2030年W杯、2029年クラブW杯、反欧州…インファンティーノFIFA会長がFFE計画撤回後も支持される理由
【特集】W杯売却構想はフットボールを壊すのか?#2
史上最多の出場48カ国が世界一の座を懸けて争った北中米W杯の熱も冷めやらぬうちに、フットボールは新たな分岐点に立たされた。閉幕直後の7月28日に、FIFA(国際サッカー連盟)が来年から始まる4年サイクルで211の加盟各国協会・連盟に従来の倍額となる2000万ドル(約32億円)を分配できるという大義名分の下、W杯や女子W杯、クラブW杯などの商業イベントの運営を担う民営子会社「FIFA Forward Enterprise」を新設し、その200億ドル(3兆2000億円)と評価される株式の少数を売却して今年中に最大42億ドル(約6720億円)もの資金を調達していく“秘密計画”が浮上したからだ。「フットボールは誰の所有物でもない。ましてやFIFAが売る権利を持つものではない」(UEFA/欧州サッカー連盟)――猛反発を受けたW杯売却構想はわずか4日後に撤回される運びとなったが、波紋や余波は今も消えぬまま。その攻防と是非、そして未来を専門家の視点も交えながら読み解いていく。
第2回では、主導したとされるW杯売却構想の撤回で辞任・解任論も渦巻くジャンニ・インファンティーノFIFA会長を、なぜいまだに一部の各国協会・連盟や大陸連盟は支持しているのか?彼ら支持派の思惑を『サッカーと地政学—ゴールの先に世界が見える―』(ワニブックス)の著者、木崎伸也氏が解説する。
「正義」の基準は、やはり利益や立場に左右されるものなのだろう。
国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長によるW杯運営会社「FIFA Forward Enterprise」設立と株式売却の計画は、猛反発を受けて発覚からわずか4日で頓挫した。インファンティーノの権威は地に落ち、辞任を求める声が高まっている。
それにもかかわらず、依然として現会長を支持する人たちが存在するのだ。
現時点で「インファンティーノ支持」を公表している主な各国協会・連盟や大陸連盟は次の通りだ。
【南米】アルゼンチン
【北中米】メキシコ、グレナダ、セントクリストファー・ネービス
【アラブ】モロッコ、エジプト、スーダン、ジブチ、モーリタニア、カタール、UAE、クウェート、レバノン
【アジア】インドネシア、フィリピン、モンゴル、ブータン、スリランカ
【大陸連盟】アフリカサッカー連盟、オセアニアサッカー連盟(ただしニュージーランドを除く)
欧州サッカー連盟(UEFA)、アジアサッカー連盟(AFC)、北中米カリブ海サッカー連盟が共同で不支持を表明する中、なぜ彼らは「金の亡者」を支持し続けるのだろう?
48→64へ?出場国拡大のナラティブは南米への配慮
結論から言えば、そこには利権、金、恩、ヨーロッパへの反発が関係している。
例えばアルゼンチンによる支持の裏にあるのは、2030年W杯の「64カ国拡大計画」だ。
インファンティーノによる撤回と謝罪の翌々日(8月7日)、アルゼンチンサッカー協会のクラウディオ・タピア会長はFIFAに次のような書簡を送った。
「(FIFAとインファンティーノ会長は)プロセスで犯した間違いを認め、211加盟協会へ向けて謝罪を伝えました。価値がある行動です」
「透明性のあるガバナンスに基づく過去10年間の取り組みを支持します。インファンティーノ会長のリーダーシップのもとで働き続けることをここに再確認します」
FIFA評議会のメンバーでもあるタピアはインファンティーノと個人的に親しく、チリの有力紙『ラ・テルセラ』はタピアを「インファンティーノの右腕」と呼んでいる。
ただし、タピアも盟友という理由だけで、世界中から非難を浴びせらせている人物に手を差し伸べないだろう。
タピアの支持の背景には2030年W杯の存在がある。
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Profile
木崎 伸也
1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。
