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小学生にヘディング練習は不要?イングランド最新ガイドラインをめぐる論争

2021.01.25

1月22日、JFA(日本サッカー協会)は脳震盪による特別交代枠の導入に向けて、IFAB(国際サッカー評議会)とFIFA(国際サッカー連盟)に申請を行うことを発表。試合中の脳震盪については世界で足並みがそろいつつある一方、各国で対応が分かれるのは練習中のヘディングだ。その一例として、小学生年代(U-6~11)でのヘディング練習を禁止するイングランドで巻き起こる論争を、現地での指導経験を持つマーレー志雄氏に解説してもらった。

 イングランドでは、U-6~11においてヘディング練習を原則禁止としている。2020年2月にイングランドサッカー協会(以下FA)が発表したヘディングに関するガイドラインの改定により、同規制が加わった。アイルランドとスコットランドの両協会でも適用されている現行ガイドラインの概要は以下の通りだ。

・U-6~11ではヘディング練習を禁止
・U-12~16では段階的にヘディングの練習量を増やしていく
・各年代に適したボールサイズで練習や試合を行う
・試合でのヘディングに関するルール変更はなし

 ガイドライン改定の背景にあるのは、グラスゴー大学が行った研究だ。「元プロサッカー選手は、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患で死亡するリスクが約3.5倍高い」という実態が明らかになっている。「ヘディングが直接的な因果関係にあるかどうかは明確ではない」と結論づけているが、FAは潜在的なリスクを軽減するため、その決断に至ったようだ。イギリスでは「選手である前に人」という意識が強い。健康を害するリスクは極力なくしていく傾向がある。まだ体が十分に発達していない11歳以下の子供たちが対象であればなおさらだ。

 ガイドライン上には「この年代(U-6~11)では楽しく安全な中でボールの扱いや体の操作を習得することが優先される」という言葉もある。そもそも子供たちがヘディングを身につける必要性は高くないのだろう。実際にイングランドでは、小学生年代向けにより小さなピッチ、より少ない人数で行うサッカーが推奨されている。そのようなフォーマットでは、ヘディングがなかなか発生しないのも理由の1つかもしれない。

「ヘディングできなくてもいい」環境づくり

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ヘディング育成

Profile

マーレー志雄

1993年、滋賀県生まれ。日本で3年間の指導経験を積んだ後、イングランドで指導者ライセンスを取得するためにサウサンプトン・ソレント大学のフットボール学科へ。現地でU-12の男子チームから大学の女子チームまで幅広いカテゴリーを指導し、現在は同大学のスポーツ科学&パフォーマンス指導学科で修士課程に進んでいる。Twitter:@ShionMurray