REGULAR

三笘は「前」、ミンテは「後ろ」。左右非対称のブライトンで進む、ウイングストライカーへの変身

2025.02.26

新・戦術リストランテ VOL.55

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第55回は、チェルシー戦、サウサンプトン戦で2戦連続となるスーパーゴールを決めた三笘薫を擁するブライトンの戦術と、その中で三笘に課されている複雑なタスクについて解剖してみたい。

走りながら目の前にボールを「置く」極意とは?

 プレミアリーグ第25節チェルシー戦での三笘薫のゴールが凄かったです。27分、GKからのロングボールを右足の甲でピタリと鎮め、即座に右足アウトで右前へ持ち出し、間髪入れず右コーナーに完璧なシュート。かつてジダンやベルカンプが披露したような卓越したボールコントロールが生み出したゴールでした。

 実は『サッカードリブル解剖図鑑』(X-Knowledge)という三笘薫著の本の構成をやりまして、その際イラスト化のために本人にデモンストレーションをやってもらい、その時に実演してもらった浮き球トラップはチェルシー戦の得点シーンそのままでした。

 指を反らすと、指のつけねあたりに平らな部分ができる。そこでボールに触る――そう言っていました。浮き球を止めるだけならインサイドでもアウトサイドでも何でもいいのですが、走りながら自分の目の前にボールを「置く」なら、この方法だそうです。

 もともと三笘はこのトラップが上手くて、本当に走っている自分の目の前にスッとボールを置いてしまうんですね。そのままスピードを落とさずに次のプレーに移行するのが非常にスムーズです。

 チェルシー戦の得点シーンでは、止めてからの次のタッチに無駄も淀みもなく、シュートまでの一連の滑らかな動きが圧巻でした。

 続く第26節のサウサンプトン戦でも三笘は得点しています。これもけっこう強烈でして、ジョアン・ペドロの落としを拾っての加速ぶりが凄まじかった。……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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