惜敗ではなく完敗。どうしたらアトレティコ・マドリーはアーセナルに勝てたのか?
サッカーを笑え #66
1-1の第1レグを経て、5月5日にロンドンで行われた第2レグは1-0。アーセナルが2005-06シーズン以来、20年ぶりのCL決勝進出を成し遂げた。不十分だったディエゴ・シメオネ監督のメッセージ……。これで5シーズン連続の無冠が決定したアトレティコ・マドリーには、何が足りなかったのか。
スコア上では接戦だったが、それ以外は完敗、というアーセナル対アトレティコ・マドリーだった。ボール支配でもスペース支配でも1対1でも11対11でも交代メンバー対交代メンバーでも技術でも体力でも戦術でもすべてアーセナルが上。90分間でマイボールで敵陣にいたのは前後半の10分間ずつほどで70分間は自陣で相手ボールを追いかけていた印象。特に、トーナメントに強いシメオネ采配と根性で戦うチームのはずだったのに、65分過ぎにアントワーヌ・グリーズマンとフリアン・アルバレスがベンチに下がって以降まったく反撃の気配もなく無抵抗のまま敗れたのはショックだった。いつも以上に激しいシメオネの身振り手振りがグラウンド上の無抵抗ぶりを際立てる結果になっていたのは皮肉だ。「落ち着け!」も「頭を使え!」も守りから入ったチームが先制され点を取りに行くスイッチを切り替えるメッセージとしては明らかに不十分だった。
試合後のスペインメディアは「あと一歩だった」とか「あのPKの笛が吹かれていれば……」式のスコアしか見ていないような論評であふれたが、それはファン視点であって分析視点とは違う。実際にはリーガ勢の3番手と、CLでもプレミアリーグでも優勝を狙えるチームの間には一流と超一流の明らかなレベル差があった。一発勝負で次に当たれば勝てるかもしれない。しかし10回当たって2回勝てるかどうか。
惜敗だと思った人に簡単な質問をしたい。この日のアーセナルの先発11人とアトレティコ・マドリーの先発11人でベスト11を組むとしてアトレティコから何人が入るでしょうか? 私の答えは2人、フリアン・アルバレスとマルコス・ジョレンテだけ。前者がエベレチ・エゼに代わり、後者がマイルズ・ルイス・スケリーに代わる以外の残りの9人はすべてアーセナルの選手になるはずだ。

劣勢を考慮した戦い方だったが…必然の失点
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Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。
