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「輸出大国」はどこ?統計データから学ぶグローバル移籍市場の今

2019.10.28

 グローバル化が進行することで、才能の宝庫と呼ばれる南米の国々から多くの若手が「圧倒的な経済力を誇る」欧州に移籍することは珍しくなくなっている。アフリカやアジアにもスカウトが集結する現代の移籍事情を読み解く上で、統計データを使ったネットワーク分析は新たな視点を提供してくれる。

 スイスのヌーシャテル大学で博士号を取得しているラファエレ・ポリは、世界主要139のプロリーグにおける12年間(2005年6月~ 2017年8月)の膨大な移籍データを集計・分類し、『The transfer of footballers: a network analysis』という論文を発表した。彼のデータによれば、移籍市場において最も多い選手の「輸出元」となっているのは、ブラジル(1210人)、アルゼンチン(760人)、フランス(732人)の3カ国だ。

 圧倒的な選手数を世界に送り出す王国ブラジルにとって、最大の移籍先はやはりポルトガル(219人)である。移籍する選手の年齢も若く、その全体平均27.3歳に対し、ポルトガルに限れば25.2歳。同国が欧州挑戦の“入り口”となり、若手プレーヤーの登竜門として機能している。例えば今季マンチェスター・シティからユベントス入りしたSBダニーロも、20歳だった2012年にサントスからポルトに来てリーグ2連覇に貢献、レアル・マドリーへと引き抜かれた。最新のステップアップ例といえば、この夏Rマドリーに移籍金5000万ユーロ(約60億円)で加入した21歳のエデル・ミリトンだろう。2018年8月、ポルトがサンパウロから700万ユーロで獲得したCBは、たった1年でその価値が7倍以上に跳ね上がったのである。

レアル・マドリーのエデル・ミリトン

 そして興味深いのは、ブラジル人選手の輸出先としてポルトガルに次ぐのがJリーグであることだ。全体の5.8%(71人)が日本へと向かっている事実は、Jリーグとブラジルのコネクションがグローバルな視点でも強固であることを示唆している。また、例えば名古屋グランパスでガブリエル・シャビエル(26 歳)、ジョアン・シミッチ(26歳)、エドゥアルド・ネット(30 歳)、ジョー(32歳)が活躍しているように、ブラジル人が「即戦力」として求められているJリーグでは、当然ポルトガル行きのケースよりも移籍年齢が高くなる傾向にあり、その平均は27.4歳だった。

アルゼンチンと中南米、フランスの若さ

 一方、アルゼンチンの場合はブラジルと異なり、チリとメキシコ(各98人)への移籍が最も多いという。移籍人数の上位10カ国のうち8つを中南米の国々とアメリカが占めた。移籍年齢はいずれも平均28歳前後と高めで、ここには中南米におけるアルゼンチン人プレーヤーの「即戦力」としての役割が見えてくる。なお、トップ10内の他2つはスペイン(69人/3位)とイタリア(44人/4位)で、特にスペインに行く選手は平均年齢27歳と比較的若い傾向にあった。

 欧州の育成大国として知られるフランスの移籍先No.1は、今夏にも22歳のMFタンギ・エンドンベレ(リヨン→トッテナム)などが渡ったイングランド(92人)。続くのはベルギー(76 人)で、直接4大リーグに移籍することが難しい選手が同国を経由してステップアップを狙うケースも多い。イタリア(47人)、スペイン(42人)、ドイツ(35人)にも多数を輩出するフランスは、移籍選手の平均年齢が全体で25.8歳と若いのが特徴だ。この結果は彼らの育成力を象徴しており、今後もフランス出身選手がトップリーグに移籍する傾向は加速するだろう。

トッテナムのタンギ・エンドンベレ

 日本人の若手選手が欧州から狙われる今、Jリーグも「輸出元」としてどのような立ち位置を目指すのかが重要になってくる。移籍金を十分に確保するには、各国の事例から学んでいくことも必要になってくるのではないだろうか。


Photo: Getty Images

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Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。