EUROグループステージ総評。36試合で見えた優勝候補、弱小の野心、ベスト11、UEFAの底力
サッカーを笑え #19
6月14日に開幕したEURO2024も折り返し。出場24チーム中16チームが進出し、29日から始まる決勝トーナメントを前に、“「消化試合」は皆無だった”グループステージを振り返ろう。
EURO2024のグループステージが終了した。全36試合を見た感想をランダムに書いていきたい。ポテンシャルは考慮せず、あくまでグループステージで見せたパフォーマンスで選んだり評論したりしたものだ。
まず、強さを感じたチームはドイツ、スペイン、ポルトガル。いずれも個々の質と戦い方の質が頭一つ抜けており、個でもチームでも解決策を見出せる。トーナメントで一発勝負となれば番狂わせは常に起こり得るが、普通にいけばこの3つが優勝争いをするとみる。
もっとも、ドイツはスイスとやっと引き分け、スペインはアルバニアに苦戦し、ポルトガルはジョージアに敗れた。つまりプランBは万全ではないが、他のチームはローテーションする余裕がなかったので贅沢な悩みだと言える。
失望させられたチームはイングランド、オランダ、セルビア。共通しているキーワードは「野心の欠如」。いずれももっとできるはずなのに、ラインを下げてプレスに行かず主導権を譲ってのリアクションサッカーに専念していた。あのメンバーであのやり方はない。監督には私の覗(うかが)い知れない計算があったのだろうが、見ているこっちには欲求不満ばかりが溜まった。イングランドとセルビアが同居したグループCは6試合中5つが引き分けでうち2つがスコアレスドローと、睡魔との戦いの方が大変だった。
「引いて守って引き分け狙い」「消化試合」はなし!
全体的には野心的なチームの方がはるかに多く、期待以上の大会になっている。「引いて守って引き分け狙い」というチームはなし。弱小も何らかの武器を持って勝ちにこだわっていた。
オーストリア、ルーマニア、ジョージアの「3大サプライズ」はいずれも激しく前から行き、攻めることを諦めない好チームで、彼らが絡むと試合自体が面白くなった。ちなみに「5大面白かった試合」はオランダ対オーストリア(2-3)、スイス対ドイツ(1-1)、ベルギー対スロバキア(0-1)、トルコ対ジョージア(3-1)、チェコ対トルコ(1-2)だった。サッカーは見る側からずれば、やはりリスクを背負ってナンボ。いずれの試合も、得点を奪いに行き、その隙を突かれて失点しそうになる、という攻防で90分間があっという間に過ぎた。「強豪の力を堪能できた」という意味ではドイツ対ハンガリー(2-0)、スペイン対イタリア(1-0)、トルコ対ポルトガル(0-3)も満足感があったが、内容またはスコアが一方的で勝敗への興味が薄かった。
「消化試合」は皆無だった。これは大会の権威を高めるという意味で、大いに喧伝されるべきことだ。……
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。