「ザイオン・スズキは世界ナンバーワン!」ついに現れたプレミア日本人守護神への讃歌
Good Times Bad Times 〜フットボール春秋〜 #32
プレミアリーグから下部の下部まで、老いも若きも、人間も犬もひっくるめて。フットボールが身近な「母国」イングランドらしい風景を、在住も25年を超えた西ロンドンから山中忍が綴る。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第32回(通算266回)は、デビュー3試合で早くも地元民をとりこにするアストンビラの新GKについて。「プレミアリーグという世界最高峰の舞台で活躍できるように頑張っていきたい」――レゲエとヘビメタが息づく地、バーミンガムで始まった24歳の新章を現地からレポート!
アイアン、ライオン、ザイオン!ではなかったけれど
アストンビラのファンは、いきなり歌っていた。今夏に加入した新GK、鈴木彩艶を讃えるチャントを。
個人的に期待していた、『Iron Lion Zion』の替え歌ではなかった。「レゲエの神様」ことボブ・マーリーによる同曲は、「シオン(古代エルサレムの丘で発音は『ザイオン』)でライオンの如き鋼の意志を持ってみせる」という意味のサビに、不撓不屈とのメッセージが込められている。屈強な身体からして逞しく、移籍先で身にまとうユニフォームの胸にはライオンが描かれた紋章と、アストンビラの“ザイオン”に打ってつけの曲と思われた。クラブのお膝元バーミンガムは、かつて英国における「レゲエの首都」と呼ばれた都市でもある。
“ビラン”ことアストンビラ派の地元民にすれば、見え見えの選曲すぎるのかもしれない。だが彼らは、パルマ(イタリア1部)からやって来た新ナンバー1に、賞賛の声を上げること自体は躊躇(ちゅうちょ)していない。第一声は、鈴木がデビューを果たした、今季プレミアリーグ第2節アーセナル戦(0-1)の前半25分。近距離からのヘディングシュートを反応鋭く弾き出すと、ビラ・パークを埋めたホーム観衆からは、主審が相手のファウルに笛を吹いていても、「ザイオン・スズキは世界ナンバーワン!」との合唱が起こった。
昨季までエミリアーノ・マルティネス用だったチャントの歌詞変更には、試合前日、昨夏に続く移籍騒動の末にチェルシーへと去った、前GKへの当て擦りという意図もなくはなかっただろう。しかし、その4分後の再合唱は、純然たる新GKへの賞賛だ。鈴木が敵陣内の味方に届けたライナー性のロングフィードは、『スカイスポーツ』解説者のガリー・ネビルからも「GKのパスでは、これまで目にしてきた中で最高レベル」との評価を得た。
「落ち着いて自分から組み立てる意識」を強めて“ベッカム”のように
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Profile
山中 忍
1966年生まれ。青山学院大学卒。90年代からの西ロンドンが人生で最も長い定住の地。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』『バルサ・コンプレックス』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。
