新型3バック隆盛の5つの理由
「対5レーン守備」から“ドーハの奇跡”を生んだ「戦術的柔軟性」まで千差万別
[特集Ⅰ]
対5レーンで誕生した新たなスタンダード
新型3バック隆盛の5つの理由
ここ数年、守備ブロックを構築する際に3(5)バックで守るチームが目立つようになった。プレミアリーグでは「シティ対策」として5レーンを埋める守備が常識になり、セリエAでは躍進するガスペリーニ派閥の影響もあり、勢力を拡大中だ。
そして、カタールW杯である。UEFAネーションズリーグではフランスやイングランドも導入していたが、今大会ではオランダやベルギーを除けば、中堅国の採用例が増えている。その中でも最も効果的に運用しているのは、森保一監督率いる日本代表だろう。ドイツ戦は後半の[3-4-2-1]変更で試合を完全にひっくり返し、スペイン戦でも同じシステムで再度のジャイアントキリングを実現した。
今特集では、クラブシーンでも代表シーンでも存在感を発揮しつつある新型3 バック隆盛の理由を5つの視点から掘り下げてみたい。
[対談]レナート・バルディ×片野道郎
『モダンサッカーの教科書』コンビが考える新型3バック隆盛の5 つの理由
①「戦術的柔軟性」
○日本代表×森保一
“ドーハの奇跡”で日本代表が見せた
[3-4-2-1]の両極端な2つの顔
○チェルシー×グレアム・ポッター
ケパのCB化、スターリングのWB起用
3バックを好むポッターの「配置の駆け引き」
○ベルギー代表×ロベルト・マルティネス
サイドアタック重視からポゼッションまで変幻自在
ウイングバックの特色がチームの方針を決める
○ブレントフォード×トーマス・フランク
デ・ブルイネ&ホーランドを完封
ゴール期待値でもシティを圧倒した[3-5-2]
[対談]レナート・バルディ×片野道郎
『モダンサッカーの教科書』コンビが考える新型3バック隆盛の5つの理由
②「対5レーン守備」
○ウディネーゼ×アンドレア・ソッティル
ザッケローニの90年代から続く3バックの伝統
相手に合わせた「3」と「4」の熟練した使い分け
○アトレティコ・マドリー×ディエゴ・シメオネ
5レーン守備のスペシャリストが陥る
「次の一手」への悩みとピッチ上の混乱
○ローマ×ジョゼ・モウリーニョ
「定番」だった[4-2-3-1]からの移行
哲学は不変も、今のセリエAの環境に適応
○マジョルカ×ハビエル・アギーレ
早々と5レーンを埋める鉄壁の守備
長身FWのムリキありきの[5-4-1]
[対談]レナート・バルディ×片野道郎
『モダンサッカーの教科書』コンビが考える新型3バック隆盛の5つの理由
③「中央密度の高さ」
○インテル×シモーネ・インザーギ
中央の厚みを生かしたロープレス+縦の推進力
S.インザーギが築き上げたモダン3バックの典型例
○レバークーゼン×シャビ・アロンソ
指揮官X.アロンソによる「縦志向の強さ」と
「カバーリング&前進守備の柔軟性」の両立
○オランダ代表×ルイ・ファン・ハール
今や3バックの信奉者ファン・ハール
そのスタイルの要は豪華絢爛のCB陣
○デンマーク代表×カスパー・ヒュルマンド
「間受け」を封じる鉄壁の中央ブロック
しかし、ポゼッションの質に課題を露呈
○RCランス×フランク・ハイス
「和」で中を固め、「個」が外で刺す
シンプルな[3-4-2-1]が絶好調の理由
[対談]レナート・バルディ×片野道郎
『モダンサッカーの教科書』コンビが考える新型3バック隆盛の5つの理由
④「ビルドアップの優位性」
○パリ・サンジェルマン×クリストフ・ガルティエ
「くの字」と「ボックス」がもたらす数的優位
“MNM”が共存する[3-4-1-2]のメカニズム
○ブレーメン×オレ・ベルナー
強力2トップを基準とする[3-1-4-2]
二段構えの可変式で狙う上位浮上
○フランクフルト×オリバー・グラスナー
3バック回帰で復活
リベロ長谷部がもたらしたゲームコントロール
[対談]レナート・バルディ×片野道郎
『モダンサッカーの教科書』コンビが考える新型3バック隆盛の5つの理由
⑤「縦志向の強さ」
○トッテナム×アントニオ・コンテ
原理的なポジショナルプレーとは明らかに違う
「人とボールが同時に動く」独自のスペース創出
○ブライトン×ロベルト・デ・ゼルビ
開き過ぎないCB+流れ続けるMF
縦への加速を支える[3-2]の五角形
○ユベントス×マッシミリアーノ・アレグリ
コスティッチのクロスを生かした攻撃が機能
CB+2SBの3バック導入で球出しが改善
○アタランタ×ジャン・ピエロ・ガスペリーニ
WBやCBも!ファイナルサード攻略の要は
フィニッシュに絡む縦方向のダイナミズム
○ウニオン・ベルリン×ウルス・フィッシャー
堅守のイメージが強いが守備的にあらず
強烈なプレスで相手を飲み込む
○サンフレッチェ広島×ミヒャエル・スキッベ
2シャドーの機動力がもたらす
異質な[3-4-2-1]+ハイプレス
総括コラム
消極的な選択としての3バック増加
ウイングバックの多様性に発展の芽
COLUMN
アヤックス型の[3-3-1-3]とザッケローニの[3-4-3]
――攻撃的3バックの2つの系譜
トップ下が弾かれ、4バックへ変化できない
――シメオネに見る3バックの2つの弱点
新型3バックで発生した新しいポジション
「ハーフディフェンダー」の可能性
トルシエの「フラットスリー」に磐田の「N-BOX」
縁が深いJリーグと3バックの歴史
INTERVIEW
ロブロ・マイェル(レンヌ/クロアチア代表)
「モドリッチの後継者」である幸せ
[特集Ⅱ]
FIFA WORLD CUP QATAR 2022
カタールW杯グループステージ総括
11月20日に開幕し、12月2日に終了した2022年W杯のグループステージ。開催時期、カタールという環境、5人交代制、VAR技術の向上……様々な変化の中で日本代表を筆頭に各グループで番狂わせが相次ぎ、一発勝負の面白さを存分に味わわせてくれた今大会の前半戦を振り返る。
森保ジャパンのE組3戦を総括
強国とも1対1で十分に戦える――
日本サッカーの「新しい景色」が
確実に見え隠れした二度の逆転劇
番狂わせの増加、第3節の決戦化、得点パターンの変化…
4年前から様変わりしたGS、その背景
彼らはなぜ敗れたのか?――敗軍の将、かく語りき
○ベルギー代表
“2試合半後”の躍動…しかし「遅過ぎた」
開幕前から欠いていたチームとしての調和
○デンマーク代表
完成度が高いゆえ「パターン外」に苦しむ
エースFW不在が唯一どころか大問題に
○セルビア代表
貫き通したハイライン戦術の代償
主力そろわぬ誤算も未勝利の一因に
○ウルグアイ代表
「負けないこと」に執着した采配が裏目に
出し惜しみしたベスト布陣、時すでに遅し
○メキシコ代表
監督は何をしたかった?選手が采配批判
連盟の責任、国内リーグの在り方を問う声も
○コスタリカ代表
ドイツ戦70分は若き代表が「最も輝いた」
そして2026年へ、ポジティブなスタート
○ドイツ代表
集中し切れなかった日本戦「20分間」の後悔
シュート効率の悪さと拙守は育成から見直し
INTERVIEW
マウリシオ・ポチェッティーノ
ポチェッティーノが語るメッシ、ネイマール、ムバッペ、ケイン
REGULAR
TACTICAL FRONTIER 進化型サッカー評論 ●結城康平
– 3バック/4バック可変の先へ。グアルディオラが挑む壮大な実験
戦術リストランテ ●西部謙司
– クロップ・リバプールが歩む「完璧を目指す旅」
ドイツサッカー誌的フィールド ●ダニエル・テーベライト
– “かわいそうな”サッカー大国がカタール大会批判で失ったもの
CALCIOおもてうら ●片野道郎
– イタリアから見た日本代表の躍進。選手が認知し解釈する新しいサッカー
サッカーを笑え ●木村浩嗣
– 暴露されたバルセロナとメッシ一家の破局のプロセス。巨大化したメッシはいかに“FCメッシ”を食い潰したのか?
連載コラム
ENGLAND●山中 忍/FRANCE●小川由紀子
NETHERLANDS●中田 徹/RUSSIA●篠崎直也
BRAZIL●沢田啓明/ARGENTINA●Chizuru de Garcia