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現代サッカーでビニシウスとムバッペの共存は無理。シャビ・アロンソ解任の裏にあるレアル・マドリーの本質的な問題

2026.01.14

新・戦術リストランテ VOL.100

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第100回は、シャビ・アロンソはなぜ、執拗にビニシウスに守備を求めたのか?――突然の解任劇の裏にあるレアル・マドリーの本質的な問題について考えてみたい。

時代遅れの「大砲二門方式」のツケ

 バルセロナに敗れた翌日、レアル・マドリーはシャビ・アロンソ監督を解任しました。そろそろ危ないんじゃないか、とは昨年末の段階で言われていましたが、スーペルコパを獲れなかったら解任という前提だったのでしょうか。

 スコアはバルセロナの3-2勝利、劣勢を予想されていたレアル・マドリーはけっこう粘ったと思います。ただ、粘っただけですけどね。

 レアル・マドリーは5バックで防戦、バルセロナに合わせた形でシステムを組みました。相手の攻撃時の布陣に合わせ、バルセロナを受け入れての守備ですから、相手が優位であると認めての戦い方になります。押し込まれるのを想定し、耐えてカウンターを打つのが狙いです。

 レアル・マドリーはほとんどの試合でこのような戦い方をしません。自分たちが優位、自分たちの構造を相手に押しつけるプレーをします。ただし例外はいくつかあり、その1つがバルセロナとのエル・クラシコ。一方、バルセロナは相手に主導権を渡す戦い方は全くといっていいほどやりません。ライバルながらも共通点の多い両チームですが、ここは明確に異なる部分ですね。

 バルセロナは主導権を握れない試合には大敗する傾向があります。しかし、レアル・マドリーは劣勢でも粘れますし勝つことも少なくない。今回も劣勢でチャンスの数も少ないなりに2点取っていますし、他にも得点できそうな場面はありました。

 もともとカウンターアタックは強力。ビニシウスが個人技で何度かシュートまで持っていけていました。チームとしては劣勢でもスーパーアタッカーの個人技で何とかしてしまう。これはレアル・マドリーの伝統的な強みです。

 1953年のディ・ステファノ獲得から始まって、ポジションの重複などお構いなしに補強を重ねる。銀河系と呼ばれた時期もフィーゴ、ジダン、ロナウド、ベッカム、オーウェンと次々に旬のスターを獲得していました。

 しかし、こうした大砲をずらりと並べて威圧するような編成はすっかり時代遅れとなっています。さすがに察しているようで、近年はベリンガム、チュアメニ、カマビンガ、バルベルデといった守備面も計算できるアスリート能力の高い若手を補強していました。

 ただ、規格外アタッカー路線を諦めたわけではなく昨季は念願のムバッペを獲得。計算違いだったのはムバッペとビニシウスの大砲二門方式が思ったほど効果がなかったということではないでしょうか。2人とも左サイドが得意という事情がありますが、それよりも守備免除のFWが2人というところですね。現在トップクラスのチームでも許容範囲は1人、理想はゼロ。そこが根本的な問題点になってしまっています。

 エースアタッカーといえども応分の守備負担を求められるのが普通になってきました。昨季CL決勝のデンベレが象徴的です。一方で、2022年W杯優勝のアルゼンチン代表は守備免除のメッシがいました。フィールドプレーヤー9人で10人分の守備負担が発生するわけですが、それでもスーパーエースの威力は大きかった。メッシほどでなくても、特別な攻撃力を持っている選手はやはり貴重です。選手寿命も延びています。ケイン、デパイ、デ・ブルイネ、サラーは30歳を超え、ロナウドは41歳でW杯を迎えるでしょう。特例枠を設け、かつチーム戦術も機能させていく。これはレアル・マドリーに限らず、大きな才能を得たチームにとっての課題になっています。

守備免除がビニシウス1人なら…

……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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