連敗を6で止める決勝点は練習で積み上げた成果の現れ。柏レイソル・細谷真大がヘディングに込めたストライカーの執念
太陽黄焔章 第36回
柏レイソルのエースは苦しんでいた。J1百年構想リーグでも、開幕戦以降はゴールを挙げられず、チームも第10節から悪夢の6連敗。得点力不足の責任を一身に背負い、細谷真大は雌伏の時を過ごす。だが、この男がそのまま終わるはずがない。第16節・川崎フロンターレ戦。途中出場から決勝点を挙げたのは黄色の背番号9。この1点には細谷が抱えてきたさまざまな想いが詰まっていた。
「派手なガッツポーズはできなかったですね」
馬場晴也が右サイドのスペースへ走り込む。久保藤次郎とのローテーションからポケットを取り、そこで前を向いた馬場は、ふわりとしたクロスをゴール前へ送り込んだ。
その瞬間、細谷真大は松長根悠仁の密着マークを受けていたが、そのマークを振り切り、ファーサイドへ流れていった。馬場の浮かしたクロスは細谷が走り込んだファーサイドへ。このボールに対し、細谷は身体全体で押し込む形で、ヘディングシュートを叩きつけた。ボールはゴールネットへ突き刺さり、黄色く染まる日立台が揺れた。
この得点は、柏レイソルにとっては6連敗を止める決勝点となり、そして細谷自身にとっても、百年構想リーグ開幕戦以来となる15試合ぶりの得点だった。
ただ、得点直後の細谷に派手なガッツポーズはなかった。
「素直に喜べなかったです。ずっと点を取れていなかったですし、自分のゴールで取れたはずの勝点もあったと思うので、派手なガッツポーズはできなかったですね」
その言葉には、この数カ月間、柏の9番として背負い続けてきた責任が滲んでいた。
キャンプでの好調ぶり。今季に懸けるモチベーションの高さ
今季の細谷は、決して悪いスタートを切ったわけではなかった。
昨季ラスト2試合。特にアルビレックス新潟戦ではハットトリックを達成し、最終節のFC町田ゼルビア戦でも、昌子源、岡村大八、望月ヘンリー海輝という屈強な3バックを相手に前線で起点となり続けた。その試合では得点こそなかったものの、DFを背負い、ボールを収め、時にはスペースへ流れ、裏へ抜けて攻撃に推進力を与える。あらゆる局面で違いを生み出していた。
今年1月のキャンプでも、その好調さは継続していた。
「コンディション的には良い状態で来ていますし、個人的にも練習試合では点も取れているので」
細谷も自分自身のプレーには手応えを感じていた。
昨季途中からは途中出場が増えていたが、シーズンが終わってみればチーム最多の11得点を記録し、前述のとおりラスト2試合では圧巻のパフォーマンスを見せた。そこで掴んだ感覚を「今年は最初から見せていきたい」と語り、さらには「二桁得点は取りたい」と、百年構想リーグで得点王を狙う覚悟まで口にしている。
「FWの得点力と、チーム全体で勝負強さがもっと必要だとは思っています」
この時点ですでに、細谷の視線は個人の数字だけでなく、昨季タイトルを逃したチームを優勝に導くことに向かれていた。
狂った歯車。鹿島戦での痛恨のPK失敗
周囲の選手たちも、細谷の状態の良さを感じ取っていた。
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Profile
鈴木 潤
2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。
