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サン・シーロに「異常な振動」。試合の途中で驚いて逃げた観客も

2019.05.12

「サポーターは恐怖を覚えている」

「サン・シーロが震撼する」

 9日、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』はそんな特集記事を出した。7万人以上を収容するミラノのサン・シーロに構造上の問題が出ているというのだ。「異常な振動がし、石灰が落ちてくる。サポーターは恐怖を覚えている」と一面につづり、「サン・シーロの状態はちゃんとモニタリングされているので問題はない」とする当局者の声と、「ここ数年感じなかった振動がする」「石灰も落ちてきた」というサポーターの証言をそれぞれ掲載し、真相の究明を訴えていた。

 問題となっていたのは、南側に位置する3段目のスタンド部分。1990年のイタリア・ワールドカップ開催に合わせて増設されたもので、1段目、2段目のスタンドはそのままに階層を増設する形で建造されている。それからおよそ30年の時が過ぎた今日、安全の懸念が叫ばれるようになった。

 4月7日のセリエA第31節インテル対アタランタ戦で、異常な振動が感知されたとの報告が当局になされた。サン・シーロの所有者であるミラノ市は有識者のもとで直ちに調査を開始し、振動が発生する状況の存在は認めたが「ただちに対策を要するものではない」と結論を出した。

 だが、4月27日のインテル対ユベントス戦は、観客の人数が多くなることから制限を課した。2500席用意されていたアウェーサポーター席を減らし、中心部分を空ける措置をしている。それでもガゼッタ・デッロ・スポルトは「コンクリートの破片や赤レンガのかけらが上から落ちてきて、試合の途中で驚いて逃げた観客もいた」と報じている。

1990年イタリアW杯を機に改修が行われてから29年が経ったサン・シーロ

当局は「危険なし」としているが……

 ただ当局は、現状においては「危険はない」と判断しているようである。

 サン・シーロの振動問題は2003年、スタジアムコンサートが催された時に端を発しており、以降は専門分析チームのもと13年間に渡ってモニタリングされている。ガゼッタ・デッロ・スポルトは10日に続報を出し、分析チームの主任であるミラノ工科大学のアルフレード・チガダ教授のインタビューを掲載。「振動は48のセンサーを張り巡らせて完璧にモニタリングしている。現在のところの振動は許容範囲内。(昨年10月の)ジェノバの高速道路橋崩落事件の関係で心理的な影響を感じる人もいるが、スタジアムに長年通っている人は振動は当たり前のものと考えている。実際現在の振動は13年前となんら変わりがない」と語っていた。

 ある建築技術者の分析によれば「シーズンオフにはスタジアムコンサートもいくつか催されるので、スタンドで観客が繰り返し飛び跳ねるような状況には注意が必要。ただ1カ月ほどの工事で(破片の落下などの)問題もおさまる」という。急にサン・シーロが使えなくなるような状況ではないとのことだ。

 ただ、今後には問題をややこしくしかねない懸念もひとつある。「インテルとミランは共同で新スタジアム建築を計画している。現状のサン・シーロで設備上の問題が発覚すれば、ミラノ市に支払う管理料の値下げを要求してくるに違いないと見るものもいる」などと現地メディアでは報道されている。クラブと市との間で管理料の押し付け合いが行われた結果、朽ちるに任せてしまったカリアリのスタジアム(現在改築中)の例もある。さすがに同じことの繰り返しにはならないと望むが……。

Photos: Getty Images

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サン・シーロビジネスミラン

Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。