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開幕前からサポーターと選手の心を「UBAU」槙野智章。「お祭り男」はなぜ今、藤枝MYFCの監督に就任したのか?

2026.02.04

Jリーグ新監督のビジョン#5
槙野智章監督(藤枝MYFC)

2026シーズンのJリーグは、降格がない百年構想リーグという変則レギュレーションの後押しもあり、チャレンジングな監督人事が目立つ。サンフレッチェ広島のバルトシュ・ガウル監督は38歳、ガンバ大阪のイェンス・ヴィッシング監督は37歳とドイツの新世代監督を招聘。トップレベルの指導経験はない藤枝MYFCの槙野智章監督も驚きの人選だった。名古屋グランパスのミハイロ・ペトロヴィッチ監督や北海道コンサドーレ札幌の川井健太監督、横浜FCの須藤大輔監督といった攻撃サッカーを掲げる戦術家も新天地で新たな挑戦を始める。未知の魅力にあふれた新たなサイクルの幕開け――Jリーグ新監督のビジョンに迫る。

第5回では、開幕前からサポーターと選手の心を「UBAU」槙野“監督”に注目。「お祭り男」として知られた元日本代表DFはなぜ今、藤枝の新指揮官に就任したのか?

 今季のJリーグの新監督して最も注目されている存在と言って過言ではない藤枝MYFCの槙野智章監督。静岡のテレビ局でスポーツ番組のMCを約3年務めるなど県内でも人気者の元日本代表が、J2・J3百年構想リーグでどんなサッカーを見せるのか、サポーターのワクワク感は日に日に高まっている。

 昨シーズン終了直後には、前任の須藤大輔監督が4年半で藤枝を大躍進させ、サポーターや選手たちからの支持も絶大だっただけに、名将がチームを離れることに少なからず不安はあった。だが、12月12日に槙野監督の就任が発表されたことで空気は一変した。

 さらに、その3日後には異例の就任会見が開催され、38歳の新監督は自ら作成したスライドを提示しながら監督としてのコンセプトをメディアにプレゼン。自分がやろうとしていることの数々を明確に提示し、Jクラブを率いるのは初めてながら入念な準備が整っていることを印象づけた。

 それがメディアを通してサポーターにも伝えられたことで期待値はより高まり、1月5日(月)の練習始動日には約千人ものサポーターが見学に訪れて、チーム関係者をも驚かせた。9年ぶりに藤枝に戻ってきたGK田口潤人は「僕がいた頃(2017年)は試合でも千人いかないことがあったのに……」と隔世の感を口にする。

 こうして開幕前からいくつものサプライズを起こしている槙野監督。監督としてのファーストキャリアの舞台に藤枝を選んだ理由については、12月の就任会見で次のように語った。

 「チームの理念、攻撃的なサッカーというところが、すごく自分と合うなというのがまず1つありました。あとは街の方たちの関わり方もそうですし、もっと大きくなるであろう可能性があるチームに、自分がどう加わっていけば大きくなれるのか。そこに興味がありました」

 J2の中では小規模なクラブを、強くしながら会社としても成長させていくという仕事に大きなやりがいを感じているようだ。クラブの土壌として大胆なチャレンジがしやすいことも後押しになっただろう。

 その会見で語った理想とするサッカー像は、「サッカーの試合は究極の祭だと思ってますし、観ている人も楽しい、やっていても楽しい、時間泥棒じゃないですけど、ファン、サポーターの方々が夢中になれるような攻撃的なサッカーを展開していきたいと思います」というもの。攻撃的でエンターテインメント性の高いサッカーという面は、前任の須藤監督と共通するところが多く、その地盤を生かしつつよりアグレッシブに、より強度高く、より強くしていくことを目指している。

「流行語を狙ってます(笑)」2つの戦術キーワードとは?

 戦い方のコンセプトに関しては、「UBAU(うばう)」と「Mirageo(ミラージオ)」という2つのキーワードを掲げている。

 「UBAU」とは、自分たちからアクションを起こして「ボールを奪う、ゴールを奪う、勝点を奪う、ファンのハートを奪う」といったことを表わす。実際、練習は初日から非常に負荷が高く、選手たちも思わず「キツい……」とぼやくほど。その中で、球際や切り換えといった部分は特に厳しく指摘され、前線からの守備でもプレッシャーをかけるだけではなく奪いきることに強くこだわっている。

 「うまいサッカーはできるけど、J2リーグで上位を目指すためには、走る、戦う、球際といったところが欠けているチームだと思うので、そこはきつく植えつけてます」と槙野監督は語り、スプリントコーチも新たに招へいして走り方の効率化にも取り組んでいる。

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前島 芳雄

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