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CL、ELでの躍進が唯一の希望。W杯逸したウクライナサッカーの惨状

2017.12.07

続く混乱、国内リーグの観客は3分の1に…

 ウクライナサッカーの衰退が止まらない。ロシアW杯欧州予選最終節、グループ3位のウクライナは2位クロアチアと直接対決。勝利すれば少なくともプレーオフ出場が決まる一戦だったが、0–2で敗れ3大会連続で出場権を逃す結果となってしまった。強豪クロアチアが相手とはいえ、ホームで勝利への執念がほとんど見られなかった内容に、国内では「政治的配慮によりわざと負けたのではないか」という批判も上がった。

W杯予選敗退が決まり、肩を落とすハチェリディらウクライナの選手たち

 「政治的配慮」が指すのは、もちろんウクライナとロシアの対立のことだ。14年に生じたウクライナのEU加盟をめぐる国内の騒乱やクリミア危機はサッカー界にも暗い影を落とし、シャフタール・ドネツクなど東部の数クラブは依然として本拠地に戻ることができていない。また、現在も欧州カップ戦では両国クラブ間の対戦を回避する措置が取られている。ポロシェンコ大統領は2年前から「ロシア大会はボイコットする」と宣言。出場権を得ても出られるかどうかわからない不透明な状態が選手たちに影響を及ぼしたことは間違いない。母国の英雄であるシェフチェンコ監督も敗戦後、「選手のメンタル面が最大の問題だった」と準備段階での苦労を認めた。

 開催国ロシアでは、ウクライナの敗退は複雑に受け止められている。元ロシア代表のセルゲイ・ユランは「純粋にスポーツの観点から見れば彼らとの関係は良好だし残念だ。しかし、本大会に出場すればサッカーとは無関係な挑発や暴力行為が起こることは確実だった」と語り、大会運営面での大きな懸念要素がなくなったことに胸をなで下ろしている。

「上位対決以外は見る気もしない」

 W杯出場を逃したウクライナの今後の見通しは暗い。前述の騒乱後、政治や経済は汚職問題や通貨グリブナの下落などにより混迷を極めている。

今年2月、ウクライナ東部の街アウディーイウカの様子。国内の混乱は今なお続いている

 国内1部リーグはELの常連だったメタリスト・ハルキウなど数クラブが経営破綻により消滅し、現在は12クラブが残るのみ。まだ資金力のあるシャフタールやディナモ・キエフなどの上位クラブと、ほぼ国内選手だけで戦うアマチュアレベルに近い下位クラブとの格差が広がっている。そのためリーグ自体への関心も薄まり、平均観客数は騒乱前の12–13シーズンの1万2572人をピークに下降線をたどり続け、昨季は4234人にまで落ち込んでしまった。日々の暮らしに精一杯で、サッカー観戦どころではない国民も多い。

 元ウクライナ代表のアンドリー・ボロニンは「今の国内リーグは、上位対決以外は見る気もしない。この国のサッカーはソ連崩壊直後に弱体化した20年前に逆戻りしてしまった」と惨状を嘆く。続投が濃厚なシェフチェンコ監督は予選を通じて若手発掘に希望を見出そうとしてきたが、混乱状態の政府はまともな育成プログラムも打ち出せていない。欧州カップ戦でのウクライナ勢の躍進が唯一残された望みの糸となっている。

国内の期待を背にCLのグループステージ突破を決めたシャフタール。12月6日の第6節ではマンチェスター・シティを2-1で撃破し公式戦連勝記録を20で止めてみせた

Photos: Getty Images

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Profile

篠崎 直也

1976年、新潟県生まれ。大阪大学大学院でロシア芸術論を専攻し、現在は大阪大学、同志社大学で教鞭を執る。4年過ごした第2の故郷サンクトペテルブルクでゼニトの優勝を目にし辺境のサッカーの虜に。以後ロシア、ウクライナを中心に執筆・翻訳を手がけている。