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ポッターの[4-3-3]ブロックに対するペップの“WM”と修正力【チェルシー 0-1 マンチェスター・シティ】

2023.01.08

W杯後の再開から早くも3戦目。1月5日に行われたプレミアリーグ第19節の注目マッチ、チェルシー対マンチェスター・シティは63分の1点でアウェイチームに軍配が上がった。本誌2023年1月号でも特集した3バックの変則フォーメーションで大一番に臨んだシティは、ペップ・グアルディオラ監督の交代策が的中。勝ち点を39(12勝3分2敗)とし、首位アーセナルとの差を5に縮めた。一方、グレアム・ポッター率いるチェルシーは直近のリーグ戦8試合で1勝3分4敗、勝ち点は25(7勝4分6敗)のまま10位まで順位を落としている。

前半はチェルシーのゲーム

 わずか開始2分でスターリングがハムストリングを痛めた。交代は5分、オーバメヤンが入る。この交代がケガの功名だったかどうかは定かではないが、トップ下に下りたハベルツを経由した攻め込みでチェルシーがチャンスを作っていった。

 スターリングとハベルツのどちらが1トップでトップ下だったのか、あるいは2トップだったのかは2分間では判然としなかったので、ハベルツのトップ下でのプレーとスターリングの交代に直接の関係はなかったかもしれない。ただ、オーバメヤンは明らかにトップのプレーヤーなのでハベルツのトップ下がはっきりしたのは確かである。

 ただ、チェルシーのフォーメーションは[4-2-3-1]というより、守備時は[4-3-3]のセットだった。そしてこの守備セットが前半に関してはよく機能していた。

 守備の第1列は右からオーバメヤン、ハベルツ、プリシッチ。右サイドハーフのツィエクが引く形で第2列はツィエク、ザカリア、コバチッチの3人。4バックはアスピリクエタ、チアゴ・シウバ、クリバリ、ククレジャ。前3人でマンチェスター・シティの3バックに圧力をかけ、MF3人がシティのMF4人を受け渡しながらうまくスペースを消していた。

 シティのフォーメーションは[3-2-2-3]。ウォーカー、ストーンズ、アケの3バックの前にロドリ、ベルナルド・シルバがボランチ。デ・ブルイネとギュンドアンがインサイドハーフ。前線はカンセロ、ホーランド、フォデンの3トップ。昔風に言うならWMシステムである。

 シティのWMとチェルシーの[4-3-3]では、シティに中盤の数的優位がある。しかし、前半のシティはそれを生かせなかった。フォデンとホーランドにはほとんどパスが入らず、カンセロも対面のククレジャに明確な優位性を発揮できない。つまり、ほとんどチェルシーの守備ブロック内に侵入できない状態が続いていた。これはツィエク、ザガリア、コバチッチの3人がデ・ブルイネ、ギュンドアンを背中で消しながらロドリ、ベルナルド・シルバへの牽制を続けていたためで、チェルシーのMF3人の背後にある狭いスペースもクリバリ、チアゴ・シウバが前進してスペースを消していた。

 16分、ククレジャのパスカットからハベルツを経由してプリシッチに絶妙のラストパスが通る。ストーンズがぎりぎりでシュートをブロック。最初の決定機はチェルシーだった。

この決定機阻止をはじめ、90分を通してチェルシー攻撃陣を封殺したストーンズ。クラブ選出のマン・オブ・ザ・マッチにも輝いた

 ところが、このプレーでプリシッチが負傷。22分には19歳のカーニー・チュクエメカが代わってピッチに入り、チェルシーは早くも交代カード2枚を使うことに。これが後々響くことになった。とはいえ、前半は攻撃も機能していた。……

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3バックグアルディオラチェルシープレミアリーグマンチェスター・シティ

Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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