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プレーで、姿勢で、言葉で魅了するキャプテンの覚悟。アルビレックス新潟・藤原奏哉が担うのは「思いを繋いでいく立場」

2026.04.23

大白鳥のロンド 第34回

アルビレックス新潟が第11節にして、ようやく今季のホーム初勝利を手繰り寄せた。そのFC今治戦は、クラブの法人設立30周年記念試合という特別な一戦。そんな大事な試合を前に、指揮官の心も動かすような言葉で、チームメイトを奮い立たせたのが、キャプテンを任されている藤原奏哉だ。キャリア初の大役に就き、苦しみながらも前へと進み続けている男の、真摯な声に耳を傾けたい。

ようやく掴んだ今季ホーム初の勝点3。チームメイトに響いた主将の言葉

 4月18日、明治安田J2・J3百年構想EAST-Aグループ地域リーグラウンド第11節・FC今治戦。アルビレックス新潟は1-0で勝利し、ホームで今季初めて、勝点3をつかんだ。

 今季ホーム4戦目となったこの一戦は、クラブの法人設立30周年記念試合という、特別な意味合いを持つ試合でもあった。2003年、J2初優勝とJ1昇格を成し遂げた選手たち――野澤洋輔は社長、船越優蔵は監督となり、山口素弘はゲストとして、デンカビッグスワンスタジアムに集っていた。

 長らくその歴史を見守ってきたファンやサポーターにとっては、感慨深い節目となっただろう。中でも船越監督は前日の会見で「いろんな先人の方が、築き上げてくれた。その30年の歴史を表すようなゲームができたら」と、メモリアルゲームへの意気込みを語った。

 しかし、選手たちは若い。この日の先発11名の平均年齢は26.45歳。30年の重みを感じられるかというと、正直、難しかったに違いない。それを見事に、“自分事”として意識させたのは、主将の藤原奏哉の言葉だった。

 「みんな普段、クラブの歴史を感じる瞬間はあまりないと思うけれど、今日がその試合だし、その瞬間だよ。俺たちの1試合1試合が、ワンプレーワンプレーが、このチームの歴史をつくるよ。誇りを持って戦おう」。ロッカーアウト前の円陣で、そう伝えると、胸のエンブレムをバンバンと叩き、「行くぞ!」と叫んだ。

 「それで一気に、選手たちにスイッチが入ったんですよね」(船越監督)。見ていた指揮官も、ぐっと来た場面だった。

 藤原自身は「特に深いことは言っていないですけど、みんなに届くようには言えたんじゃないかな。ダラダラ喋ってもしょうがないので、なるべく短く、ぱっと入る感じで。そんなに考えてはいないですよ」と明かす。

一喜一憂せず、先を見据える

 そのうえで、プレーでもチームを引っ張った。

 新潟は、直近3試合でわずか1得点。そもそも1試合あたりのシュート数が、いずれも4本しかなかった。その反省を踏まえ「ボックスの中に、人もボールを入れよう。そうじゃないと点なんか生まれない」という船越監督の思いを、試合の入りから表現した。高い位置でボールを奪ってはカウンターの起点となり、自らも攻撃参加し、クロスを積極的に上げた。

 「今日はジェイソン(・ゲリア)がかなり高い位置でプレーできていたので、僕もなるべく相手のラインを越えるようなところでプレーした。それで相手を押し込む形が何回もできた。それでサイドハーフやフォワード、ボランチの選手と距離が近い形でできたので、チームとして、サイド攻撃が機能したと思う」

 敵陣に押し込み、意図的なパスワークで相手を揺さぶり、42分に生まれたマテウス・モラエスの得点に関与した。さらに守備でも貢献。1−0で迎えた90+3分、相手のカウンターに全力で戻ってボールホルダーの前進を阻み、無失点で終えることに成功した。

……

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Profile

野本 桂子

新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。現在はアルビレックス新潟のオフィシャルライターとして、クラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。

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