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「地球平面説者」のクラブが、スペイン4部リーグに参戦中

2019.08.30

その名も「フラット・アースFC」

 みなさん、「地球平面説」というのをご存知だろうか?

 「月面に人類行ってない説」というのは知っていた。まあとんでもないことを信じる人たちがいるもので、映画『ファーストマン』のモデルで月に立ったニール・アームストロング船長以下、殉職した宇宙飛行士の家族が聞いたらさぞ怒り呆れるだろうな、と思っていたら、その1人に有名なサッカー人がいた。イケル・カシージャスである。昨年7月、その私見をツイートで披露したら、スペイン人宇宙飛行士のペドロ・ドゥケから反論が来た。

 「事実はどんな意見によっても変わらない。宇宙船は月に着き、足跡、レーザー反射板は今も残されている」

 まあ、月面着陸はでっち上げだったとか、ビデオはキューブリックが撮った、と思いたくなる人がいるのは想像の範囲である。だが、地球が平面だ、というのはどうなのか? あまりにとんでもなさ過ぎて私の想像を超えていたが、いや、確かに存在するのである。「平面の地球が」ではなく「そう信じる人たちが」である。

 今季からマドリッドの3部リーグ(4部相当)に「フラット・アースFC」が参戦中だ。

 これはその名の通り、地球が平面であると信じる人、ハビエル・ポベス会長によって設立された、地球平面説者による、地球平面説者のためのサッカークラブである。公式WEBには「我われと一緒に世界を変えよう」とあり、シャツやマフラーを販売している。

「宇宙はでっち上げで、NASAは詐欺だ」

 ポベス会長がサッカークラブを選んだのは、自身が元プロ選手(ヒホンでプレー経験あり)であり、地球平面説拡散のためにメディアに取り上げられるにはサッカーが最高の方法だと考えたからだ(それは成功している。こうして日本のメディアにも取り上げられているのだから)。

 クラブ設立のために私財を投入し、昨シーズン地方リーグから3部リーグに昇格したのを機に改名した。エンブレムは国連のエンブレムに酷似しており、中央に地球が描かれている。そこには、地球平面説者の一部から存在を否定されている南半球のオーストラリアもちゃんと載っていて普通なのだが、これは平面の地球を真上から見た図であるらしい。

 応援歌の歌詞にはこうある。

 「水は曲がらない。地平線は水平だ」

 「宇宙はでっち上げで、NASAは詐欺だ」

 「科学はすべて嘘だ」

 肝心のサッカーでは、先週末の開幕節に見事アウェイ勝利しグループ7で首位に立った。もし今季昇格すれば来季は2部B(3部相当)でレアル・マドリーのBチームと同じグループに所属するかもしれず、会長の夢、1部リーグに一歩近づくことになる。

 地球は大きく世界は広い。いろんな人がいるものである。


Photo : Getty Images

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フラット・アースFC文化

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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