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「励まし補い合って、タフなシーズンを駆け抜けた」湘南ベルマーレが手にしたJ1残留の価値

2023.12.15

これで6シーズン連続でのJ1残留となった湘南ベルマーレ。かつてはJ2での在籍期間も長く、久々のJ1復帰を果たした2010年以降も昇降格を繰り返していた面影は、もう今の彼らにない。2023年もやはり一筋縄ではいかぬ厳しいシーズンだったが、成長と停滞を繰り返しながら、それでも一歩一歩前に進み続け、最後に残留を手繰り寄せた1年を、おなじみの隈元大吾が振り返る。

開幕戦の大勝。与えた初陣のインパクト

 初陣のインパクトはいまも脳裏に鮮明だ。サガン鳥栖とアウェイで対峙した今季開幕戦、湘南ベルマーレは大橋祐紀のハットトリックもあり、5-1と大勝した。昨季に引き続き5位以上を目標に掲げ、スタートダッシュを期していたとおりの、上々の滑り出しだった。

 その後はしかし、勝ち切れないゲームが続いた。翌節の横浜FC戦はリードを守れず引き分けに持ち込まれ、続く川崎フロンターレ戦も先制しながら終盤追いつかれた。1勝2分で迎えた第4節は京都サンガF.C.に0-2と今季初黒星を喫し、翌アビスパ福岡戦では先制するも後半アディショナルタイムに2点を奪われ、逆転負けの苦杯をなめた。続くガンバ大阪戦は4-1と快勝し、すぐさま連敗を止めたものの、翌節のFC東京戦は好ゲームを演じながらまたも追いつかれて引き分け、以降、未勝利はじつに15試合続いた。

 副将の杉岡大暉は振り返る。

 「序盤戦は細かいところの綻びで失点してしまったり、ピンチをたくさんつくられたわけではないのにちょっとしたワンチャンスで決められたりして勝ち切れなかった」

進む相手の対策。色褪せていく前向きな守備

 12位でフィニッシュした昨季、湘南は失点39とリーグでも指折りの堅守を築いていた。だが一方で、得点はワースト3に入る31にとどまった。すなわち、上位進出を果たすうえで得点力の向上は欠かせぬテーマだった。

 攻撃に磨きをかけたプレシーズンの成果は、開幕以降コンスタントにゴールを記した足跡が示している。「敵陣でサッカーをしている感覚がすごくあった」と生え抜きの石原広教も手応えを語ったものだ。だが反面、「自陣での守備にはあまり目を向けていなかった」と続けたように、攻撃に意識を傾けるあまり、守備が疎かになった側面はあったろう。組織的に連動していても、失点の場面はどこかあっさりとした印象が拭えなかった。衝撃的な逆転負けを喫した前述の福岡戦は、優位にゲームを進めていながら勝ち切れない、あるいは勝点を逃してしまう展開の最たる例と言えた。

 遠のく結果に平常心を保つのは難しい。高い位置でのボール奪取を端緒に大橋が先制ゴールを挙げた鳥栖戦に象徴されるように、当初は良い守備から良い攻撃へと繋ぐ循環ができていた。だが失点がかさむにつれ、前向きな守備は色褪せていく。

 守備の強度が薄れた背景には、相手の湘南対策もあった。たとえば京都は3月に対戦した際、背後へのロングボールを多用してハイプレスをかわし、湘南のコンパクトな組織を広げてリズムを削いだ。9月の川崎フロンターレ戦も印象深い。彼らは従来の4バックから3バックに形を変え、攻撃もロングボールを軸とするスタイルチェンジを図ってきた。かように今季の湘南は、かつてないほど対策を講じられたのである。

 くだんの京都戦を引用しつつ、石原はチームの変化を口にした。

 「序盤戦は前からプレスをかけて高い位置でボールを奪い、素早くゴールに向かうことができていたけど、長いボールを放り込まれるようになってからはそれが徐々にできなくなっていった。前から行こうと思っていても、相手に蹴られるから選手のなかで迷いが生じ、ギャップができてしまった。プレー位置が低くなり、いいときのように前で奪う場面は少なかった」

アカデミー時代から湘南でプレーする石原。画像は第19節横浜F・マリノス戦(Photo: Tahahiro Fujii)

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湘南ベルマーレ

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