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市民クラブが生き残るために必要なのは「揺るぎないフィロソフィーと共感」栃木SC・橋本大輔代表取締役社長インタビュー(後編)

2026.01.13

Jプロビンチャの挑戦 第1回(後編)

「プロビンチャ(Provincia)」とは、イタリア語で「地方の中小クラブ」を意味する。その言葉が生まれたイタリア・セリエAでは、名将ガスペリーニの戦術と「育てて売る」クラブ戦略が合致したアタランタがCLの常連となるまでに飛躍した。「地域を豊かにする活動」を理念の1つとして掲げているJリーグは全国各地に60のクラブを抱えているが、Jプロビンチャが生き残っていくための術、さらにはアタランタのように国外へと羽ばたいていくクラブは現れるのだろうか?――最前線で闘う経営者たちと一緒に議論してみたい。

第1回の後編では、栃木SCの橋本大輔代表取締役社長に「弱肉強食時代のいま、市民クラブはいかに生き残るか」をテーマに議論を交わしている。

(取材日:12月14日)

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今後、市民クラブの定義は変わっていく

――後編では「弱肉強食時代のいま、市民クラブはいかに生き残るか」をテーマに伺わせてください。近年、市民クラブが置かれている状況が急激に変わってきました。大きな資本をバックに勝ち上がるクラブがあり、サッカークラブに投資する企業が増えたことは日本サッカー界にとって喜ばしい流れです。一方、市民クラブが窮地に立たされています。

 「これから市民クラブの定義は変わっていくと思います。市民クラブの営みとは、地域に根差し、地域とともにクラブを作ることが本質です。地域に根差して運営していれば、責任企業の有無は関係ない。責任企業を持たないクラブも、責任企業がつき、色々な取り組みやビジネスができるのも望ましい。所有形態に関わらず、やるべきことは一つです。それは、根っこに揺るぎないフィロソフィーを持ち、それを柱にクラブを運営していくことだと思っています」

――大きな資本を持つクラブに対抗するには、「昇格します」「勝ちます」だけでは厳しい。揺るぎないフィロソフィーを柱に据えることが、今後ますます重要になるということですね。

 「地域の中に入り込んで活動を続けるクラブの企業価値が上がる。クラブの価値、企業の価値は、トップチームの勝敗も大事ですが、集客力がある、SNSの影響力があるなどさまざまで、企業や地域の方々が興味を持ってくれるのだと思います」

――栃木SCには『Keep Moving Forward』、「常に前に進み続ける」という意味のクラブフィロソフィーがあります。これをさらに尖らせることで、他クラブとの差別化を図れるのでは? 例えば、アスレチック・ビルバオのような強い哲学は、地域への訴求力が高い。極端に言えば、アカデミーから毎年プロを輩出し、トップチームの半分以上が地元出身者という状態であれば、「子どもたちのために投資したい」企業も共感しやすいはずです。

 「そうですね。ビルバオの哲学も独特だと思います。その考えで言うと、私たちのクラブも今あるフィロソフィーをビルバオのように強いものにしていくことが重要だと思います。強いものにしていく過程でもしかしたらビルバオのような手法にたどりつくかもしれない。ビルバオまで強くはないですが、我々にもすでにフィロソフィーがあり、そのフィロソフィーに共感していただけるようにしていかないといけない」

――根幹に『Keep Moving Forward』がある以上、ビルバオとは異なると。

……

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Profile

鈴木 康浩

1978年、栃木県生まれ。ライター・編集者。サッカー書籍の構成・編集は30作以上。松田浩氏との共著に『サッカー守備戦術の教科書 超ゾーンディフェンス論』がある。普段は『EL GOLAZO』やWEBマガジン『栃木フットボールマガジン』で栃木SCの日々の記録に明け暮れる。YouTubeのJ論ライブ『J2バスターズ』にも出演中。

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