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ドイツの戦術サイトが総力を結集した、グアルディオラ戦術徹底分析#2_さまざまなバリエーションを備えた[3-2-2-3]の解読

2021.07.28

ハーフスペース」をはじめとした戦術用語の詳細な解説やチーム戦術の分析を行い、寄稿者の中からレネ・マリッチらプロのコーチに転身する人材も輩出しているドイツの戦術分析サイト『シュピールフェアラーゲルンク』。サッカー関係者からも一目置かれる存在の同サイトがこの春、2020-21に破竹の勢いで勝利を重ねたグアルディオラの最新戦術について徹底分析した記事を公開した。分析には、ハイデュク・スプリトのセカンドチームでコーチを務めたマルティン・ラッフェルトら複数のライターが参加。さらに、レネ・マリッチもフィードバックやアドバイスを行っている。今回は 『シュピールフェアラーゲルンク』 の許可を得て、珠玉の分析記事を全編翻訳し公開する。

第2回では、いよいよ本題となるグアルディオラの最新戦術分析へ。2020-21に披露した[3-2-2-3]のいくつかの構造的特徴と、それによって実践されているグアルディオラの原則や目的を紐解いていく。

第1回はこちら

グアルディオラの最新の打開策は、1つのアップデート

 マンチェスター・シティは2019-20シーズンもデータの上では多くの部分で リバプールを上回っており、統計上は大きな変化はなかった。だが、2020-21のプレミアリーグ第14節サウサンプトン戦の結果は注目に値する。この試合に勝利して以降、第27節のマンチェスター・ユナイテッド戦まで毎試合勝ち続けたのだ。

 グアルディオラは何を変えたのだろうか? “考え過ぎるグアルディオラ”という論調を好む者は、停滞し続けていた頭でっかちのオーバーシンキングがついに実を結んだと主張することもできるだろう。

基本的な[4-1-2-3]([4-3-3])の並び。なお、以下も含め図版上ではSBが英語での呼称FB(=フルバック)となっている

 2020-21シーズンの初めはわりと定期的に[4-1-2-3]([4-3-3])をベースとして、さまざまな構造とメンバーを組み合わせながら試合に臨んでいた。これは、明らかに相手の出方に合わせていたからだ。そんなグアルディオラのスタイルを象徴していたのがケビン・デ・ブルイネのポジションである。試合の状況や相手に合わせて9番(CF)としてプレーしたり、8番(セントラルMF)としてプレーしたりしていた。

 大外レーンは2人の選手によって埋められ、幅広くフィールドを使う。同時に、SBは高い位置を取る。この部分は、2020年12月以前の戦い方とはまったく異なる、大きな変更があった点だ。さらに、プレーのリズムにも変化があった。この変更は、パスのコンビネーションやカウンター対応の守備にも影響を与えた。……

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ジョセップ・グアルディオラマンチェスター・シティ戦術

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シュピールフェアラーゲルンク

2011年のWEBサイト立ち上げ以来、戦術的、統計的、そしてトレーニング理論の観点からサッカーを解析。欧州中から新世代の論者たちが集い、プロ指導者も舌を巻く先鋭的な考察を発表している。こうしたプロジェクトはドイツ語圏では初の試みで、13年には英語版『Spielverlagerung.com』も開始。監督やスカウトなど現場の専門家からメディア関係者まで、その分析は品質が保証されたソースとして認知されている。

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