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オープンな選手を生む、そのための組織構造。ポジショナルプレーにおける「スペース」の理解

2022.06.26

チェスなどのボードゲームに由来するとも言われるポジショナルプレーにおいて、盤面をどのように支配していくかという視点は欠かせない。フィールドの広さは変わらず、選手の人数も変わらない。だからこそフットボールの指揮官は選手たちをどのような位置に配置し、いかにして優位性を作るのかを常に考え続ける必要がある。

※『フットボリスタ第90』から掲載

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 ポジショナルプレーにおける「位置的優位」を最大化するには、どのように選手たちを配置していくのかが重要だ。トップレベルの選手たちは流動するゲームの中でスペースを概念的に理解し、そのスペースを利用している。ドリブルでスペースに侵入することも、フリーランで相手のスペースを陥れることも、どちらも選手に求められるスキルだ。この両方をハイレベルに兼ね備えることで、アタッカーは相手の守備組織を崩壊させていく。

プレッシャーを認知する能力

 ファンマ・リージョによれば、フットボールというスポーツにおいて欠かせないのがオープンな選手を使うことだ。相手からのプレッシャーが弱い状況でボールを受けることで、選手たちには判断の自由が与えられる。ポジショナルプレーにおける位置的な優位性とは、相手プレッシャーラインの背後でオープンな選手を作り、その選手を使うことになる。

 それにはまず、ボールを保持する選手が相手のプレッシャーを受ける必要がある。ポジショナルプレーを考察する記事に頻繁に登場する思想家オスカル・カノ・モレノによれば、ボールを保持する選手は相手のプレッシャーをチームメイトから自分へと移すことによって、味方のプレッシャーを軽減する。それによって受け手になる選手は、フリーでスペースを使いやすくなるのだ。

 こういったプレーを得意とする1人が、バルセロナでCBとしてプレーするエリック・ガルシアだろう。彼はボールを1列前に運ぶドリブル技術に優れており、左右を意識させながら相手のプレッシャーを緩慢にし、中央に楔(くさび)のボールを通していく。ポジショナルプレーにおいてCBがどこまでプレッシャーを浴びることに慣れているかはポイントだ。彼らがプレッシャーを嫌がり焦ってボールを蹴ってしまえば、オープンな選手は使えない。

ボールの扱いに長けるエリック・ガルシア

 同時に必要なのは、プレッシャーを認知する能力だ。現代のCBには相手のプレッシャーを受ける位置まで進入することが求められているが、その状況を作るには「自分がオープンな選手である」ことを理解する必要がある。

 CBでパスを回しながら相手のプレッシャーを外し、オープンな状態になってボールを運ぶ。それによって相手中盤のラインを前に誘い出し、オープンな選手を作っていくのだ。マンチェスター・シティのエメリク・ラポルトもこのようなプレッシャーの認知に優れた選手で、相手の中盤が前に動いたスペースを狙うようなパスを得意としている。ラポルトの前進を阻もうと前へのベクトルを強めた瞬間、自分がいたスペースにボールを供給されると守備者の反応は遅れやすい。だからこそボールを保持しながら前の状況を把握する視野は、CBにとって不可欠なスキルになっている。ドリブルでのボール前進も注目される指標だ。アーセナルでは右SBで起用されている冨安健洋も、チームの攻撃における起点となる運びのプレーを得意としている。

日本がW杯で対戦するスペイン代表でも、昨年のデビューから10カ月で15試合に出場と、不動の地位を築いているラポルト。シティでは2021-22にプレミア通算100試合出場を達成。その間にはリーグ歴代最多記録だという82勝(8分10敗)、勝ち点254獲得に貢献してきた

つまりは3対2を作ること

 ペップ・グアルディオラとリージョはオープンな選手を意図的に生むプロセスについて、次のように説明している。……

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ポジショナルプレー

Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。