まさにリスタートの一戦だった。筑波大学蹴球部を退部し、デンマークへと渡ったのは昨年の初夏。そこからの1年間は、あれだけ獲り続けていたゴールからも見放され、苦闘の時間を強いられる。新天地はJ1初挑戦のシーズンを戦う水戸ホーリーホック。開幕スタメンに指名され、PKで奪った1点は、内野航太郎がクラブとともに紡いでいく新たな物語の、ほんの序章に過ぎない。
「水戸に加入したからには、絶対にチームをJ1に残さないといけないなと思っていますし、これから成し遂げることも、これからの順位も、全部水戸の歴史になると思うので、少しでも上に行きたいですし、上位に進出できるような貢献ができればいいかなと思っています」
中途半端な覚悟で、このクラブに身を投じているはずもない。自分に求められていることは、十分すぎるほどに理解している。課せられている、期待されている仕事を過不足なくまっとうして、歴史を築いていく一員としての誇りを胸に、ゴールを重ねまくってやる。
スペシャルな得点力を備えた、22歳の特別なストライカー。内野航太郎はJ1初挑戦のシーズンに向かう水戸ホーリーホックの最前線で、今まで培ってきたものを存分に出し切って、みんなで望んだ成果を必ず手繰り寄せる。
J1デビュー戦。湧き上がった未知の感情
新しいチームでの初戦を終えて湧き上がってきたのは、過去に味わったことのない感情だった。
「結果的にゴールも獲れましたけど、試合が終わった時に、意外と嬉しくなかったなって。自分は今までのサッカー人生でも、『チームが負けたとしても、自分が点を獲っていればいいか』みたいなマインドだったんですけど、今日は初めて試合が終わった時に『もっとやれなかったかな。悔しいな』って心から思ったんです」

2026/27シーズンの明治安田J1リーグ第1節。アウェイで柏レイソルと対戦した一戦は、水戸にとって記念すべきJ1デビューゲームだったが、いきなり開始5分で先制点を献上。早くもビハインドを負う格好で、試合は立ち上がる。
7分。大森渚生が左サイドから中央を見据えると、イメージは一瞬でシンクロする。「自分の動き出しとタイミング、渚生くんのキックの質も完璧だったと思いますけど、自分のところでちょっと当て過ぎたというか、自分の質のところでもうちょっと何とかできたかなと思います」。
マーカーの古賀太陽を駆け引きで上回り、正確なクロスにニアサイドで合わせた内野のヘディングはわずかに枠の右側へ外れたが、この試合の要注意人物であることを、ワンプレーでホームチームへ突き付ける。
それでも36分には2失点目。18番を背負ったセンターフォワードも、時折ポストプレーで基点を創出するものの、得点の匂いを感じさせるようなチャンスは作り出せない。
クラブJ1初ゴールを記録。それでも、敗戦の責任を背負う
2点差で迎えたハーフタイム。樹森大介監督から、前線のプレッシャーの掛け方へ修正が入る。「前半は自分が1人で追ってしまって、あまり連動できない中で相手にボランチをうまく使われてしまったと思っていたんですけど、監督からも『オマエが行けるのはわかっているから、そんなに行きすぎなくていいぞ』と言われました」。
もう一度戦い方をしっかり整理して後半に挑むと、64分にペナルティエリア内から放った真瀬拓海のシュートが、相手のハンドを誘発し、水戸にPKが与えられる。スポットに歩み出たのは内野。VARの確認も含め、3分近い時間が空いてからの難しいタイミングだったが、右スミに打ち込んだボールはゴールネットを確実に揺らす。
🟦2026/27明治安田J1リーグ 第1節🟦
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— 水戸ホーリーホック (@hollyhock_staff) August 8, 2026
水戸のJ1初ゴールを記録したことに対しては、「J1昇格にまったく関わっていないので、自分で良かったのかなという想いはありますけど、いろいろな選手たちの想いや奮闘があって、今J1で戦えていると思いますし、PKも真瀬くんが獲ってくれたもので、自分の実力だとは思っていないので、チームメイトに感謝したいです」と謙虚な姿勢。ただ、歓喜に沸くアウェイのゴール裏を煽るあたりに、隠し切れない高揚感も垣間見える。
残り10分を切ってからの展開は、完全に水戸ペース。ホームチームを押し込み続けるが、最後の一線はなかなか越えられない。5分間のアディショナルタイムでも同点弾は生まれず、結果は1-2の惜敗。フル出場を果たした内野は、こんな発言で勝敗の責任を自身の出来に求めた。
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Profile
土屋 雅史
1979年8月18日生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社。学生時代からヘビーな視聴者だった「Foot!」ではAD、ディレクター、プロデューサーとすべてを経験。2021年からフリーランスとして活動中。昔は現場、TV中継含めて年間1000試合ぐらい見ていたこともありました。サッカー大好き!
