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監督交代のシャルケ…迷走する古豪に前任指揮官が警鐘を鳴らす

2020.10.03

 9月28日、デイビッド・バーグナーがシャルケの監督を解任された。開幕戦でバイエルンに0-8の大敗を喫すると、残留争いのライバルと目されるブレーメンにも1-3で敗れて2連敗。ブックメーカーの予想通り、ブンデスリーガで最も早く任を解かれた指揮官となった。

 記録的な不調に陥った昨季後半、堪忍袋の尾が切れたファンたちは監督交代を叫んでいた。その願いが叶う形となったが、後任者のマヌエル・バオムにとっても難しい仕事になるだろう。9月2日の『シュポルトビルト』誌の中で、前任者はすでに“警鐘”を鳴らしていた。

ファンは現実を知る必要がある

 シャルケファンは、非営利団体クラブである「e.V.」(eingetragene Verein)というステータスに誇りを感じている。ブンデスリーガでこのステータスのクラブには、シャルケの他にフライブルク、マインツ、ウニオン・ベルリンが名を連ねる。いずれもビッグクラブとは言えないが、地に足を付けた安定した経営で評価を得ているクラブだ。

 1990年代後半から2010年代にかけて、シャルケは欧州の舞台でコンスタントに戦うクラブとなったが、そのための資金も膨大なものとなった。200億円以上とも言われる負債を抱え、コロナ禍の中断期間には破産申請の危機も近づくなど、資金繰りに苦しむ姿が露わとなった。

 この状況を受けて、シャルケの経営層は投資家を迎え入れやすくするべくバイエルンやフランクフルトのようにトップチームを株式会社「AG」(Aktien Gesellschaft)化させる案も検討しているが、非営利団体というステータスに誇りを感じているファンたちの反対に遭っていた。

 「現在の我われの状況をまだ理解できていない人たちもいるようだ。昔はどうだったのか、どうして現在の状況になってしまったのか、これからも多くの人々が話すことだろう。だが、重要なのは、この状況から再び抜け出すことなのだ」とバーグナー前監督は警告していた。

過去と現在の姿のズレに苦しむ

 ドイツ国内では、シャルケがハンブルクの二の舞いになってしまうのではないか、という議論も出始めている。バーグナーも危機感を覚えていた。

 「シャルケの過去の姿は、現在の姿とはまったく合致していない。1985年以降に生まれた30歳より少し上の世代は、シャルケが常に上位にいる姿しか知らないのだ。この世代は、シャルケはバイエルンやドルトムントとは接戦を演じられるクラブだと感じている。シャルケがバイエルンやトップクラブとはもはや無縁な存在であることを理解できていない。だが、これが現実なのだ」

 2020年のコロナ禍は、シャルケに厳しい現実を明確に突き付けた。経営陣やコーチ陣、チームスタッフだけではなく、ファンたちにも決断が求められている。欧州のトップクラブになるには、安定した資金の流入が不可欠だ。

 だが、精肉業で財を成したクレメンス・トゥニエスのポケットマネーによって多額の負債を補填し続けていた状況から脱却しなければならない。非営利団体のクラブという誇りを維持したいのなら、中小クラブのステータスを受け入れなければならなくなる。

 いつまでも夢ばかりを見てはいられない。バーグナーは続ける。「すべての人たちがこの現実を理解しなければならない。おそらく人々はそれを認めたくはないだろうがね」

 「現実を認識し、態度を示せ」――。これが、クラブを去ったバーグナーがシャルケファンたちに残した警鐘だ。このクラブのシンボルであるファンたちが、自分たちのプライオリティを明確に示せない限り、迷走は続くだろう。


Photo: Getty Images

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シャルケ

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。