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リーガの月曜・金曜開催問題、一応決着も、試合は誰のもの?

2019.08.15

金曜開催はOK、月曜開催はNO

 7月19日にお伝えした、月曜・金曜開催の是非が司法の手に委ねられた問題が、一応の決着を見た。マドリッド地方裁判所の判決は、金曜開催についてはOK、月曜開催についてはNOというものだった。OKの理由は「連盟が反対しなかったから」と明確だが、NOの理由は「放送日時の決定権は『ラ・リーガ』(旧プロリーグ協会=クラブの業界団体)にあるが、連盟の意見にも耳を傾けるべき」という、曖昧なものだった。

 そもそもこの問題は、ラ・リーガが決めた月曜・金曜開催に、スペイン連盟が反対し、その根拠に「放送日時の決定権は主催者である連盟にある」と主張したのが始まりだ。よって、判決に求められていたのは、放送日時の決定権はラ・リーガか連盟かという判断だったのだが、そこは“仲良く話し合って決めましょう”という喧嘩成敗になってしまった。ラ・リーガにすれば権限が自分たちにあるのなら月曜開催を禁止されるのは納得できないし、連盟の方は、やはり権限は我われのものだった、という意味の拡大解釈的な勝利宣言を発表している。

大事なのはファンか? 視聴者か?

 いずれにせよ、この判決を受けて第1節、第2節、第3節から月曜開催の試合が消え、土日に移された。新カレンダーには、各節1試合または2試合の同時開催試合、テレビ的に言えば“裏カード”が設けられることになった。

 この判決の数日前、『エル・パイス』紙にビジャレアル会長の月曜・金曜開催賛成のコメントが出ていた。サッカービジネスの実態を知る上で興味深いところを引用してみたい(以下カッコ内は会長のコメント)。

 「ラ・リーガは60以上の放映権契約を結んでおり、そのお陰で女子サッカーやマイナースポーツに助成金を出せている」

 「放送日時を振り分けたことで、放映権の価値は5年前の6億ユーロ(約707億円)から今は23億ユーロ(約2710億円)に上がっている」

「2012年に7億5000万ユーロ(約884億円)あったクラブによる税金の滞納額はもうすぐ全額返済できるところまで来ている」

 「全38節のうち月曜開催があるのは24節で、1つのクラブが月曜に試合をするのは最大2試合。それだけ我慢すれば良い」

 「ファンは123%のモラル的な支援ではあるが、財政的には3、4%の収入に貢献しているに過ぎない」

 「ファンに何と言えば良い? 『予算を守るために年会費を20倍にしたい』と言うのか?」

 ラ・リーガは判決を不服として州裁判所に上告することを決めている。

 大事なのはファンか? 視聴者か? 今後も見守っていきたい。


Photo: Getty Images

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ビジネス文化

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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