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ブライアン・サラゴサのバイエルン移籍劇から学ぶ、スペインに契約解除金制度がある理由

2023.12.17

スペインで独自に定められているクラブと選手の間で必ず契約解除金を設定しなければならないルール。その違約金満額の1500万ユーロをバイエルンが支払ってグラナダからの来夏獲得が決定したと、一部報道では伝えられているブライアン・サラゴサの取引だが、実際にその金額はクラブ間で交渉して決めた移籍金だという。では、この契約解除金制度は何のために存在しているのか?現地在住の木村浩嗣氏が解説する。

“とりあえず”の代表初招集と青田買いに思うこと

 ブライアン・サラゴサのバイエルンへの移籍が発表された。いくつか思うことがある。

 まずは、何もかも大急ぎだったことだ。

 スペイン1部デビュー後わずか9試合で代表招集されたことも、いかに直前のバルセロナ戦での2ゴールがセンセーショナルだったとしても早急だと感じた。ラミン・ヤマルの時もそうだったが、数試合目立っただけですぐに代表デビューが叶う。代表のシャツの価値はそんなに安かっただろうか? で、新味が薄れたらすぐに忘れ去られる。スター誕生を大騒ぎするのはメディアの得意技だが、それが今やサッカー界全体にシリアスなはずのクラブにも広がっているような気がする。

 今回のバイエルンへの移籍にしても昔なら最低1シーズンはパフォーマンスを見てから獲っていたはずだ。

 欧州のトップリーグでの1年は長い。コンディションの波もある。ブライアン・サラゴサのようなスピードとキレで勝負するドリブラーは疲れが溜まると途端にパフォーマンスが落ちる。また、ドリブルのパターンや癖を読まれると思うように抜けなくなる。そんな不調を彼はどう乗り越えていくのか? 逆境へのレジリエンス(抵抗力)はどのくらいあるのか?

 そんなことも見ないままバイエルンは獲った。

 B.サラゴサの最大の武器はドリブルだが、私はドリブル後に態勢が崩れずシュートを枠に飛ばせることの方にも注目している。決定力も才能であり、ドリブルと決定力を高いレベルで兼ね備えている選手はなかなかいない。だから才能は間違いなくある。

B.サラゴサが一躍名を揚げたリーガ第9節バルセロナ戦の2点目。敵陣ペナルティエリアまで一気に抜け出して鋭い切り返しで並走するジュール・クンデを剥がすと、キックフェイントでテア・シュテーゲンまで翻弄。右足アウトサイドで空いたゴール左上を射抜いている

 だが、不安もある。

 1つはムラが大きいこと。最近の彼を見ていて思うのは1試合に1度は3人くらい抜く凄いプレーを見せるが、それ以外は消えていること。これは降格圏にいるグラナダゆえでバイエルンに行けば解決することかもしれないが……。もう1つはいかにも天然で、野生児らしい彼(失礼!)が外国での新生活に適応できるのか、ということ。スペインの南部アンダルシアは人間関係が濃く家族との関係を非常に大切にする。ヘスス・ナバスやホセ・アントニオ・レージェスもホームシックに苦しんだ。

 感覚としては、今風に“とりあえず”獲った、ということではないかと思っている。

 とりあえず招集しておく、とりあえず獲っておく。値段を見てみれば安かった。使い物になれば戦力にして、いまいちでも転売したらこの値段なら儲けは出る、という計算が働いた。有望株には先に、安いうちに唾をつける、というのはかつてはポルトやセビージャの専売特許だったが、今ではビッグクラブも熱心にやっている。

 B.サラゴサは22歳だがこれでも遅い方で、10代後半、下手すると10代半ばで青田を刈っておくのが重要な経営戦略になっている(その裏で、当然使い物にならない若者たちは捨てられる)。

 まあ、選手は商品化して投機の対象になったというのは、もう20年近く前からのこと。純粋な損得勘定でB.サラゴサ獲得は「得」と出たということだ。グラナダでは19歳サム・オモロディオンも開幕節アトレティコ・マドリー戦で1ゴールを挙げた1週間後にそのアトレティコ・マドリーから引き抜かれた(現在アラベスにレンタル中)。このオペレーションもまさに“とりあえず”だった。

契約解除金の導入目的は雇用関係の健全化

 さて、ここからは今回の移籍劇そのものを深堀りしたい。……

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ブライアン・サラゴサリーガエスパニョーラ

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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