EL GRITO SAGRADO ~聖なる叫び~ #20
マラドーナに憧れ、ブエノスアイレスに住んで35年。現地でしか知り得ない情報を発信し続けてきたChizuru de Garciaが、ここでは極私的な視点で今伝えたい話題を深掘り。アルゼンチン、ウルグアイをはじめ南米サッカーの原始的な魅力、情熱の根源に迫る。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第20回(通算179回)は、2024年から健在ぶりを証明していたアメリカの地で「またやってしまった」唯一無二の9番に、彼を誇るウルグアイの人々は何を思うのか。
スペイン語に「sentimientos encontrados」という言葉がある。直訳すると「ぶつかり合う感情」、つまり「相反する感情」という意味だ。これは、今の私がルイス・スアレスに対して抱いている思いそのものである。世界を代表するトップクラスのストライカーでありながら、時に思わず首を傾げたくなるような愚行に走る彼に対して、どうしても釈然としない気持ちを抱かずにいられない。
誰よりもゴールに貪欲で、時に奇跡としか思えないような得点を決めるスアレスは、ウルグアイ代表の歴代得点王であり、行く先々で「さすが」と唸らせる決定的なゴールを生み出してサポーターの心をつかんできた。私自身も、ウルグアイを訪れるたびに「ルイス・スアレス」という存在がいかに特別な意味を持ち、どれほど深く母国の人々の心に刻まれているかをいつも肌で感じさせられる。街角の壁画に描かれた彼の姿、貧富の差を問わずに誰もがまとう背番号9のユニフォーム、あちこちで語り継がれる彼のゴールの記憶――それらすべてが、彼を単なるサッカー選手ではなく、ウルグアイという小さなサッカー大国の誇りの象徴として物語っている。そうした情景に触れるたびに、彼の持つ圧倒的な存在感に感銘を受けてきた。
GRACIAS, GRACIAS Y MÁS GRACIAS URUGUAY! 🙏🏼
Orgulloso de ser de acá 🩵 pic.twitter.com/JPBHRASQ5T
— Luis Suárez (@LuisSuarez9) September 12, 2024
その一方で、「またスアレスがやってしまった」という失望がつきまとうのも事実なのである。
「最後の姿が惨めなものでなく、誇れるものであってほしい」
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Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。
