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今季フランス2位は…「え?ロリアン?」。若手中心、監督も新人、港町の小クラブが開幕10戦8勝のなぜ

2022.10.10

今季リーグ1序盤戦のサプライズが、ロリアン(Lorient)である。開幕10試合を8勝1分1敗(21得点14失点)の快進撃。1部復帰3シーズン目、2年連続20チーム中16位と残留がやっとだった、フランス北西部にある人口5万7000人の小さな港町のクラブに、何が起きているのか。

PSGと1差、昨季の勝利数に早くも到達!

 第10節を終えたフランス・リーグ1。1位は順当にパリ・サンジェルマン(勝ち点26)、しかし3位のマルセイユ(同23)らを上回り、昨季王者と1ポイント差の2位につけるのが……「え? ロリアン?」と、ちょっと意外な展開になっている。

 FCロリアンといえば、現在メキシコのティグレスでプレーする元フランス代表のFWアンドレ・ピエール・ジニャックや、最近ではマルセイユ所属のマッテオ・ゲンドゥージらを輩出している、ブルターニュ地方の典型的な育成クラブだ。漁港にある町だから、クラブのシンボルはメルルーサ。

 創立は1926年と古いが、プロクラブとして定着したのは1990年代頃からで、トップリーグ参戦は今年で16シーズン目と、下部リーグ在籍歴の方が長い。元フランス代表MFヨアン・グルキュフの父、クリスティアン・グルキュフが長く監督を務めたクラブとしても知られる。

 その彼らが10試合を終えて8勝1分1敗と、シーズンの3分の1も消化しないうちに、昨季の8勝(12分18敗)と並ぶ勝ち星を挙げるという、クラブ史始まって以来の超絶好調なスタートを切っている。それも下位に低迷する相手から奪った勝利ではない。開幕戦でレンヌを破った(0-1)のを皮切りに、リヨン(3-1)、ナント(3-2)、リール(2-1)といった格上からも勝ち点3をもぎ取っているのだ。

10月2日の第9節では、ホームで一昨季の王者リールを撃破。1-1で迎えた87分、監督の甥っ子で20歳のMFテオ・ル・ブリが、自身リーグ1初ゴールとなる劇的な決勝点をマークした

 メンバー表を見ても、世界的に知られた選手はほぼいない。今秋のカタールW杯に出場しそうなのは、チュニジア代表のDFモンタサル・タルビくらいか。よって彼らの善戦はまさにチーム力のなせる技と言えるのだが、このメンバーから傑出したチーム力を引き出しているのが、今季就任したばかりのレジス・ル・ブリ監督だ。トップリーグのクラブを率いた経験はおろか、ファーストチームの監督も初めてという46歳の新人監督が、このフレッシュなチームを上昇気流に乗せている。

 現役時代はDFだったル・ブリ監督は、A代表歴こそないが、世代別ではフランス代表でプレーした経験を持つ。27歳という若さで現役引退するとすぐに育成の道に進み、アマチュアクラブでの1年間の修行の後、自らも育ったレンヌのアカデミーでU-15チームの指導者となった。

 そして2012年、前出のグルキュフ監督に見初められて、育成部門の責任者としてロリアンに招かれた。それから10年間、このクラブとともに成長してきた彼を今シーズンの監督に任命した時、ロイク・フェリ会長は「クラブのアイデンティティを継承する人物」であることが理由だと語った。アカデミー出身の生え抜きや20代前半の若手が多い現チームの指揮官に、育成のスペシャリストである彼を据えたのは、まさに的確な人事だったと言える。

46歳のフランス人監督レジス・ル・ブリ。リール戦後の記者会見で

選手たちが「のめり込む」新人監督ル・ブリとは?

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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