三笘薫のファーストタッチの背景。現代型ドリブラーに求められる「新たなコーディネーション能力」

TACTICAL FRONTIER~進化型サッカー評論~#13
『ポジショナルプレーのすべて』の著者で、SNSでの独自ネットワークや英語文献を読み解くスキルでアカデミック化した欧州フットボールの進化を伝えてきた結城康平氏の雑誌連載が、WEBの月刊連載としてリニューアル。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つ“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代フットボールの新しい楽しみ方を提案する。
第13回は、コーディネーション能力を7つに分類し、現代型ドリブラーに新たに求められる資質について掘り下げてみたい。
「軽々しくコメントしているわけではなく、本当にメッシのようなゴールだ」
2月14日のプレミアリーグ第15節、チェルシー戦で『Sky Sports』の名物解説者ジェイミー・キャラガーが絶賛したゴールを決めたのが、ブライトン所属の三笘薫。今シーズンは代名詞のドリブルからのチャンスメイクだけでなく、絶妙なファーストタッチを駆使して直接的にゴールを狙うプレーでも存在感を高める日本代表のエースだ。
ボールを丁寧に保持する前任者ロベルト・デ・ゼルビのチームでも輝いていたアタッカーは、新たに就任した「プレミアリーグ最年少監督」ファビアン・ヒュルツェラーのチームでも中核を担う。冬にはサウジアラビアからも大金でのオファーが届いていたようだが、本人とチームはその申し出を受け入れず、今シーズンはブライトンに残るようだ。プレミアリーグのトップクラブからのオファーも予想される来夏、去就が注目されることには変わりないだろう。
その三笘がキャラガーに絶賛されたのが、GKからのロングボールを正確にコントロールしながらスムーズにシュート体勢に移行したチェルシー戦のスーパーゴールだ。指揮官ヒュルツェラーも、次のようにコメントしている。
「自分の背後から頭上を越えてくるようなボールの処理は、コーディネーションからすべてが始まる。すべてをコーディネートすること、ボールのスピードに合わせて足をコントロールするのは、超人的な技術だ。全力疾走しながらボールをコントロールしていることも、より難易度が高い」
コーディネーション能力を7つに分類
「コーディネーション(coordination)」とは、運動理論で使用される概念であり、「調整」や「一致」といった意味を持つ。状況に合わせて力の加減や身体の動きをコントロールする能力として、日本では「コオーディネーショントレーニング」と表記されることもある。
日本語に直訳すると「調整力」が近いが、明確にその単語だけでコーディネーションの意味を表現するのは難しいかもしれない。コーディネーションは必ずしも身体的な強さや速さを表すものではなく、神経系を含めた「コントロール能力」を指す。……



Profile
結城 康平
1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。