立つケースが増えている。しかし、そのチャレンジの様子はなかなか伝わってこない。そんな彼らの、新天地での近況にスポットライトを当てる。

from USA
Nedum ONUOHA

ネダム・オヌオハ

 幼少期にナイジェリアからイングランドに移住。学生時代に陸上100mで全国2位となり、Aレベル(大学進学の試験)でも好成績を収めた。そしてマンチェスター・シティでプロデビューを果たし、イングランドU-21代表歴まで有する――こんな履歴書を書ける者は、世界広しと言えどネダム・オヌオハしかいないだろう。そして、彼の職歴欄の一番下に書かれているのが、現所属のレアル・ソルトレイクである。

 シティで選手の道を歩み始めたオヌオハは、恵まれた身体能力を生かしてCBや右SBとして定位置をつかみかけた。だが、突然中東のオイルマネーが注入されて状況が一変。大量補強を行うクラブで出番を失い、2012年にQPRへと移籍した。

 新天地ではレギュラーとしてフル稼働し、主将も任された。ところが、クラブがファイナンシャル・フェアプレーの対象となり、その煽りを受けてしまう。契約更改で、基本給がない出場ボーナスだけの契約を提示されたのである。「3年間、ほとんど休まずにやってきたのにおかしいよ……」と契約延長を拒んだオヌオハ。国内や欧州のクラブからも誘われたが、「何か違うこと」を求めて昨年9月にアメリカへ渡った。

違いは「山があるかないか」

 昨季はMLSのシーズン終盤戦に加わり、年間王者を決めるMLSカップ・プレーオフにも出場。惜しくも西カンファレンスの準決勝で涙を呑んだ。2年目となる今季はDFラインのリーダーとして確固たる地位を確立。チームもプレーオフ進出を決めた。

 私生活についても「マンチェスターを思い出す。山があるかないかの違いだね」とソルトレイクがあるユタ州を気に入っているようだ。ただ、山があるのはユタ州だけではない。今季の前半戦も「山あり、谷あり」だった。そして、その「谷」の部分には彼にとっての宿敵マンチェスター・ユナイテッドのOBが深く関わってくる。

 3月のリーグ第3節で、チームは5-0の大敗を喫した。今季唯一の5失点。悔しい結果だが、それ以上に悔しいことがあった。「ルーニーがハットトリック!」――DCユナイテッドのエースに3ゴールを許したのである。

 さらに、4月のLAギャラクシー戦でもユナイテッドOBに苦汁をなめさせられた。今度はイブラヒモビッチに決勝点を奪われた上に、試合中の口論がヒートアップして罵倒までされてしまったのだ。試合後オヌオハは、「60分過ぎから、あいつは俺に『ぶっ潰してやる』と言ってきた。そういう態度は見過ごせない」とイブラからの謝罪を拒絶。控え室で一触即発となり、スタッフが慌てて間に入ることになった。

イブラヒモビッチに詰め寄られるオヌオハ

 実はクラブ内にもゴタゴタがあった。レアル・ソルトレイクは審判への暴言を理由に監督を解任したのだが、同氏から不当解雇の訴えを起こされたのだ。それでも、選手たちは目の前の戦いに集中しないといけない。10月下旬からのMLSカップ・プレーオフでは“ユナイテッドOB”との再戦もあり得た。だが、残念ながらチームはカンファレンス・セミファイナルで敗れ実現には至らなかった。

 きっとオヌオハは、自身の初優勝のために目の上のたんこぶである“赤い悪魔”を倒さないといけないのだろう。そういえば、レアル・ソルトレイクが2009年に王者に輝いた時も、決勝の相手となったLAギャラクシーには世界一有名な“ユナイテッドOB”がいたのだった。


Nedum Onuoha
ネダム・オヌオハ

(レアル・ソルトレイク)
1986.11.12(32歳) 183cm / 95kg DF ENGLAND

2004-10 Manchester City

2010-11 Sunderland on loan

2011-12 Manchester City

2012-18 QPR

2018- Real Salt Lake (USA)


Photos: Getty Images

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ネダム・オヌオハ

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。