元セットプレーコーチが指揮官。プレミアを席巻するブレントフォードの「シームレス・カウンター」
TACTICAL FRONTIER~進化型サッカー評論~#24
『ポジショナルプレーのすべて』の著者で、SNSでの独自ネットワークや英語文献を読み解くスキルでアカデミック化した欧州フットボールの進化を伝えてきた結城康平氏の雑誌連載が、WEBの月刊連載としてリニューアル。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つ“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代フットボールの新しい楽しみ方を提案する。
第24回は、元セットプレーコーチのキース・アンドリュース新監督の下で好調を維持するブレントフォード。セットプレーの工夫はもちろん、イゴール・チアゴとシャーデの2トップを軸にした連動しながら仕掛ける「シームレス・カウンター」が威力を発揮している。プレミアを席巻するダークホースの戦術を解析してみたい。
トーマス・フランク時代の終わりと、驚きの新監督人事
オフ・ザ・ボールの動きとスピードでゴールを脅かすブライアン・ムベウモをエースとして起用し、前線ではヨアヌ・ウィサが衛星のように広いポジションを動き回りながらゲームに絡む。指揮官トーマス・フランクによって鍛えられたブレントフォードは、前線の機動力を武器にしたフットボールで結果を残してきた。24-25シーズンは10位。プレミアリーグの厳しい競争の中でも中位を維持できているのは、フロントやコーチ、スカウトといった裏方にも優秀なメンバーを揃えるブレントフォードというクラブの総合力だ。
今シーズンは多くのチームが大型補強を敢行。昇格組のサンダランドやリーズは近年苦しんでいた「プレミアの壁」を恐れることなく、多くの識者を驚かせている。そんな中でエースであるムベウモがマンチェスター・ユナイテッド、ウィサがニューカッスルへと移籍。中盤の柱だったクリスティアン・ノアゴールはアーセナル、マルク・フレッケンはレバークーゼンへと引き抜かれた。そして最大の懸念として、指揮官としてチームを長く率いたトーマス・フランクもトッテナムへ。チームは、霧のように未来が見えない状態で25-26シーズンへと突入した。
今シーズンから監督に抜擢されたキース・アンドリュースはセットプレーコーチからの昇格となり、経験不足がリスクだと考えられていた。しかし、ブレントフォードは見事にその予想を覆している。特にホームでは特筆すべき成績を残しており、第22節終了時点で7位と昨シーズンよりも上の順位を狙えるポジションをキープしている。今回は、彼らがどのようにプレミアリーグに旋風を巻き起こしているのか、その謎に迫ってみたい。
FW発掘を得意とするクラブが見つけた最新作
ケガで苦しんでいたイゴール・チアゴの覚醒は、ブレントフォードのフットボールを大きく変えた。身体能力が高いだけでなくフットサル経験者であることでも知られるこのCFは、重厚な肉体と柔らかいテクニックを兼ね備える。ブレントフォードが大金を払って獲得したストライカーは、ゴール前の決定力でチームを支えている。
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Profile
結城 康平
1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。
