文 鈴木達朗
かつて日本代表FWの岡崎慎司や武藤嘉紀も在籍したマインツの監督が、LGBTパレードの支援者になった。6月28日の『キッカー』が報じている。
LGBTのパレード『クリストファー・ストリート・デイ』とは?
LGBTとは、レズビッシュ、ゲイ、バイセクシャル、そしてトランセクシャルといった性的マイノリティ一般を総称した言葉だ。マインツのサンドロ・シュバルツ監督は、マインツで行われるLGBTパレード『ゾンマー・シュビューレ(「夏の蒸し暑さ」の意)』の公式な後援者として、挨拶を行ったのだ。
このパレードは、ドイツ語圏では一般的に『クリストファー・ストリート・デイ』と呼ばれており、日本や英語圏では『ゲイ・パレード』あるいは『プライド・パレード』として認知されている。マインツでのパレードも、その一環だ。
1969年の6月28日に、世界で初めてLGBTをはじめとする性的マイノリティによって、米国のニューヨークにあるクリストファー・ストリートで行われた警察の暴力に対するデモを記念して毎年行われるようになった。
ブンデスリーガ現役監督が公式に支援する意義

ブンデスリーガの現役監督がこの運動に積極的に参加することには、二重の意味がある。ひとつは、ドイツのサッカー界では未だに同性愛がタブーの領域に属すること。元ドイツ代表のトーマス・ヒツルスペルガーがカミングアウトし、称賛を集めたものの、まだまだそういった動きはひと握りだ。
もうひとつは、この「クリストファー・ストリート」で警察の暴力の対象となったのは、黒人や中南米からやって来た性的マイノリティだったことだ。同性愛者への偏見や差別のうえに、さらに人種差別がのしかかる。シュバルツ監督は、このパレードへの支援と賛同をすることで、ドイツサッカー界に蔓延する差別や暴力に対して、明確な態度を表明したのだ。
シュバルツ監督は、「昨シーズンのマインツのロッカールームには、14カ国からの選手たちがひとつに団結していた。イスラム教徒の選手たちは、キリスト教徒や無神論者たちと共にプレーしていたし、さまざまな言語が入り混じっても、阿吽の呼吸でお互いを理解し合っていた」と話す。
サッカーを通じてマイノリティに寛容な社会を
さらに、「スタジアムでは未だに黒人の選手たちは人種差別の挑発を受け、女性はサッカーが理解できないと未だに思われていて、同性愛者たちが自身の恋心を打ち明けるのに大きな不安を感じている。多くの人々の頭の中には、“男”と“女”という性別しか容認できていない。だから、トランスジェンダーやインターセクシャルの人々にとって、社会のなかに居場所が見つけられていない」とシュバルツ監督はドイツの社会の現状を説明した。
そうして最後に、大きな注目を集めるサッカーだからこそできることを訴えた。
「だからこそ、自分たちが(影響力のある)プロサッカーの世界の公の舞台を使うことが重要になる。我々は、何度も繰り返し、常に大きな声で差別に反対し、多様性を認めるためのシグナルを発し続けなければならないんだ」
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