【CL決勝展望】クロース最後のサイドチェンジ、ロドリゴが右から左へ動く時、レアル・マドリーは11人が1つになる
サッカーを笑え #16
CL決勝が6月1日に迫っている。今回はレアル・マドリー側からのプレビューをしてみよう(※情報は5月27日現在。ケガ人が出れば変更の可能性あり)。
控え組でエネルジアを加え、スタイルを変える
まず先発メンバーから。
システムは[4-2-2-2]となるのだろうが、後述するようにこの配置に大きな意味はない。最も読みにくかったGKにクルトワを選んだのは、控え中心で戦ったリーガ第37節ビジャレアル戦(4-4)の先発がルニンだったことから。最終節ベティス戦(0-0)はクルトワが先発して最終調整をした。
ルニンはCL決勝進出の原動力となった好調を維持している。メリット主義と情から言えば、彼を先発させてやりたい。が、ケガが完治したクルトワも調子を上げており、第36節アラベス戦(5-0)では決定的なセーブを見せていた。このあたりはアンチェロッティの胸ひとつ。最も身近で見ている彼がクルトワを選んだ、ということだ。
控えメンバーの調子も記しておく。
ケガ人はチュアメニだけ。シーズン当初のワンボランチではなく、今はクロース+誰かのダブルボランチを採用しているのでチュアメニの欠場による影響は最小限のはず。クルトワ同様ケガが完治したミリトンは、ビジャレアル戦で4ゴールを挙げたセルロートに完敗。スピードとパワーを生かして前に出て守ろうとして簡単にかわされていたのでまだ本調子ではないのだろう。先発はなくなり守備固めがせいぜいだ。
モドリッチ、ブラヒム・ディアス、アルダ・ギュレル、ホセルはそろって調子が良い。アンチェロッティの口癖「エネルジア」(エネルギー)を加えるために終盤登場する可能性は高いが、“出たらゴール状態”(リーガ287分で6得点)のアルダは優先順位が低いので見られないかもしれない。もっとも、彼が使われない展開の方が優勝への道のりは順調と言えるだろう。
レアル・マドリーの強みは、控え勢が好調である以上に彼らがスタイルを変えられる存在であること。モドリッチとクロースは特徴が違う。ホセルとビニシウスも違う。ロドリゴとブラヒム、アルダも違う。これから紹介するプランAと違ってプランBは右サイドの攻撃力が上がることでより左右対称で、ドリブル力では劣るがロングボールが使え、セットプレーにも強い。
今のチームの充実度はシーズン最高だ。ベンゼマの移籍とケガ人続出で主力欠場の大きなハンディを控え組の成長とアンチェロッティの戦術的な工夫で乗り切ったところにケガ人が帰ってきたのだから。前回21-22のCL優勝チームよりも強いと思う。普通にいけばドルトムントの力は及ばないが、まあ1試合だから番狂わせだって起こり得るのだが……。
カギとなるロドリゴの位置。リスキー、スリリング、クリエイティブな左
ここからは戦術的な見どころを。
先の[4-2-2-2]の並びを見直してほしいのだが、この形はドルトムントがキックオフからでもGKからでもボール出しに成功し、パスを繋ぎながら攻撃してきた時くらいしか見られないはずだ。左右にバランス良く選手が散らばり、ボールの後ろに人数をかけて相手の攻撃を遅らせてしのぐ、という局面である。そうではなくて、レアル・マドリーの攻勢時は以下のような並びになっているはずだ(※ロドリゴがボールを持っている場合)。
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Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。