シャビ・アロンソ流レアル・マドリー、クラブW杯で見えた原則、流動的[3-5-2]と3つの問題

サッカーを笑え #45
新体制の初陣となったクラブワールドカップ2025で、レアル・マドリーはグループステージを2勝1分で首位通過し、ラウンド16でユベントスを撃破。7月5日に準々決勝ドルトムント戦を迎える(日本時間6日5時キックオフ)。徐々に明らかになってきた新チームの全貌、昨季との違いとは?
レアル・マドリーはシャビ・アロンソによって変化を続けている。彼にとってクラブW杯は恰好のリハーサルの舞台であり、私たちにとっては新監督の手腕を観察できる恰好の機会となっている。
これまで4試合の流れは以下の通り。レンガを積み上げていく様がはっきりわかる。
1試合目:対アル・ヒラル(1‐1)
4バックでスタートし、後半3バックにする。
2試合目:対パチューカ(3‐1)
7分でCBアセンシオが退場。舐めたようなプレーが目立っていたので、そろそろベンチに置くべき時期であることがわかった。その他には、10人では戦術的な実験をする余裕もなく収穫はなし。
3試合目:対ザルツブルク(0‐3)
[3-4-3]で90分間をプレー。「戦い方の原則」(詳しくは後述)が見え始める。
4試合目:対ユベントス(1‐0)
[3-4-3]([3-5-2]?)で90分間をプレー。ムバッペが復帰する。
→今ココ
5試合目:対ドルトムント
ムバッペとビニシウスでどう機能させる?
→次ココ
4つの原則と各ラインのキーマン
ここからザルツブルク戦とユベントス戦を詳しく振り返る。
対ザルツブルク
先発メンバーと並び
[3‐4‐3]
ビニシウス ゴンサロ ギュレル
F.ガルシア バルベルデ ベリンガム A.アーノルド
ハイセン チュアメニ リュディガー
クルトワ
この試合ではいくつかの戦い方の原則が明らかになった。
原則1:前へ走って守る。下がることよりもプレスを優先。
原則2:ボールロスト後のプレスを激しく。
原則3:ハイラインを敷く。
原則4:守備ブロックはコンパクトに。1列目から最終ラインまでの長さは芝目にして4つ分(24メートル弱)。
新監督による変化は、守備のやり方に目覚ましい。敵陣での多くのボール回復数は、この試合だけで昨季1年分くらい見たような気がした。プレスは連動しており、誰かがボールに詰めると後ろもパスコースを消しに続く。最優先はプレスだが、外された場合は背走する。が、その戻り方はコンパクトさを保ったまま、相手の前進に従って全員で下がる。守備時=相手ボール時のシステムは[5-3-2]だが、ファーストプレス要員の2トップ(ビニシウス、ゴンサロ)も忠実に下がって来て、相手ボールの後ろに11人がブロックを作る。
昨季のようにファーストプレスをかわされると戻りをさぼって、2トップが前に残り守備要員として無効化される状況、チームが間延びして2つに分離する状況はなかった。敵陣でのボール回復が可能になると、テリトリー支配力とボール支配力は明らかに上がり、昨季のような「カウンターをしていない時は下がりっぱなしで防戦一方」というのも見なかった。
個人に話を移すと、クロース不在以来の問題点だったボール出し役はどうやら1番手がアルダ・ギュレル、2番手がバルベルデ、3番手がベリンガムという序列ができたよう。ただしギュレルの危機意識はトップ下時代のままで、中盤の底なのに危険なボールロストがいくつかあった。体調不良のムバッペの代役ゴンサロは下部組織出身者らしく守備も忠実で、時に戻って来ないビニシウスの背後まで良くカバーしていた。この試合でもゴールし、次のユベントス戦でもゴールして4試合で3ゴール。ムバッペ不在時のCFの目途は立った、と言える。
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Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。