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ジョルジーニョ。サッリに熱望されポジショナルプレー信奉者に愛される男

2018.11.01

【ざっくり言うと】
・ジョルジーニョは、ポジショナルプレー信奉者に愛される
・マウリツィオ・サッリ、ペップ・グアルディオラも絶賛
・その真骨頂は「受ける」能力にある

 ジョルジ・ルイス・フレーロ・フィーリョ。フットボール王国ブラジルで生を受けた男は、10代でイタリアに移住。エラス・ベローナのユースで頭角を現し、アンドレア・ピルロに例えられるレジスタとして飛躍的な成長を遂げる。強靭なフィジカルで中盤を制圧するMFが重宝され、ガラス細工のように繊細なレジスタが絶滅危惧種として扱われる中、ジョルジーニョは輝きを放ち続けている。マウリツィオ・サッリとペップ・グアルディオラが熱望した彼は、なぜポジショナルプレーの信奉者に愛されるのだろうか。


突出した「受ける」能力

 ショートパスを繋ぎながら試合を組み立てるチームにおいて、中盤の底に置かれる選手のクオリティは重要だ。その理由は単純で、このポジションに配置される選手の質は、ビルドアップの質に直結するからだ。

 中盤の中央でプレーする選手は、当然ピッチの左右に豊富なパスコースを与えられ、視野も保ちやすい。CBからすれば最も簡単なパスコースの1つであり、前方を向いてボールを持つ機会も少なくない。CBの間に下がっていく「サリーダ・ラボルピアーナ」を採用するチームでは、さらにボールに触れる回数が増える。バルセロナにおいて君臨するセルヒオ・ブスケッツは、圧倒的な思考速度によってゲームを構築することで黄金期のチームを支えた。

 ジョルジーニョには、相手を置き去りにするようなスピードがある訳ではない。だが、レジスタという役割としては突出した機動力を備えている。底のスペースでボールを待つのではなく、味方にボールを預けながらポジションを微調整する。ボールを預けながら、動き直すことでマークを剥がし、状況を打開することが彼の武器だ。

 数的な優位性を保ちながらボールを前進させることを重要視しているポジショナルプレーにおいて、選手の距離感は生命線。だからこそ、左右に動き回りながら味方との位置を調整するジョルジーニョは「適切な位置関係」を保つことに寄与する。シンプルに少ないタッチでショートパスを繋ぎながら、ボールを追おうとした相手の逆を取る。

 ルカ・モドリッチやトニ・クロースのように広い範囲を動き回りながら、正解にゲームメイクをこなす彼は、新時代のレジスタと呼ぶべきだろう。ペップ・グアルディオラやイバン・デ・ラ・ペーニャのような一本のパスで戦況を打開する天才ではなく、チームの組織の中で力を発揮する彼らは、今後の育成が目指す選手像にもなるに違いない。

驚異的なボール奪取能力を誇るカンテ(右から2番目)との相性は抜群だ


戦術理解能力に支えられた「調整力」

 上述した「移動しながらボールを受ける能力」に加え、高い戦術理解力は「意図的にポジションを守ることで、味方との位置関係を調整する」ことを可能にする。運動量が豊富なMFが逆に動き過ぎてしまい、全体のバランスを崩してしまう事象は珍しくないが、ジョルジーニョは驚異的にポジショニングのミスが少なく、試合を通してチームのバランスを保つ。特に精度が高いのがトライアングルの保持であり、これはポジショナルプレーの中核だ。

 トライアングルの頂点としての位置を把握する能力が高く、常に1本先のパスを意識しているジョルジーニョの存在は常にパスコースを生む。また、チーム全体の位置を把握する「鳥の眼」に例えられる視野も彼の特徴だ。自分がマークされていると悟れば、CBに持ち上がるように指示。自分を囮に相手のラインを押し下げ、チームの距離感を調整する。自らがボールに触れられない局面でも周りを動かし、詰みを目指す姿からは「盤面を上から見下ろすように把握する力」を感じさせる。


サッリ攻略の鍵となる、ジョルジーニョ対策

 リバプールのユルゲン・クロップが献身的に走り回るフィルミーノを活用してジョルジーニョへのパスコースを封じたように、「ジョルジーニョ対策」は「サッリのチェルシー封じ」の鍵となる。

 縦パスをジョルジーニョが供給する展開になると守勢に回ることになり、アザールやウィリアン、ペドロのような危険なアタッカーがボールを持つ局面が増えてくる。そうなると、チェルシーを抑えるのは難しい。

 CBのリュディガーとダビド・ルイスは縦パスを積極的に狙う技術に優れるが、最後尾の守備者が高い位置に進出することはリスクも大きい。ジョルジーニョと比べるとリスクマネジメントの意識にも劣ることから、多くのチームは彼らにボールを持たせようとする。

 マンチェスター・ユナイテッドも[4-4-2]に近い守備陣形を採用し、2人がジョルジーニョを受け渡しながら封殺。ジョゼ・モウリーニョが「ジョルジーニョをあそこまで抑え込んだチームは、我われくらいだろう」と誇ったように、名将たちはジョルジーニョ封じを目論んでいる。

 ポジショナルプレーの体現者は、常に精緻なポジショニングとシンプルなパスワークによって、組織の中核となる。彼のプレーに着目することは、ポジショナルプレーを理解するヒントになるかもしれない。

初招集から2年間で3試合だったイタリア代表での出場数が今年はすでに9試合。ピルロの後継者として攻撃の核となっている


Photos: Getty Images

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Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。