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私はパブロ・マチンが好きだった――素朴なセレッソ大阪新監督は血湧き肉躍る“放り込み”で勝ちにこだわる3バック信奉者

2026.07.24

サッカーを笑え #71

7月3日、サウジアラビア(アル・イテファク)へと去ったアーサー・パパスの後任として、セレッソ大阪の新指揮官に就任したパブロ・マチン。23歳で現役を退いて以来、指導者の道を歩んできた51歳のスペイン人は、どんな監督なのか。「でかいハンマーでガンガン叩くようにプレー」していたセビージャ時代(2018年5月〜2019年3月)を振り返り、その“陽気なスペイン人”とは対極の人柄や、“天国か地獄か”という戦術について紹介したい。

セビージャは解任すべきじゃなかったのに

 「パブロ・マチンがセレッソ大阪の監督に就任」

 パブロ・マチン、ずい分久しぶりに聞いた。途端に「セビージャは解任すべきじゃなかったのに……」という思いも懐かしく蘇ってきた。

 2018‐19シーズンの3月、ELでスラビア・プラハ(チェコ)相手に敗退した翌日、セビージャはマチンを電撃解任した。当時3連覇を達成済みで優勝して当然という空気があったコンペティションで格下に16強で敗れた、というのがクラブのプライドを傷付けたのは想像に難くない。だが、リーガでは6位で目標の4位(CL出場権)とはわずか5ポイント差だったのだ。本人もまったく寝耳に水だったとのちのインタビューで振り返っている。マチン解任と同時に発表されたのがスポーツディレクター、モンチ復帰(現エスパニョールSD)というビッグニュースで、新生セビージャの旅立ちという夢を見させるためにマチンは切り捨てる、というシナリオをフロントが書いたのだろう。

 私はパブロ・マチンが好きだった。

 記者会見場にちょっと驚いたような目をして熊のようにノッソリとやや猫背で現れる。サッカー文化のあまりないソリアという人口わずか4万人の北部のやたら寒い街の出身で、地元のCDヌマンシアはほんの短い期間プロリーグ(1部、2部)にいて名を聞かなくなったと思っていたら今は連盟リーグ(4部相当)に沈んでいた。素朴という感じで口数も決して多くなく、ウナイ・エメリ(現アストンビラ監督)のように会見大好き、戦術論大好きで笑顔で30分もやりとりする感じとは対極だが、質問には丁寧に答えてくれる。監督には面倒臭そうに嫌そうに答えて、記者を馬鹿にした感じの雰囲気をぷんぷんさせるビッグネームもいるが、マチンはそんなことはまったくない。笑顔もめったに見せないのはチームのスポークスマンという役割をまっとうする真面目さの表れだったのだろう。田舎によくいる実は良い人なんだけど、余計なことを言わない慎重で保守的な人で最初ちょっととっつきにくい。「陽気なスペイン人」というのは南部の人のことであって、北部の人には陽気の反対の人もいるのだ。

 とはいえ、正直で誠実で、はぐらかしたりせずきちんと話をしてくれるので日本の記者のみなさんは仕事はしやすいはず。セレッソ大阪の公式サイトに「セレッソファミリーへメッセージ」という動画が上がっていたけど、そうそうこんな感じ。一つひとつのフレーズが短いとか、笑わないとか、視線がちょっと動くとか、声に抑揚があまりないとかは別に嫌々やっているわけではなくシャイだからであって、それは出身地とかご両親は農家を営んでいたというバックボーンが関係しているんだろうな、と思う。

 マチンのこういう部分をスペイン第4の都会のクラブで欧州の強豪を自負しているセビージャはグラマラスではない、と見くびるところがあったんじゃないか。あの解任の仕方を見てそんなことも感じた。過信であり傲慢であった。もちろん、監督だから頑固なところはあって、「戦い方は選手たちの特徴次第」と優等生回答をしながらも、どこで指揮をしても3バックを貫いている。勝利にこだわりポゼッションにこだわらない、戦うチームを作り上げることで先輩であるディエゴ・シメオネ(アトレティコ・マドリー監督)を尊敬している。

喜怒哀楽が詰まっていた「ガンガン叩く」サッカーのメカニズム

 そんなプレースタイルの方は人柄よりもさらに魅力的だった。

……

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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