新・戦術リストランテ VOL.20
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第20回は、マンチェスター・シティやアーセナル、リバプールの主役たちがそろい、世界屈指のタレント集団となったイングランド代表。しかし、大舞台でドリームチームの躍動を期待していたファンが見せられるのは「塩試合」ばかり。イングランド代表はなぜ、つまらないのか?――西部謙司氏に聞いてみた。
EURO2024が開幕。これで当分はネタに困ることはないだろうと思っていたら、編集部からヘンなリクエストが来ました。
「イングランドはなぜ、つまらないのか?」
基本的に面白いことを取り上げようとしているので、「つまらない」理由を探すことはあまりないのですが、イングランドが「つまらない」のは周知の事実(?)ですから、ここを掘り下げるのは意味のあることかもしれません。
テクニカルになったが、「つまらなさ」はもはや伝統
今大会の優勝候補は緩く見積もれば9チームあると思います。ドイツ、スペイン、イタリア、クロアチア、オランダ、イングランド、ベルギー、フランス、ポルトガル。まだポルトガルの試合は見ていませんが、これら強豪にあまり大きな変化は見られていません。
現時点で完成度が高いのはドイツです。今後、対戦相手が「クロース・システム」をどう封じてくるかにかかってきそうですが、機能性では一番でしょう。ドイツはクロースの復帰で急に引き締まっていて、明確に変化した珍しい例かもしれません。
あとは予想通りというか、従来からの大きな変化はないようでした。
前回優勝のイタリアはすでにその時に大きな変化があり、今回もその流れです。左サイドを空けて左SBが高い位置を取るのは、もう1960年代からなので、プレースタイルは攻撃型に変わりましたが形そのものは不思議と変わらないものなんですね。
さてイングランドですが、サッカーの母国に大きな変化が起きたのは1990年代です。……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。