
2018-19:トッテナム・ホットスパー×マウリシオ・ポチェッティーノ
プレミアリーグ:4位 FAカップ:ベスト32 リーグカップ:ベスト4 CL:準優勝
好評発売中の『フットボリスタ第88号』は創刊15周年記念号。「2006〜2021」の戦術史や各時代をリードした革新チームを大特集している。ここでは番外編として、スペースの都合で残念ながら誌面には入り切らなかった、マウリシオ・ポチェッティーノ(現パリ・サンジェルマン監督)体制下のトッテナムを取り上げたい。名将が植え付けた「ハイライン・ハイプレス」戦術を武器に、プレミアリーグの優勝争いに参戦し、18-19シーズンにはクラブ史上初のCL決勝進出を果たした。その当時を振り返るのは、クイズプレーヤーとしてマルチに活躍する『QuizKnock』編集長で、熱狂的なスパーズファン、伊沢拓司さんだ。
2019年6月2日早朝。その日、200を超えるスパーズサポーターが門前仲町のレンタルスペースに集結した。おそらく日本史上最大の、スパーズサポーターのみによる集い。日本では決してメジャーとはいえないクラブであるスパーズに、これだけのファンがいたのかと、頼もしさを感じたことを覚えている。
彼らの目的はひとつ。UEFAチャンピオンズリーグ決勝で、我らが主将ウーゴ・ロリスの手に掲げられたビッグイアーをその目に収めるためであった。普段はあまり歌うことのない英語のチャントを合唱し、初対面の同志たちと肩を組み、必死で極東の地からワンダ・メトロポリターノ(スペイン・マドリッド)まで思いを届けたのだが、残念ながら結果は伴わなかった。朝焼けとともに受け入れるしかない現実が我々を襲い、その喪失を埋め合うかのようにみんなで会場の片付けをした。
CLファイナリストとは思えない窮状
明らかに「挑戦者」側ではあった。相手であるリバプールはこの年、史上最も熾烈なPL(プレミアリーグ)優勝争いを演じ、惜しくも勝ち点1の差でマンチェスター・シティの後塵を拝していた。4位フィニッシュのスパーズとは勝ち点26の差だ。そうした状況下でなおスパーズファンが諦めていなかったのは、ひとえにCL準々決勝(対マンチェスター・シティ)、準決勝(対アヤックス)における神がかり的な勝ち上がりにあった。劇的な逆転が、ファンを奮い立たせていた。一方で、決勝という舞台には似つかわしくないほどにチーム状態がよくない、ということもまた、多くのファンが感じていた現実だ。むしろ、今になって考えると、そんな状態でCL決勝という劇薬を注入したことが、チーム再建に踏み切るタイミングを見失わせた、とすら言えるだろう。……
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