REGULAR

補強総額はプレミアの5分の1。3強以外は今年も“痩せ細る”リーガ勢の夏

2025.08.01

サッカーを笑え #47

夏の移籍市場における支出額で見れば、近年は欧州5大リーグの中でも4、5位が定位置となりつつあるラ・リーガ。その格差の背景、今年も我慢が続く現状をレポートする。

※移籍に関する金額は移籍情報サイト『Transfermarkt』より、リーグの売上高に関する数字は監査法人デロイト社の『2025 Anual Review of Football Finance』より
※情報は7月31日現在

久保建英は昨季までに出て行くべきだった?

 「夏の移籍市場」……と聞くと、リーガ勢にとっては「補強」の時期ではない。市場価値の上がった選手を放出して「儲ける」時期である。「新戦力獲得に費やす金額(以下、補強費)」<「既存戦力放出で得る金額」で、収支をプラスにすることは大半のクラブの予算にも計上されている義務である。

 つまり、9月になれば補強どころか「(見かけの)戦力は細っている」というのがリーガ勢の夏。「安く買って高く売る」のセビージャの錬金術が有名になったが、そんなことは大なり小なりほぼすべてのクラブでやっている。

 例えばレアル・ソシエダである。

 スビメンディをアーセナルに売って7000万ユーロのお金が入ってきたが、今のところ補強はゼロ。レギュラーのセントラルMFがいなくなり、誰かを獲らないと大変なのだが、代役を獲らない可能性は大いにある。第一に、今季は欧州カップ戦に出場できず、例年以上に収入をプラスにする必要があるから。第二に、イジャラメンディ→スビメンディと続いたセントラルMFの育成はソシエダのお家芸であり、ここを外部からの補強に頼る、というメッセージはクラブとして出せないから、だ。スビメンディの代わりは内部昇格で賄い、補強したとしてもCBやウインガーではないか。

 コロナ禍後の22‐23シーズン以降、昨季までのソシエダの収支は2500万ユーロ→-300万ユーロ→2600万ユーロと推移している。その代わりにイサク(ニューカッスル)、メリーノ(アーセナル)、ル・ノルマン(アトレティコ・マドリー)らそうそうたるメンバーが旅立って行った。大盤振る舞いのシーズンで収支トントン、普通は2000~3000万ユーロの利益を出し、家計が火の車ならそれ以上、というのがリーガ勢のスタンダード。戦力ダウンで、新監督、新スポーツディレクターで迎える久保建英の新シーズンは間違いなく苦しくなるだろう。昨季までに、スビメンディよりも先に出て行くべきだった、と思う。

ジャパンツアーから帰国後、7月30日のオサスナ戦(○4-1)では先発出場し、1ゴール(動画)1アシストをマークした久保(24歳)

プレミアとは天地の差

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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