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ソシエダの本拠地「アノエタ」が保険会社への命名権売却で改名

2019.08.07

アノエタが「レアレ・セグロス・スタディウム」に

 今月1日からレアル・ソシエダのスタジアム、アノエタが「レアレ・セグロス・スタディウム」と呼ばれることなった。改名の理由はむろん、ユニフォームの胸スポンサーでもある総合保険会社のレアレ・セグロスがスタジアムの命名権を買ったからである。契約期間は6年、よって2025年まではレアレ・セグロス……と言われたら、「ああアノエタね」と頭の中で自動変換しなければならない。

 アノエタというのは、ソシエダのホームタウン、サン・セバスティアン市内の高級住宅街の名前。バスク地方の地形の特徴で川を中心に谷間になっており、スタジアムのすぐ近くに山や丘がある。アノエタ名物の突風や雷雨は、この特殊な地形のせいだ。これだけ自然に囲まれていながら、観光の中心地、旧市街やコンチャ海岸から市内バスで20分間も乗れば着いてしまう近さである。

 そんな「アノエタ」という名が持っている風土というか光景が、新しい名前からは微塵も感じられない。レアルならともかく「レアレ」なのは保険会社がイタリア系だからで、英語の「Stadium」をスペイン語読みして「スタディウム」では、どこのサッカー場なのか国籍不明でもある。

実はリーガ・エスパニョーラではまだ2例目

 日本ではお馴染みのネーミングライツだが、リーガ・エスパニョーラのスタジアムではアトレティコ・マドリーの「ワンダ・メトロポリターノ」に次いで2つ目。あちらは移転とともに改名したとあって反発は少なかったが、こちらはソシエダのファンから「アノエタはアノエタ。変えない!」という抗議の声が上がっており、改名反対の署名運動も始まっているようだ。

 だが、ネーミングライツに慣れた日本のみなさんなら容易に理解できるように、今さら抗議しても手遅れである。すでに現在改装中のスタジアムの改装費としてスポンサーのお金が注ぎ込まれているのだから。「事前にファンの了承を得るべき」という声もあるが、ソシエダは純然たる株式会社だからファンの意見に耳を傾ける義務はない。これがレアル・マドリー、バルセロナ、アスレティック・ビルバオ、オサスナのようなソシオが運営するクラブならソシオが投票で是非を判断できたのだろうが……。スタジアム名ではないが、バルセロナがエンブレムを変更しようとしてソシオの猛反発を喰って取り下げたことを記憶している方もいるかもしれない。

 いずれにせよ、メディアには企業の宣伝の片棒を担ぐ義務はないので、私はこれからも「アノエタ」あるいは「旧アノエタ」と呼ばせてもらう。リーガ・エスパニョーラを「リーガ・サンタンデール」(サンタンデールは銀行名)と呼んでこなかったように。


Photo: Getty Images

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ソシエダビジネス文化

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。