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井筒陸也の挑戦。Jリーガーがコミュニティを創設した理由

2018.12.19

井筒陸也(Ziso.)インタビュー

今年の始めに現役Jリーガー・井筒陸也(@izz_izm)が公開したブログ記事は、その完成度や内容の独自性から大きな話題を呼んだ。ブログはその名も「敗北のスポーツ学」。ほどなくして、現役選手を中心としたオンラインコミュニティ「Ziso.(ジソ)」の立ち上げも発表された。前例のない活動を続ける井筒陸也とは何者なのか? サッカーについて広く深い思考を巡らせる彼の脳内をのぞかせてもらった。


サッカー選手は「個人事業主」。情報発信をする理由

―― まずは井筒さんがnoteでの情報発信を始めた理由について伺いたいと思います。SNSの普及もあって情報発信を行う選手は増えていますが、現役選手が自分でメディアを立ち上げてメッセージ性の強いコンテンツとして発表するという形は新鮮です。

「大学時代にリレーブログで言葉を発信する機会があって、その頃から考えを発信することには手ごたえを感じていました。文章を書くのも読むのも好きでしたし。あと、僕たちJリーガーの考えていることにはメディアや世間の方々のイメージ通りでない部分もあって、予想されるより深く考えたり悩んでいたりするんだなと気づいて。そこを可視化することは、僕たちはもちろん社会にとっても価値があるんじゃないかと考えました」


―― そうしたことは徳島に加入した当初から考えていた?

「そうですね。加入1年目は、試合どころかベンチにも1回も入れなくて、僕なりに葛藤して努力していましたが、それは試合に出ないと表現できない。悔しくて、自分の思いを伝える場がほしいと感じていました。ただ、結果を出してから言わないと納得してもらえないとも思っていて」


―― 情報発信に対して、クラブは「自由にやって良い」というスタンスでしたか?

「はい。強化部長や広報とは、普段からよくコミュニケーションをとっています。クラブには、僕はこういう人間でこういう考えを持っているということを加入当初から伝えて、今加入して3年ですが、良い関係を築かせていただいています」


―― 今回広報の山口さんを通して取材を申し込んだところ、「井筒に関してはもう完全に信頼しているので彼と直接やりとりしてもらっていい」と言われて驚かされました。

「山口さんは歳が1つ上で、彼も自分と同じ関西の大学サッカー部だったので共通の話題もあって、僕の考えを話しています。クラブ内の人間にまず信頼してもらうことが大切です。あと、鶏が先か卵が先かじゃないですが、自分から積極的に発信をしていると、同調してくれる人が集まります。広報の人も僕の考えに理解を示してくれて、お互い協力できることがあったらしようという形になっています」


―― 現役選手のクラブ外での活動には難しい部分も多いですよね。

「サッカー選手は結局のところ個人事業主で、自分で健康保険も年金も払っています。そうなるとクラブ外での活動について、そもそもどこまで会社の許可が必要なのだろうと考えます。とはいえ僕自身の活動も前例がないので、完璧なジャッジを求めるのは酷だなという気もします。なので僕が前例を作るつもりでやっていきたいです」


―― クラブの特殊な立場も理解できます。選手が不祥事を起こしたらクラブの責任になり、スポンサーが離れるといったことも起きかねない。

「個人事業主としてのサッカー選手は、サッカーという技能を切り取って雇ってもらっているわけで、他の技能があれば他の会社で働いても別に良いという考え方もできるんじゃないかと思います。ただ現状選手はクラブに帰属するものというイメージは強いし、選手側もそういう認識です。そこは逸脱し過ぎないようにしないといけません。でも今の時代を考えても、副業をやったり、小さく動くみたいなことは大事になってくるはずです。そもそもJリーガーが真剣に考えて動くこと自体は、クラブにとってメリットでしかない。僕が徳島ヴォルティスの看板を背負ってメディアに出ることで、徳島にこういう選手がいるんだと思ってもらえれば、それは良いことです。僕のブログを読んで興味をもって、徳島の試合をDAZNを見てくれるようになったという人もいます」

「敗北のスポーツ学」はいかにして生まれた? サッカー×ビジネス思考

―― 井筒さんのnote(https://t.co/TIihKKiRaS)ですが、まず「敗北のスポーツ学」というタイトルが印象的です。

「ロゴデザイン含め、ブランディングに詳しい方と一緒に考えました。逆説を1つの文言に含むとインパクトがあるというアイディアがあって。スポーツは勝利が絶対的な価値と思われがちだけど、あえて敗北という言葉をくっつけると『新しさ』を感じてもらえるんじゃないかということで、戦略的につけたタイトルです」


―― フットボリスタで記事を書かれている河内一馬(
@ka_zumakawauchi)さんも井筒さんと同じく20代で、note(https://note.mu/kazumakawauchi)での発信をされています。お二人とも文章が上手で、ネット世代の新たな才能だなと感じます。

「僕も河内さんの記事は読んでいます」


―― お二人の共通点として、ブランディングや戦略的な思考がありますよね。

「そうですね。名前を売るような活動はどうなのかと言われることもありますが、そう切り取られると本質的でない。目に留めてもらうための戦略性は重要です。最初に目に飛び込むタイトルやブランドロゴで、おっと思ってもらう必要がある。『誰かとご飯行きました』や『勝ってうれしかった、負けて悔しかった』以上の話を発信しようとしていることを読み手に伝える。それがフックになって今まで見てくれなかった人に見てもらう、ということが大事です」


―― そうした戦略もあって、最初の記事「『結果がすべて』なんて大嘘」は話題になりました。大学時代の日本一達成に果たして意味があったのかと問う衝撃的な内容です。これは当時から思われていたことだったんですか?

「当時から思ってましたね。当時は、大学生で周りがインターンや留学をしている中わざわざサッカーをする意味を、日本一という目標に据えてサッカーに打ち込んでいました。結果夏の大会で日本一を達成したんですが、報われた感じがそんなになく、どこか違和感があって。後日、主務だった同期がその時のチームの集合写真をミーティングの時に持ってきて、『この写真見たら全然誰も笑ってなくない?』という話になって。『あ、やばいな』と思ったという」


―― すごい気づきですよね。他のブログ記事では、本などから得たマネジメントの知識をサッカー部内でキャプテンとして実践していたと書かれていますが、そういう視点がないとその発想にはならないなと。

「天邪鬼な性格だし、逆張り的に誰もやってないことをやろうという考えが強いんです。ビジネスのアイディアを大学サッカーに落とし込む作業は誰もしていないから、やってみようと。とはいえ自分が主導したというより、4年生全員で、その行為の意味まで考えてやるということを大事にしていました。既存のスポーツ組織のトップダウン方式ではなく、個人や小さいチーム単位でそれぞれの考えをもとに動いていくというやり方にしたかったので。ただビジネス書のアイディアを直接落とし込めるわけではないため、そこの変換は僕がやりました」


―― 体育会系的な考えが強いスポーツ界とビジネスの理論の間には、小さくない隔たりがありますからね。

「スポーツ界は結果や現象がすべてで、何でも一発勝負になりがちです。成果が出た時も出なかった時も変わらず、『分析』をするということができない。勝ったからこのやり方や監督は正しかった、負けたら否、となる。ビジネスでは、言語化、抽象化することで、結果が出たけどその要因としてこのプロセスがあった、結果は出なかったけどこのプロセスは合理的だった、というような話ができます。その違いはありますね」


―― 大きな大会で優勝した監督のメソッドが正しいと評価されがちですしね。

「箱根駅伝の青学の(原晋)監督のようにビジョナリーな人の考え方は面白いと思います。そういう人と、僕のようになぜか結果が出ちゃったという人は違う。僕も日本一になりましたけど、いまだになぜ日本一になれたのかは正直わからない部分もあります。変数も多いですし。でもそこで自分で仮説を立てて、フィードバックをして、PDCAを回してというのは、やってみると意外とスポーツでもできるんだという実感がありましたね」

© TOKUSHIMA VORTIS


サッカーの深い理解が、社会への貢献につながる

―― 最初の質問に戻ります。noteでの情報発信を始められた理由には、日本のサッカー界、ひいてはスポーツ界を良くしていきたいという思いもあるのですか?

「自分が社会やサッカー界に変化を、というのはすごくおこがましい話ですが、そういう想いもあります。僕はサッカー以外の領域から学びを得ることで日本一にもなれたしプロにもなれたと思っています。そうやって他の領域からスポーツについて学ぶことができるということは、その2つには共通する部分があるわけです。ということは、逆にサッカー界で得たことを他の領域に還元することもできるはずです。そうした還元はサッカーの価値を高めることにもなります。『サッカーで学んだことでそれができるよ』『それサッカーで言うとこうだよね』という話が広がっていくと面白い」


―― ヨーロッパのサッカー界では今スポーツとビジネスの壁がなくなってきています。アメリカでトップ大学を出たエリートの就職候補の中にはレアル・マドリーが普通に入っているんです。サッカー界が、それまでは外部だったビジネス界の中により組み込まれ、それによりそれぞれのメソッドがインタラクティブに影響を及ぼし合うという傾向が強まってきています。

「僕たちはサッカーの定義を広げたいと考えています。グラウンドでボールを蹴るだけでなく、栄養や睡眠、人間関係や組織の中での生き方も広義のサッカーに含まれる。そうなるとほぼ一般社会のあり方と同じです。自分の体という資本を使ってパフォーマンスをするというのは普遍的な行為ですよね。だから、ボールを蹴る2時間以外の22時間のうち、サッカーとして捉える時間を2時間から4時間、6時間に増やしていければ、人生やパフォーマンスは確実に良くなるし、社会に対しても何らかのソリューションを生めるんじゃないかと考えています」


―― フットボリスタ誌のメンタル特集で取り上げたレイモンド・フェルハイエンというフィジカルコーチの話は、一般社会の問題のソリューションになり得るものでした。彼はメンタルを肉体の一部として捉え、科学的に分析しコントロールできるものだと言っています。メンタルの正体はアセチルコリンのような神経伝達物質やコルチゾールなどのストレスホルモンで、食事やサプリメントでメンタルに直接アプローチできると。他にもヨーロッパでは近年、サッカーにおける認知や判断といったアカデミックな領域とつながりを深めています。

「そのような意識などの話には僕も興味があります。西洋と東洋の思考の違いについての本が面白かったです。東洋は全体を見るので、起きた現象に対して、特定の行為よりも、他の環境的要因やその行為を引き起こした周りの環境に目を向ける。これに対し西洋は機械論的に特定の行為を結果に紐づける傾向があるということで。日本には日本のコンテクストがあるので、サッカー界も常に西洋のメソッドを取り入れることを是としなくてもいいんじゃないかと思います。マネジメントの方法もGoogleやMicrosoftの方法を取り入れればいいというものではない。スポーツだと、選手が気持ちよくやれるかどうかみたいな微妙な部分が結構影響してくるところもありますしね。その辺は追求していくと新しいものが生まれるのではないか、という気がしています」

サッカー選手は35歳で死ぬ? セカンドキャリア問題の本質

―― 現役の選手としてこうした発信を始めるにあたり、セカンドキャリアへの意識はありましたか?

「スポーツ選手全般がそうですが、面白いのが、35歳くらいで一度死ぬじゃないですか。そうした終わりを意識しながら今に向き合うという矛盾は、スポーツ選手独特のものです。絶対に近いうちに辞めないといけない中でも、今日の試合や練習、ワンプレーに全力を尽くさなければならない。ただ僕は、選手を辞めるタイミングで人生に区切りをつけて新たにスタートするのではなく、その前後が連続したものであってほしいと考えています。僕は20年サッカーをやってきて社会人になってからもまだ3年もサッカーをしていて、この経験をリセットしろとなると困る。その前後が繋がらないのは悲しいことです」


―― 現状は繋がってない人が多い?

「本当は繋がっているはずなのに、こういうふうに繋がっていると説明できないことが問題です。そもそもセカンドキャリアというもの自体に疑問があります。僕は自分がより良い人生を歩んでいくために大学でサッカーをやり、社会人としてプロになりましたし、今後もより良い人生を歩むために選択していきます。そこに断絶はありません。また、周りが考えるほどスポーツ選手はセカンドキャリアに困っていないのではという仮説も持っています。おそらく家族を養える程度のお給料がもらえる仕事はできても、それまでサッカーに懸けてきた熱量とのギャップがあるというようなことが問題なんでしょうが、これはサッカー選手に留まらない社会全体の課題ですよね。街を歩いているサラリーマンの人が今の仕事に心から満足しているかと聞かれてみんな首を縦に振れるのか。スポーツ選手は引退のタイミングで人生の意味に否応なく向き合わされるがゆえに、セカンドキャリア問題が取り沙汰されるだけではないかと思います」


―― なるほど。35歳の終わりを意識して濃密な現役生活を送るということをサッカー選手の特異性として挙げられていましたが、これをどのように社会に還元できると思いますか?

「35歳で死ぬという表現をしましたが、誰しもいつかは死にますよね。みんな、いつ死ぬかわからない状況で、今をより良く生きるために本気で今に向き合わないといけない。僕たちは、社会に対して、本当にそれやりたいことなの? と問いかけて、俺たちは選手としてやりたいことをやっているし、選手を辞めてもまた新しい旅に出ようとしてるよ、というメッセージを伝えられるんじゃないかと思います」


―― 我われの雑誌業界も、来年雑誌があるかもわからないので、よく理解できます(笑)。

「今に全力で向き合うという意味では、1年契約の中で必死に結果を求めて、また契約して、というスタイルでやっている選手もいて。3、4年の契約だと、結果にかかわらず給料が同じ期間があるのでダレるのが嫌だと。旧来の社会の終身雇用はいわば40年契約なわけで、そこでずっと濃くやっていくというのは普通難しいですよね。もちろんシステムとして40年保証があるというのは良いことだと思います。あくまでマインドの部分でスポーツ選手のエッセンスを取り入れてもらったり、逆に僕たちが一般社会から取り入れたりすることができたら有意義だと思います」

サッカー選手の「価値」を自問せよ。コミュニティ「Ziso.」の展望

―― 井筒さんが新しく立ち上げられたオンラインコミュニティ「Ziso.(ジソ)」についても伺いたいのですが、始められたきっかけは何だったんですか?

「いろんな出会いがあって人の輪が広がってきたんですが、いつでも対面で集まれるわけではないので、オンラインで相談できる場を作りたいと思ったのがきっかけです。あと、似た思想を持った選手が各地のJクラブにいて細々と活動している人もいるみたいなんですが、そういう人たちにロールモデルを提供できる場があれば面白いなとも思いました。久しぶりにマネジメント的な行為をしたくなったというのもありますね。オンラインのマネジメントは難しいんですが、それを乗り越えた先にある需要を見越して立ち上げました。あとはコミュニティの名前の通り、サッカー界が他から与えられて生きるのではなく、自走できるようにしたいという思いですね」


―― サッカー界が自走するために、何が必要だと思われますか?

「例えば選手のお給料について、本当にその額の価値があるのか? という疑問があって。サラリーマンには、売り上げに呼応として上がっていくとか、何らかの評価システムがありますよね。個人事業主も、自分で売り上げた分をお給料としてもらうのが筋です。でもサッカー選手はスポンサーや会社からもらえるお金に対して何も仕組みを理解していなくて、ネガティブな意味で『生かされて』いる。サポーターの方の応援に関しても、どうしてこんなに熱心に応援に来てくださるのか、なんで俺たちはこの人たちの心をここまで動かせているのか、理解できていないのではないか。勇気や感動という言葉はざっくりし過ぎていて腑に落ちない。僕は『俺たちはこういう価値を与えられる。だからこそ給料を貰っているし、みなさんにスタジアムに足を運んでもらいたい』と言えるようになりたいんです。それが自走の1つの形だと思っています」


―― 良し悪しはさておき、ファンが特定の選手に投げ銭をするといった直接的な課金システムができる可能性はありますよね。それだと評価とそれに対するマネタイズの仕組みがもっとクリアになる。

「そうしたサービスを提供するアプリはすでにあるのですが、それもスポーツ界発信ではなくて、スポーツ業界に市場を見出してITの人が入ってきてくださっている。これは結局自走ではなくて、技術が入ってきて、マネタイズが生まれて、お金を払う人がいて、僕たちは価値や金銭をただ享受してボールを蹴るだけという構造です。シャープでわかりやすくはあるんですが、僕は自分で意図を持ってボールを蹴りたいし、自分たちの力で価値を創造したい。サッカーだけしたいという人がいてもいいですが、僕みたいなパターンもあるべきだと思います。サッカー界が画一的な考えで染まっているのは健全ではないので」


―― マネタイズの方法しかり、サッカー選手の価値を自問する思考を明確にお持ちですよね。それはなぜですか?

「そうですね。大学の頃も、自分がサッカーを続けることに意味があるのかが疑問で。周りはインターンに行っていろいろ学んだり、留学して英語を話せるようになったりして、それが就活に直結する。でも僕が20年サッカーをやっていたことは、それ自体には社会で需要がない。就活で『俺、左足でビルドアップできます』と言っても意味がないですよね(笑)。でも、左足でビルドアップできるようになった背景には長いストーリーがある。そこまで深めて価値を語れたら、社会の中で意味のある存在になれるはずです。これをプロクラブの話に置き換えると、2時間に収まらない長いストーリーを作れたら、足を運んでくださるお客さん以外にも、スポーツビジネス的に新しい価値を提供できるかもしれないということになります」


―― コミュニティには選手だけでなく一般の方も参加可能ということですが、Jリーガーとファンを含む社会とのマッチングが狙いなのでしょうか?

「Jリーガーのポテンシャルは感じていても、Jリーガーがクラブやファンや社会に対して、実際に何ができるのか、価値がどこにあるのかわからないという問題があって。ファンや社会と繋げる前に、自分たちの価値の模索、創造をまずはやっていきたいですね」


―― 選手以外の人も入って考えてくれると、新しいアイディアも出てくるかもしれないですね。

「そうですね。コミュニティを通していろいろ考えたりしていますが、ディスカッションしてる内容がめちゃくちゃ面白い。だから、形になってない段階から興味ある人を入れて学び合いの環境を作って、その過程も含めてサロンの活動として楽しんでもらった方がいいんじゃないかという話になっています」


―― 立場が違う人間がそれぞれの領域からディスカッションすることで新しい何かを生み出すというのは最近の流れとしてありますよね。手前味噌ですが、フットボリスタ・ラボもそうです。医師や建築家などいろんな立場の人がいて、チームのメディカルにおけるドクターの視点だったり、スタジアム建築に対しての現場の視点だったり、全然考えなかった切り口が出てきて面白いです。

「まさにそういうところに僕も興味があります。結局僕はサッカーに固執していない。今はサッカーに特性があってプロになっていますが、サッカーしかできない人間になるというより、サッカーと共通項を持つ領域のことも考えられるようになりたいです。それこそスタジアム建設でいえば、スタジアムを作った経験を活かして普通の家を作ってみるとか、徐々に広げていく。そういう取り組みのためにも、他の切り口からサッカーを見てもらうことは大事です。建築×サッカーみたいな話でいうと、カケルというより、サッカーの中に建築の領域があるよね、という捉え方をすると広がっていくのだと思います」


―― メンバーのJリーガーは徳島だけというわけではないんですよね?

「各クラブに散らばっていますし、試合に出ている選手も出ていない選手もいます。目的もそれぞれ違うと思います。立場が異なる選手が集まっているからこそ、面白いなと」


―― 最後に、今後の「Ziso.」の展望を教えてください。

「まずは、理念を共有できる人が集う場(「サッカーを深く理解し、また広く考えていく。サッカー人生を豊かにする。」という理念を掲げている)、空間であることが大事なのかなと思います。Jリーガーに興味がある人との接点はなかなか他にないですし、その上でそれぞれにやりたいことをやっていく。ある選手は自分サッカーのパフォーマンスを上げるために、学びを自分のサッカーに還元していく。ある人は自分のチームを発展させるために、知見をチームや地域に落とし込む。僕の場合は長いスパンでの自分の人生や社会に対してできることを模索する。ただ共有していたいのは、サッカーの定義を広いものにしていこうという姿勢です。それはサッカーを深く理解したり、他の分野から学びを得ることで可能になることです。そこを軸にしながらいろんな活動をしていく場になればと思います。僕たちはコンテンツパワーは持っていると思うのでそこは強みにして、相談に乗ったり、ディスカッションしたり、発信したり、何かを生み出すところから供給するところまで全部やる。そうやって社会の縮図のようなコミュニティを作っていきたいと思っています」

Rikuya IZUTSU
井筒陸也

1994.2.10(25歳) 181cm/75kg DF OSAKA
2009-2011 初芝橋本高校
2012-2015 関西学院大学
2016-2018 徳島ヴォルティス
2019-   Criacao Shinjuku

Photos: Gaichi Asano

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Ziso.井筒陸也徳島ヴォルティス敗北のスポーツ学

Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。