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ゴール量産に愛娘誕生…公私に渡り充実の日々を送るドミニク・ソランケ

2023.12.31

 忘れられかけた期待の星が、プレミアリーグの舞台で燦燦と輝いている。

 チェルシーの下部組織で育ち、若くして世界一に輝いて注目を浴びたドミニク・ソランケは、将来を期待される逸材だった。その後は2部リーグに落ちて平凡な選手に成り下がったかに思えたが、26歳になった今、彼は世界最高峰のリーグで得点王争いをしている。

チェルシーではノーチャンス

 U-8世代からチェルシーで育ったソランケはエリート街道を歩んでいた。各年代のイングランド代表でエースとして結果を残し、2014年にはU-17欧州選手権で優勝して得点王に輝くと、2017年にはU-20ワールドカップでイングランドを初優勝に導いて大会最優秀選手にも選ばれた。2014-15シーズンにはチェルシーのU-21チームで驚異の「41ゴール」を叩き出した。それでも、ファーストチームでのチャンスは限られた。

 率先的に若手を起用する今のチェルシーとは違い、当時のチームは若年層の才能こそ集めるも、トップチームでは起用しなかった。「今のチェルシーは違うけど、当時はトップチームへの道が見えなかったのさ。ほぼ誰もファーストチームに上がれていなかったので、自分も難しいと思った。アカデミーからトップチームへのステップアップは本当に大きいのさ」とソランケは英紙『The Times』で明かした。

 だからソランケは7歳から過ごしてきたチームを離れる決心をした。2017年、クラブから契約延長のオファーを提示されながら、それを断って契約満了とともにリバプールに移籍したのだ。おかげでソランケは2人の偉大なストライカーを間近で見ることができたという。チェルシーの英雄ディディエ・ドログバと、リバプールでゴールを量産し続けるエジプト代表FWモハメド・サラーだ。

 「試合よりも練習の方が多くを学べた」と、ソランケは一流プレーヤーと過ごした日々を振り返る。彼らのプレーを真似しようとは思わなくても「咄嗟に彼らのプレーが出ることがある」という。だがリバプールではサラー、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノの強力3トップの牙城を崩すことはできず、2019年1月に新たな挑戦に踏み出してボーンマスへ移籍した。

ボーンマスで公私ともに充実の日々

 ボーンマスでは2部降格の憂き目にも遭ったが、今季は驚くほどの結果を残している。12月23日のノッティンガム・フォレスト戦でプレミアリーグにおける自身初のハットトリックを達成するなど、プレミア第19節を終えて12ゴール。マンチェスター・シティのFWアーリン・ホーランドに次いで得点ランク2位タイに着けている。

 今季からボーンマスを率いるスペイン人のアンドニ・イラオラ監督の下で躍動するソランケだが、最初は戦術家の指示に戸惑ったという。「最初は情報を処理しきれなかった」とソランケは英紙にて説明する。トップ下の選手と連動してプレスをかけるのだが、「最初はプレスをかけるべきか、下がるべきか分からなかった。でも今は自然にできる」という。これがゴール量産にもつながっているそうだ。

 「監督がハイプレスを推奨するので、僕は常に高い位置にいられるのさ。低い位置に下がる機会が減ったことで、昨季よりも良い位置でプレーできていると思う。監督のスタイルが自分に合っているのさ」

 今季は私生活にも変化があった。9月には第一子が誕生した。「子どもが生まれたことで、少し価値観が変わった。娘のために人生を送るような感覚になった」。しかし、新しい生活に苛立ちを覚えた者もいた。それが愛犬、ジャーマン・スピッツのレオ君だった。「レオは、注目を浴びる赤ちゃんに嫉妬していたよ。でも今は、娘が寝ていると、レオもその横に来て寝るのさ」

 新たな家族が増え、公私ともに充実期を迎えたソランケ。来夏のEURO 2024を前に、2017年以来となるイングランド代表復帰に期待が寄せられる。そしてこの調子を維持できれば、近い将来、再びビッグクラブのユニフォームに袖を通す日が来るはずだ。


Photo: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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