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ロベルト・バッジョは現代サッカーでも通用するのか?

2018.02.06

戦術のエキスパート、西部謙司氏がシミュレーション

この記事は『ポケットサッカークラブ』の提供でお届けします。

イマジネーションあふれるプレーの数々で対戦相手はもちろん、観る者すらも翻弄しそして魅了したロベルト・バッジョ。1980年代から2000年代前半にかけて一世を風靡した稀代のファンタジスタがもし、進化を続ける現代サッカーに蘇ったとしたら通用するのか――戦術のエキスパートである西部謙司さんにシミュレーションしてもらう。

 ロベルト・バッジョは旧式の縫い合わせのあるボールを使って、ボールタッチのフィーリングを確かめることがよくあったという。繊細さがうかがえるエピソードであり、この繊細さがバッジョを偉大な選手にし、同時に彼の時代での生きにくさにも繋がっていた。

 ギリギリでDFをかわし、GKを愚弄するようにフェイントをかける。大げさなアクションはなく、常にさりげなく最小限の動きだ。敏捷でバランス感覚も抜群だったが、根底にあるのはボールタッチの繊細さだった。その瞬間に、ベストなボールタッチができる。

 後方からのロビングを振り向きざまにボレーで合わせてゴールの隅へ収め、浮き球をかかとで引っかけて絶妙のラストパスにする……タメ息が出るような美しいボールタッチ、突出したボールコンタクトの才があった。数cm、いや数mm触るところが違えばまったく違う結果になるプレーを次々と成功させている。

 サッカーがボールを扱うスポーツである限り、バッジョの才能はどの時代でも通用する。ただ、彼の全盛期でさえベンチに置かれたのもまた事実なのだ。

 サッカーに芸術点があって美しいゴールは2点にカウントされるなら、どの監督もバッジョを起用しただろう。しかしゴールはどんなゴールでも1点しか入らないし、サッカーは得点やそれに絡むプレー以外にも仕事はたくさんある。バッジョが主にプレーした1990年代は、ちょうどプレッシング戦術が広まっていった時代だった。走れて潰せて組織的にプレーできる選手をそろえることが優先され、フィールドは屈強なハードワーカーで占められていった。バッジョの繊細なボールタッチ、インスピレーション、ゴールセンスは依然として貴重ではあったが、彼1人ではどうしても浮いた存在になってしまう。リアリズムが大手を振って闊歩し、ファンタジスタはひっそりと息をするような時代だったかもしれない。

ユベントス(1990-95)、ミラン(1995-97)、インテル(1998-2000)とイタリア北部の3大クラブすべてでプレー。インテル時代には怪物ロナウドとも共演したが、スクデット獲得はユベントスとミランでの1度ずつでCLやW杯のタイトルには手が届かず。チームとしての栄光には恵まれなかった

 やみくもに走り回り、潰し合い、いったいこれのどこが面白いのかというサッカーのエンターテイメント面での暗黒時代を過ぎると、ハードワークできる技巧派が台頭してきた。新時代のハイブリッドたちだ。彼らであれば、守備もしつつバッジョの良さを生かすこともできるだろう。そう考えると、むしろ現代の方がロベルト・バッジョが生きる余地はありそうである。

 例えば、現代で言えばアントワーヌ・グリーズマンはバッジョと似たタイプだと思う。繊細なタッチとゴール感覚、得点とアシストの両方でチームに貢献している。今のアトレティコ・マドリーでグリーズマンをバッジョに置き換えることはできるだろう。ただし、バッジョは技術面でグリーズマンを上回るが、グリーズマンほどハードワークはできない。カウンター志向はバッジョ向きだけれども、アトレティコの強みである守備で貢献できないのがマイナスになる。

 逆にバルセロナのリオネル・メッシの役割に当てはめれば、メッシも守備はほぼ要求されていないので問題なくバッジョに置き換えられそうだ。チームメイトからのパスは、バッジョがプレーした時代よりも高精度で送られてくるし、その回数も比較にならないぐらい多いだろう。全盛期の何倍ものファンタスティックなプレーが見られるに違いない。ただ、メッシがいるのにバッジョに置き換える必要があるのかという疑問は残るが。

 そうなると、バッジョを現代に蘇らせ最高のプレーを引き出すにあたっては微調整が必要になってきそうだ。

ポジションは“10番”ではない

 ポジションはセカンドトップがベストだ。トップに張って相手DFを引きつけるとともに、バッジョと連係できるFWがまず必要だろう。ルイス・スアレスかロベルト・レバンドフスキを考えたが、万能性とバッジョに優先的に得点チャンスを与えるということからハリー・ケインを抜擢したい。バッジョにはない高さを補えるうえ、カウンターでもポゼッションでも連係できるはずだ。ケインは運動量も多いのでバッジョの守備負担を軽減できるのも大きい。

 MFはハードワーカー中心にして、中盤でのボールの刈り取りから一発のパスをバッジョへ送る攻撃を用意したい。バッジョはコンビネーションもできるが、真骨頂は一発のパスで抜けてDF、GKをかわしてのゴールにあるからだ。つまりチームのタイプとしてはカウンター型のほうが向いている。それにはハードワーカーを並べるだけでは不十分で、奪った瞬間にマークを外したバッジョに絶妙のミドルレンジパスを供給できる選手が不可欠になる。候補はアンドレア・ピルロとシャビ・アロンソ。ピルロと組むならジェンナーロ・ガットゥーゾ、シャビ・アロンソならアルトゥーロ・ビダルだが、攻撃力を買ってシャビ・アロンソとビダルのコンビに中央を任せたい。右の攻撃的MFは高速ミドルパスのデ・ブルイネ、左は運動量とビダルとの相性でアレクシス・サンチェス。この4人ならばボールを奪えるうえに、奪った瞬間にどこからでもバッジョにボールを供給できるだろう。

 DFは特に人を選ばないが、やはりロングパスの供給力は選考のポイントになる。右SBはダリヨ・スルナ。右足のクロスボールの精度とアイディアは抜群だ。もうベテランなので守備力に不安はあるが、この際だから全盛期のスルナということで。左は万能のダビド・アラバ。CBはマッツ・フンメルスとレオナルド・ボヌッチ。どちらも高精度のロングパスが期待できる。

 GKはエデルソンかテア・シュテーゲンのどちらかで迷ったが、安定感でテア・シュテーゲンとしたい。

 フォーメーションは[4-4-2]。前線の守備はある程度ケインに任せつつ、中盤にブロックを敷いて相手を引き込む。奪ったらまずバッジョを見て、マークが外れていればすかさずボールを供給。バッジョが1人で何とかするだろうし、ケイン、ビダル、サンチェス、デ・ブルイネのサポートも速いので必ずチャンスは作れる。シャビ・アロンソやボヌッチから繰り出される美しい軌道の浮き球をバッジョが美しいコントロールで抜け出していく攻撃が、このチーム最大の見どころになる。


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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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