SPECIAL

チームも個人もステップアップさせたい。福島ユナイテッドFC・服部年宏監督インタビュー(後編)

2022.08.11

日本代表として44試合に出場。オリンピックもW杯も経験している服部年宏は、監督初挑戦のクラブに福島ユナイテッドFCを選んだ。現役時代から理論家として鳴らした名選手は、どのような思考で新たなチャレンジに向き合っているのか。ガイナーレ鳥取でともにプレーし、以降も親交の続いている柴村直弥(SHIBUYA CITY FC)がその実情に迫る。

後編では、今シーズンから現場を預かる「監督・服部年宏」のベースとしている哲学に迫る。(取材日:6月24日)

←前編へ

戦い方のイメージは「21-22くらいのチェルシー」


――ハットさんが監督してイメージしている理想のスタイルや、そういうサッカーに近いものはどこかありますか?

 「うーん、そうですね。端的にパッと言うと、21-22くらいのチェルシーですかね。もちろん違うところもありますが、最近のチームで言うとベースのところは似ていますね。今もやっている途中で、これからやりたいこともたくさんある中で、理想というと少し違うかもしれないですが、近いところというとそんな感じですね。もちろん選手は違うので、現状の選手の中でどのように作っていくかということは考えています」

服部監督が一例として挙げた、戦術家トーマス・トゥヘル率いるチェルシー(Photo: Getty Images)


――去年の監督代行をした経験も活きていますか?

 「もちろん。しかも一番苦しい時期だったので、そういった厳しい中でやれた経験は活きています。選手たちはとても前向きに取り組んでくれて、戦術のところはもちろん大きくは変えていないですが、細かい部分で『こういったことをやってくれ』と言ったら、選手たちはパッとやってくれたりして、『こういう言い方をすれば、このレベルの選手たちはやってくれる』というようなことも経験値になりました。ただ、それよりもベースのところは、実は選手の時に鳥取と岐阜に行ったところですね」


――そうなんですね。

 「あそこで今までジュビロとかで言ってきたことと同じことを言っても、選手たちに伝わっていなかったので、『自分がどのような言い方をすれば伝わるか』というところを日々考えました。当時からそのような『どうすれば伝わるか』みたいなことをやっていて、それが結局今になって凄く活きていると感じています」


――そのあたりはハットさんご自身が選手時代にいろいろな監督と一緒にやっているわけじゃないですか。そこで自分が監督から言われた言葉でわかりやすかった言葉とか、選手側にいると当然選手たちの声が聞けるわけで、「監督がこう言ったら、この選手はこう捉えた」とか、あるいは「チームの雰囲気がこう変わった」など、ハットさんが選手時代に経験したことも今に活きている感じがありますか?

 「それはもう間違いなくそうですね。やっぱり選手時代に経験したことがベースになっている、という感覚はあります」


――ハットさんが選手時代に影響を受けたと思う監督はいますか?

 「松田(岳夫)さんは面白かったかな。それまでジュビロで13年くらいやって、ヴェルディが3年くらい。その後に鳥取で2年やりましたが、僕の中では今までにないカラーでしたね。それまでに経験した監督とは結構違ったので、松田さんの印象は強いです」


――僕も松田さんは印象深いですね(※ガイナーレ鳥取で服部監督とチームメイトだった時の監督が松田さん)。練習も面白かったです。なので、鳥取を離れた後もオフに松田さんに連絡して会いに行って、話を聞かせてもらったりもしました。僕が指導をし始めた際も、松田さんの時の練習メニューを、そのチーム用に少しアレンジして使わせてもらったりもしました。

 「僕もあの時は結構練習メニューをメモしていました。それを今も見て、『あー、こんなのやってたな』と思い出しながら、アイディアの一つにしたりする時もあります」


――それまでも練習メニューをメモすることは結構やっていましたか?

 「やっていましたね。ジュビロの時はまだあまりやっていなかったですけど、ジュビロを出てからですかね。なので、7、8年分くらいの練習メニューのメモはあります。ただ、『サイズを付けておけば良かったな』と思います。まあ、そこは自分で今考えるところで、それもまた面白いんですけどね。その日の練習メニュー、言われたこと、ポイントとかは書いていたのですが」


――僕も2017年にCriacao(クリアソン新宿)に行ってから、練習メニューを作成したり、指導させてもらうことも増えてきましたが、サイズやルール設定は大事ですよね。この選手たちのこのスキルに対して何を獲得させたいかも踏まえて設定する、というか。最初はなかなか掴めずに『ちょっと狭かったかな』とか『ちょっと広かったかな』とかいつも考えて、微調整していました。

 「そこはかなり大事な部分で、起こることを想像しますよね。特に新しい練習をやる時などは、相当練って、1mや2mずらしたり、サイズ感や設定を微調整したりします。そのあたりを自分でも楽しみながらやっていますね」


――これまでメモしてきたメニューのアイディアがあるのは大きいですよね。それをそのままやるわけではなくとも、それを見てイメージを膨らませて、アレンジしたりできますから。

 「そうそう、それはありますね」


――ハットさんは監督1年目ではありますが、これまでのそのような積み上げや蓄積してきた物がたくさんあるので、早くに成果が出てきているのかなと感じます。
……

残り:5,496文字/全文:7,749文字
この記事は会員のみお読みいただけます

会員登録はこちら

プレミア会員 3つの特典

雑誌最新号が届く

電子版雑誌が読み放題

会員限定記事が読める

「footballista」最新号

フットボリスタ 2022年9月号 Issue092

11、12月開催のW杯を控えた異例のシーズン。カタールをめぐる戦いの始まり【特集】ワールドカップイヤーの60人の要注意人物 【特集Ⅱ】ワールドカップから学ぶサッカーと社会

10日間無料キャンペーン実施中

TAG

ジュビロ磐田服部年宏福島ユナイテッドFC

Profile

柴村 直弥

1982年広島市生まれ。広島皆実高校で全国高校総体優勝し中央大学へ。アビスパ福岡でJリーグデビューした後、徳島ヴォルティスでは主将を務め、2011年にラトビアのFKヴェンツピルスへ移籍。リーグ及びカップ戦優勝を成し遂げ2冠を達成。UEFAヨーロッパリーグでは2回戦、3回戦の全4試合にフル出場した。ウズベキスタンの名門パフタコールへ移籍しACLにも出場。ポーランドのストミールを経て当時J1のヴァンフォーレ甲府へと移籍した。現在もプレーしつつ『DAZN』のJリーグ中継の解説なども行なっている。