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南太平洋の風とフランスの風味。U-20W杯に挑むタヒチ代表と遭遇

2019.05.23

パリ行きの機内で出会った若者たち

 リーグアン第37節トゥールーズ対マルセイユ戦の取材を終えて、トゥールーズ空港からパリに戻る機内で、背中に『TAHITI FOOTBALL』と書かれたジャージを着た若者軍団に遭遇した。

 聞けば、最終目的地はポーランド。

 今月23日から始まるU-20ワールドカップに出場するU-20タヒチ代表のメンバーだ。

 タヒチでスポーツといえばカヌーが有名だが、南太平洋諸国の中ではサッカーも盛んで、2012年にはオセアニアサッカー連盟が主催するOFCネイションズカップに優勝して翌13年のコンフェデレーションズ・カップにも出場している。

 今回のU-20W杯には、昨年のオセアニアサッカー連盟U-19選手権に準優勝して、優勝国のニュージーランドとともに参戦。ホスト国のポーランド、コロンビア、そしてセネガルのいる、なかなか手強いグループAでの戦いに挑む。

タヒチとフランスの強い結びつき

 タヒチはフランス領ポリネシアの一部で、フランスの海外領土だ。

 なのでタヒチの選手はフランス代表を選ぶこともできるが、独自のサッカー連盟もあり、タヒチ・フットボール連盟(FTF)は1990年からFIFAやオセアニアサッカー連盟に加盟している。

 国内リーグを運営しているのもFTFだが、フランス・フットボール連盟の傘下でもあって、フランスの全クラブが参戦するフランス杯にも参加。過去には、フランス本土のクラブが、はるばるタヒチまでアウェー戦に赴いたこともある。

 フランス代表としてプレーしたタヒチ出身の選手としては、オセールに所属し、90年代に22の代表キャップを獲得したDFパスカル・バイールアがいる。

 そして彼のいとこであるストライカーのマラマ・バイールアも、ナントやニース、ロリアンなどで長くプレーしていたから、フランスのファンにもおなじみだ。

1998〜2004年にナントでプレーし、CL出場歴もある元タヒチ代表のマラマ・バイールア
マラマ・バイールア(左)は1998〜2004年にナントでプレーし、CL出場歴も

 黒髪をなびかせてゴールを射抜く姿は、ワイルド味があって印象的だった。現在39歳の彼は、タヒチに戻って地元のリーグやタヒチ代表でプレーするかたわら、FTFのテクニカルダイレクターも務めている。

 朝から元気いっぱいなU-20の選手たちに、「尊敬する選手は?」と尋ねたら、みんなが口をそろえて「バイールア!」と答えたほど、パスカルとマラマは、この国のアイドル的存在だ(ちなみに、好きな選手はクリスティアーノ・ロナウド派が多数。意外なことにフランスの寵児キリアン・ムバッペの名前は聞こえてこなかった)。

CAさんの粋なはからいに喝采

 タヒチに生まれ、17歳でナントの育成所に入団したマラマ・バイールアのように、この大会に参戦するU-20代表メンバーでも、3分の1はフランス本土の育成所に所属している。各クラブや代表のスカウトは、海外領土までくまなく目を光らせているから、地理的に遠く離れていても、フランスの情報網には必ずキャッチしてもらえるのだ。

 そしてそのうち2人は、昌子源が所属するトゥールーズのアカデミー生。酒井宏樹がプレーするマルセイユとの18日の試合はチーム全員でスタジアム観戦したそうで、
「サカイがかっこよかった!」
「ショージのプレーも良かった!」
と、日本人相手に気の利く発言も。これから始まるU-20W杯でも日本チームは優勝候補の一角だと、みんなが憧れをこめた口調で話していた。

 飛行機がシャルル・ドゴール空港に着陸すると、キャビンアテンダントは、
「シートベルト着用のサインが消えるまで……」
「棚の中のお荷物が滑り出すこともございますので……」
と定番のアナウンスを始めた。

 ひと通り話し終わったあと、フライト中もとってもフレンドリーだったそのキャビンアテンダントは、もう一度通話機を手に取った。

「タヒチ代表の、大会での活躍を心よりお祈りします! みんながんばって!!」

 たちまち機内からは大きな声援と拍手が。

 照れながらも、粋なはからいに喜ぶ選手たち。

 南太平洋の風を連れてやってきた彼らの、ポーランドでの善戦を願って……。

Photos: Yukiko Ogawa, Getty Images

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タヒチ代表文化

Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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