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ジダンがプレス戦術全盛の現代に蘇っても最高の名手たり得る理由

2018.06.15

プレスを無効化する卓越した技術

この記事は『ポケットサッカークラブ』の提供でお届けします。

プレッシング戦術が普及していった1990年代から2000年代にかけて、観る者が息を呑む精緻かつ繊細なボールタッチでピッチを支配したジネディーヌ・ジダン。プレス戦術が隆盛する現代サッカーにおいても間違いなく通用する“プレス無効化”のカラクリを、戦術のエキスパートである西部謙司さんが解き明かす。

 ジネディーヌ・ジダンはプレッシングの普及とともに現れた“異物”だった。

 1980年代の終わりにミランがゾーンディフェンスとプレッシングをかけ合わせた守備戦術で一世を風靡、90年代はプレッシングがスタンダードになっていく10年だった。緻密な戦術を実行するために規律と運動量が重視され、それに欠ける選手はチームを代表するテクニシャンですら居場所をなくしている。ロベルト・バッジョのような偉大なボールプレーヤーですらベンチに置かれる状況だった。

 そうした時代のまっただ中に現れたジダンは、ある意味完全に時代遅れの選手だった。守備はできないし、すぐに息切れする。ボールを持ったら抜群にうまいけれども、常に得点するわけでもアシストを量産するわけでもない。普通に考えれば、真っ先に居場所をなくしそうなタイプである。ところが、時代の風潮にまったく合わなかったがために、ジダンは唯一無二の存在になっていくのだ。

 プレッシングは陣形を縦横に圧縮して、攻撃側の選手から「時間とスペースを奪う」ことが最大の特徴だ。時間とスペースを取り上げられた優美なテクニシャンたちは、それゆえに居場所を失った。しかし、ジダンはプレッシャーをかけても平然とキープできた。CBも務まりそうな体格は抜群のキープ力にひと役買っていたに違いない。

 だがそれ以上に、テクニックが“巧い”という次元を超えていた。優美というより奇怪な様相。ファーストタッチの巧さは桁外れだった。

 ところで、「コンパクト」はプレッシングのキーワードだが、当たり前ながらフィールド自体がコンパクトになるわけではない。選手が固まってコンパクトになるだけだ。つまり、そのぶん逆サイドやDFラインの裏には大きくスペースがある。ただ、プレスをすればそこは使われないから問題がないというのが前提だ。だが、プレスしても奪えないジダンが現れると事態は一変してしまう。

 ジダンへのプレスを強めれば強めるほど、逆と裏に大きなスペースは広がり、ジダンに人が行き過ぎると周囲の選手までフリーになってしまう。プレッシングという戦術に忠実であればあるほどリスクが増大するパラドックスに陥ってしまったのだ。

 ジダンはスペースの制限されている場所で平気でパスを受け、プレスを受けながら外し、近くの味方へシンプルに繋ぐ。ただこれを繰り返すだけだ。さして決定的なパスを連発するわけもなければ、得点を量産するわけでもない。だが、故郷マルセイユの集合団地の中庭でやっていたプレーを続けるだけで相手は勝手にどんどん崩れていく。なぜそうなるかは、おそらく本人含めて誰もよくわかっていなかったが、ジダンがいれば勝てるということだけは、だんだん理解されるようになった。

 後年、スペインやバルセロナがグループでプレッシングを崩壊させたが、ジダンはたった1人で完全無欠に思われた守備戦術を破綻に向かわせた英雄だ。時代にまるっきり合っていなかったからこそ、そして時代とは無関係に破格のボールアーティストだったからこそ起こった特異な現象だった。

独特の価値観ゆえに“お友達”が必要

 もちろん、そのプレスを無効化する特徴は現代サッカーに蘇ったとしても十分に発揮できるだろう。現代サッカーでジダンを生かすなら、レアル・マドリーでイスコの代わりに起用すればすべてうまくいく。監督としてレアル・マドリーの選手たちの特徴を熟知しているからだ。ただ、それでは面白くないので“お友達”を配置しよう。

 ジダンは価値観が独特だ。フランスワールドカップ優勝直後、山のように届いたCMオファーの中で引き受けたのは1つだけだった。昔の仲間が経営する零細電気店の広告に出た。巨額オファーをすべて袖にして。とてもシャイで義理堅く、金では動かない。いつも温和で大人しいが、いったん怒ると一瞬ですべてを破壊してしまう。ワールドカップさえ投げ捨ててヘッドバッドを炸裂させた。

 このミステリアスな男を生かし切るには、公私ともに知る選手が必要だろう。

 気心知れた仲間として欠かせないのはクリストフ・デュガリーだ。フランス代表で、ジダンからティエリ・アンリのアシストが1本だけだったのはよく知られている。嫌いだったわけではないだろうが、それが相性というもの。デュガリーはアンリほど大成しなかったが、ボルドー時代の評価はむしろジダンより上だった。ジダンがいればデュガリーは本領を発揮できるはず。スピード、テクニックを兼ね備え、空中戦の強さもある。

チーム・ジダンに欠かせない存在のデュガリー

 “お友達”その2はビセンテ・リザラズ。左寄りでプレーするジダンのキープと俊足リザラズのオーバーラップは、ボルドーとフランス代表における定番の突破パターンだった。ジダンが2人を引きつけ、その横をすり抜けるリザラズへパス、相手を束にして置き去りにする。レアルで名コンビだったロベルト・カルロスでも良かったのだが、デュガリーとのボルドー・トライアングルを重視した。

ボルドーとフランス代表でホットラインを築いたジダンとリザラズ

 “お友達”その3はロナウド。もちろん、レアルでコンビを組んだブラジル人の方である。慈善活動を共同で行うなど仲がいい。プレーぶりは説明不要だろう。レアル時代は運動量が落ちていたが得点感覚はむしろ磨きがかかっていた。能力的にはポルトガル人のロナウド(クリスティアーノ)でも可なのだが。

現レアル・マドリーのエースではなく、プレーヤーとしてコンビを組んだ元ブラジル代表の方のロナウド

 クロード・マケレレは“お友達”というよりパートナーだ。ジダンあってのマケレレ、マケレレがいてこそのジダン。互いの短所を補い長所を生かす完璧な補完関係である。

 ジダンの両脇をサポートするのはトニ・クロースとルカ・モドリッチ。素晴らしいパスワークが期待できる。クロースとモドリッチがCB近くのハーフスペースへ落ちてビルドアップの起点となり、ジダンへ繋ぐ。相手は取れない。クロース、ジダン、モドリッチの間でパスが回り、その間に飛び出すリザラズ。デュガリーがダイアゴナルに走り、DFの隙間をロナウドが駆け抜けてスルーパスを受ける。マケレレは守備のバランスを取るのに忙殺されるだろうが仕方ない、それが彼の仕事である。

 GKファビアン・バルテズとSBリリアン・テュラムに関しては必然性はないのだがフランス代表のよしみということで。後方部隊はセルヒオ・ラモス以外全員フランス人なのでコミュニケーションは取りやすいだろう。

 ちなみに監督はエメ・ジャケかビセンテ・デルボスケだろう。タイプは違うが、どちらもジダンとの相性は良かった。ただ、この攻撃的なメンバーならデル・ボスケが適任と思われる。




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ジネディーヌ・ジダンフランス代表ポケサカ

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。