REGULAR

スーパーセーブは“コンマ何秒”で決まる。札幌GK田川知樹の「準備」と「修正力」

2026.04.17

清水英斗の「語りたくなるワンプレー」#6

ピッチ上の22人が複雑に絡み合うサッカーというスポーツは、一歩立ち位置が違うだけでバタフライエフェクトのようにその後の展開が大きく変わってくる。戻るのか・戻らないのか、走り込むのか・とどまるのか……一見何気ない選択の裏には数多くのドラマが眠っている。清水英斗が思わず語りたくなるワンプレーを掘り下げる。

第5&6回は、第6節・札幌対磐田戦。前半40分、守護神・田川知樹が見せたスーパーセーブに迫る。前編では、その一瞬に凝縮された駆け引きを読み解いた。では、その判断はどこから生まれるのか。後編では、一瞬の決断を支えるための「準備」と、ミスを次に活かす「修正力」について掘り下げる。

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数秒を削った“隠れたファインプレー”

 前編に続き、さらに詳細なワンプレーの内幕を、田川選手に語ってもらった。前編で読み解いたのは、「その瞬間」の駆け引き。後編では、その判断を可能にした“準備”に踏み込む。

○ ○ ○

――相手の角選手がカットインしてきて、普通ならファーに打ちそうな場面ですが、西野選手のファー切りブロックが入ったこともあり、角選手のシュートは真ん中に飛んできました。僕はもう一つ気になったことがあって、家泉選手の対応なんですけど、中へ切り返されつつも、完全に振り切られたわけではなく、食らいついているんですよね。これも結構、重要だったんじゃないかと。というのも、角選手は切り返してすぐシュートを打っても良かったのに、家泉選手の食らいつきによって、ちょっと打つタイミングが数秒遅れたように見えます。それによって西野選手のファー切りブロックが間に合い、コースが狭まったのではと。

 「そうですね。もう最後の最後まで、少しでも相手にプレッシャーを与えるということ。そのほんの少しが、試合の勝敗を決めると思っているので、少しでも相手に影響を与えたことは本当に大事で、あまり目立たないかもしれないですけど、隠れたファインプレーだと思います。たぶん、家泉選手も中に切り返させてはいけない、と絶対にわかっていたと思うけど、それでも行かれてしまうことはどうしても起こるので、それでもその時のできる限りの対応をしてくれたと、GKとしては思います」

0.000何秒を縮めるための予測

――あと先ほど、一般的な場面としてシュートが股を抜ける時などは、DFに股を閉じさせつつも、「どっちに来ても行ける準備を心がけている」とおっしゃっていました。今回のワンプレーについて言えば、ニアを予測した中でシュートが真ん中気味に来ましたが、意表を突かれつつも、どちらでも対応できる準備になったんですか?

 「そうですね。距離も近かったので、シュートを打たれてからニアへ反応すると、このシーンだと絶対に遅いと思うんです。真ん中は絶対に取れるという自信があり、最後の最後にファーはないと思ったので、空いているニアに絞った、という感じです。ただ、それでも、あとほんの少し遅らせて動いても、対応できたかなと思います」

――なるほど。早く動きすぎると、真ん中に抜かれるコースができてしまうから、ギリギリのタイミングですよね。

 「早く動きすぎて真ん中に決められるなんて、そんなもったいないことはないので」

――かといって全く動かなければ、ニアに来たとき防げないし。

 「人にもよると思います。やはり止められる範囲だけは絶対に止める、というGKもいると思いますし。ただ、僕は身体がそこまで大きくないので、予測の部分でも上回るというか、少しでも早く予測を立ててシュートに備えたいタイプなので、最後の最後にファーがないと思ったら、少しニアに重心を置くことは意識しています」

――そのあたりの予測は、田川選手にとって自信を持っている部分ですか?

……

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Profile

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』『日本サッカーを強くする観戦力 決定力は誤解されている』『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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