パリを沸かせたU-23日本代表の守護神・小久保玲央ブライアンが古巣レイソルに与える好影響
太陽黄焔章 第15回
今回のパリ五輪に臨んだU-23日本代表の中でも、大きく評価を高めた1人に小久保玲央ブライアンの名前を挙げないわけにはいかない。再三にわたるファインセーブでチームを救い続け、マリ戦のPKシーンではその圧力に相手のキッカーも枠を外すなど、印象的な活躍を重ねたことで知名度も急上昇。A代表入りを期待する声も高まっている。今回はそんな彼をよく知る井上敬太GKコーチ、松本健太、山田雄士の声を交えて、小久保がレイソルやそのアカデミーに与える好影響を鈴木潤がまとめる。
同級生・山田雄士も「エグいですね」と驚く五輪でのハイパフォーマンス
「ブライアンとヤマだけだね。何も物怖じしないでやれているのは」
2013年9月、柏レイソルU-13のスペイン遠征。中学1年生にとっては、異国の地で海外クラブとの対戦は未知の領域でもあった。試合では対戦相手との体格差に驚き、強度の高さに腰が引け、多くの者が本来の実力を発揮できないでいた。
だがその中でも、全く物怖じせずに堂々とプレーする二人の選手がいた。
小久保玲央ブライアンと山田雄士である。
当時、柏レイソルのダイレクターを務め、U-13のスペイン遠征に帯同していた吉田達磨が、そんな二人のプレーを見て述べたのが冒頭の言葉だった。
あれから11年が経ち、現在はレイソルのトップチームで主軸を担う山田は、かつてのチームメートの五輪での活躍を喜びつつ、「エグいですね」と驚いた表情を見せた。
パリ五輪に出場したU-23日本代表には、小久保に加え、細谷真大とバックアップメンバーの佐々木雅士、柏レイソルアカデミー出身の3選手が選出された。さらに遡れば、ロンドン五輪では酒井宏樹、リオ五輪では中村航輔、東京五輪では中山雄太とオーバーエイジとして酒井が二度目の出場を果たしており、今回のパリ五輪を含めて4大会連続で柏アカデミー出身選手が五輪のピッチに立っている。
そして興味深い点は、上記した6選手のうち三人がGKということである。また、現在のトップチームでも、松本健太、猿田遥己、佐々木という三人のGKがアカデミー出身だ。
それだけではない。レイソルU-18のキャプテンを務める栗栖汰志は、二種登録選手としてプロの中に入って日々のトレーニングに励み、高校2年生GKのノグチピント天飛も、すでにトップチームへの練習参加を経験している。8月6日に発表されたU-16日本代表の中国遠征メンバーには、高校1年生の西川元基が選出されるなど、下の世代からも新たな力が確実に育ちつつある。
佐々木理。松本拓也。井上敬太。レイソルアカデミーに連なるGKコーチの系譜
GK育成に定評のあるレイソルアカデミー。それは、1998年から2007年までアカデミーのGKコーチを歴任した佐々木理が、GKスクールを立ち上げたことに端を発する。
アカデミーのGKコーチを経て、2018年5月からトップチームのGKコーチを務める井上敬太が、当時を振り返る。
「20年ほど前に、理さんがGKスクールを立ち上げました。当時はGKスクールをやっているJクラブは、ほとんどなかったと思います。そこで理さんが『GKはこう育てていかなければいけないよね』という土台を作ってくださり、理さんがベガルタ仙台に行った後は、私と(松本)拓也さんでアップデートしながらやってきました」
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Profile
鈴木 潤
2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。