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【独占インタビュー】「僕である意味」――徳島ヴォルティス主将・岩尾憲

2021.08.03

選手としてプレーを追求するのみならず、マネージメントについて学ぶなど向上心は尽きない。いち選手の領域を超えるその取り組みにチームの向上を願い、さらには新たなキャプテン像をも思い描く。プロ11年目、湘南時代からこれまでを振り返り、「自分らしい生き方をしてきた」と胸を張る。そうしてピッチ内外で徳島を支える主将は今、仲間を思いながら、人知れぬ挑戦に胸躍らせている。

苦い経験から得た学び


――今季の中断前の戦いについて、どのように感じていますか?

 「手探り感の強い期間だったかなと率直に思います。リカルド・ロドリゲス前監督が残したものとクラブがキーワードとして示した『継続』、ダニエル・ポヤトス監督が使っている言葉や提示している戦術、選手、それらすべてに距離があるような感覚を抱きました」

――ピントが合っていないような感覚でしょうか。

 「そうですね。なので、そのピントを合わせるのにかなり時間がかかりました。ただ、時間がかかったと思う一方で、もしかしたら最短でここまで来たという考え方もできるのかもしれない。というのも、2018年にも似たようなことが起きて、その時はシーズンが始まってから最終節が終わるまで1年間ずっとピントが合わなかった。過去のその出来事を思うと、今この段階でピントが合ってきたのは早いと言えるかもしれません」

J1第14節、広島戦でポヤトス新監督にリーグ戦初白星を贈った徳島だが、以降は3分4敗と苦戦が続く


――2018年はJ2で11位と、順位も落ち込みました。

 「自分たちがいいプロセスを踏めていないから、正直勝てる気がしなかったですよね。勝っても自信に繋がらないし、積み上げができているという感覚にならない。くじを引いているような感覚が強かった。今季はそこで得た学びが生きていると思います」


――ピントを合わせるために、具体的にはどのような努力をしているのですか?

 「真実って、物事をいろんな角度から見ないとつかめないんですね。偏った価値観で捉えると、例えば監督の言っていることが悪く見えてしまう。そうではなく、自分たちはどうなんだとか、監督にそう言わせている要因はなんだろうとか、それは選手で解決し得るんだろうかとか、いろんな角度から掘り下げていくと徐々に真実が見えてくる。そうして、僕らがまだ監督の信頼を得られていないのなら、選手としてやらなければいけないことはなんだろうと考える。すると行動が変わり、行動が変わると主体性を持てるようになったり、ポジティブに取り組めるようになったり、良くない事象が起きた時に『憲くんどう思いますか?』と相談されたり、チームを良くするために建設性が生まれる。2018年まではそれを引き出せなかったんですよね」


――2019年のある試合後に、「人への伝え方やマネージメントを勉強している」と話していたことが印象に残っています。それは2018年の経験があったからなんですね。

 「はい。まさに2018年以降、本を読む機会や人の話を聞く機会を増やし、コミュニケーションに関しても講義を受けるなどして自分なりに学びました」


――いち選手の取り組みを超えていますよね。

 「変人ですよね(笑)。自分でも思います。でも必要だと思ったんですよね」


――それはキャプテンとしての責任感からですか?

 「そうですね……。自分のサッカーキャリアが豊かでありたいと思った時に、仲間のサッカーキャリアも豊かでなければそれは実現できないと思ったんです。仲間のサッカーキャリアが豊かになるためには、みんながどんな考え方をして、どんな価値観を持っていて、何が得意で何が苦手で、どんな時に調子が良くて、どんな時に落ち込んでとか、挙げたらキリがないんですけど、一人ひとりのパーソナリティをもっと深く知り、人によってアプローチを変える手札を持っておく必要があると思いました。勉強したから自分が正しいとか、みんなのことが分かるようになったという意味ではなく、学ぶことでチームがよくなる確率を高めたいと思ったんです。チームがよくなるために学んでいる感覚ですね」


――監督のようなアプローチですね。

 「そこをやるのは監督なんでしょうけど、監督はロッカールームまで見えないじゃないですか。選手の一番そばにいるのは選手なので、手助けできるならした方がいい。チームの状態があまり良くない時に早く軌道修正して有意義な1年にしたいという想いもあるし、みんなで有意義な1年にしたいので、自分なりに取り組んでいます」


――2018年が1つの転機になっている、と。

 「そうですね。自分に何ができるか、状況が悪い時こそ試されますが、2018年は本当に何もできなかった。監督と選手のハブになる役割を担っているのに、チームを良くするための手立てが何もなくて、それがすごく悔しかったんですよね」


――チームに寄り添わずに個人昇格を目指すというスタンスもあると思いますが、そのようには考えないのですね。

 「考えないですね。もちろんそれも1つの考え方だと思いますけど、例えば自分が点を取ればいいという考え方ってすごく利己的ですよね。でも、点を取るためには誰かにパスをもらっているわけです。つまりそこには矛盾があるので、言葉に力を感じない。僕の思う豊かさには繋がらないし、幸福度も上がりません」


――チームがあってこそ個人の結果もあるということですね。

 「はい。それがフットボールの本質じゃないですか。特に今は前の選手も守らなければいけないし、後ろの選手も攻撃しなければいけない時代なので、なおさらですよね」

昨季までとは異なる戦術のディテール

……

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隈元 大吾