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「ACLを狙う」V・ファーレン長崎、J1百年構想リーグを本気で勝ちに行く理由

2026.01.22

V・ファーレン長崎、西果ての野望#1

2018年に「長崎スタジアムシティプロジェクト」を立ち上げた時、遠い夢物語に過ぎなかった。それから6年でJリーグの1つのモデルケースになるような大型複合施設は完成し、チームは2度目のJ1昇格を果たした。しかし、まだ夢の途中。長崎という地方都市を舞台に、J1での躍進、そしてその先にあるACL出場を想い描く――番記者・藤原裕久が西の果ての野望を現在進行形で伝える。

第1回は、J1復帰1年目のクラブが百年構想リーグを本気で勝ちに行く理由について掘り下げてもらった。

遠い夢物語が現実となった「成功体験」

 野望とは、分不相応な大きな望みのことである。身の程を知らない大それた望み、とも言い換えられる。希望や大望といった言葉と比べれば、どこかネガティブな響きを持つ表現かもしれない。しかし、V・ファーレン長崎がいま掲げているものを表すには、この言葉こそがふさわしい。

 長崎という地方都市を舞台に、J1での躍進、そしてACL出場を想い描く。それは「こうなってほしいと願う」希望でも、「成し遂げたいと願う」大望でもない。分不相応であることを承知の上で大きな望みを実現するために、願うのではなく本気で動く。そうした姿勢はまさに「野望」である。

 思い返せば、2017年途中に長崎の経営を引き継ぎ、2018年に「長崎スタジアムシティプロジェクト」を立ち上げた時もそうだった。長崎市中心部にサッカー専用スタジアムを中核として、ホテルや商業施設を建設すると高田旭人会長が発表した時、どれだけの人間が実感を持ってその話を受け取っただろうか。当初600億円とされた整備費用とそのスケールの大きさを前に、どこか遠い夢物語のように感じた関係者も少なくなかったはずだ。

 だが、それから6年。整備費用が最終的に倍近くまで膨れ上がってもプロジェクトを推し進めた結果、長崎という地方都市のスケールからは想像もできなかった、国内でも前例のない大型複合施設「長崎スタジアムシティ」が完成した。分不相応とも思える大きな望みを掲げて夢を語り、実現に向けて諦めない。それこそが、長崎の街から通販事業で有力企業へと成長し、V・ファーレン長崎を運営するジャパネットグループのスタンス、引いては長崎のクラブスタンスなのである。

長崎スタジアムシティ(Photo: Hirohisa Fujihara)

「ACLを狙う」ための積極補強

 そんなクラブが、スタジアムシティという最高の環境を整え、満を持してJ1に乗り込む。当然、掲げる目標は残留や経験を積むことなどではない。J1での躍進、そしてその先にあるACL出場である。昨年のJ1昇格決定後、シャンパンファイトを終えた高木琢也監督は、百年構想リーグについて「ACLを狙うチャンスだと思う」と真顔で口にした。J1昇格が決定してわずか3時間後のことである。高田旭人会長もJ1昇格報告会で「遠くない将来のACL出場」について言及しており、長崎が2026シーズンの見据えているのは明確だ。百年構想リーグとJ1で躍進し、J1トップクラブの仲間入りを果たすことである。

 その野望を実現するため、長崎は2026シーズンへ向けた補強で積極的に動いた。通常、昇格争いをしているクラブは、まだ昇格や優勝が決定していない段階では契約更改に関連する話を避けることが多い。シーズン終了後のイベントに選手が出席することを考慮するケースもある。しかし昨季の長崎は違った。どちらも決定していない11月23日の水戸戦終了後から、契約更新する選手との事前交渉を開始したのである。就任時は半年契約だった高木琢也監督の契約更改の方向性もこの頃から固めて、監督の意向も踏まえながら補強リストを更新し続けている。

高木琢也監督と高田旭人会長(Photo: Hirohisa Fujihara)

 作成されたリストには、外国籍選手中心から日本人選手中心とする方針のもと、日本代表クラスの名前も数多く入っていたという。そして、交渉開始時には獲得候補の選手にこう目標を伝えたとされる。

 「百年構想リーグから本気で優勝を目標にしている。ACLを目指している」

……

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Profile

藤原 裕久

カテゴリーや年代を問わず、長崎県のサッカーを中心に取材、執筆し、各専門誌へ寄稿中。特に地元クラブのV・ファーレン長崎については、発足時から現在に至るまで全てのシーズンを知る唯一のライターとして、2012年にはJ2昇格記念誌を発行し、2015年にはクラブ創設10周年メモリアルOB戦の企画を務めた。

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