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失敗を恐れるがゆえ極める心技体。クリスティアーノ・ロナウド、PK通算232本中194本成功の秘密

2026.03.31

【特集】“もう一つのサッカー”PK戦の深層#6

90分で決着がつかなくても、試合は終わらない――2026年の百年構想リーグでJリーグは、リーグ戦としては異例のPK戦導入に踏み切った。W杯過去2大会で日本のベスト8を阻んだ壁。それがPK戦だった。Jリーグの日常に新たな景色が加わったこのタイミングで、“もう一つのサッカー”とも言えるPK戦の深層を多角的に考える。

第6回では、試合中のPKを218本中182本、試合後のPK戦では14本中12本と通算232本中194本を決めてきたクリスティアーノ・ロナウドについて。今夏には北中米の地で「最後のW杯」に臨む、言わずと知れた名キッカーが極めるPKの心技体とは?

 クリスティアーノ・ロナウドは試合中だけでも、21世紀で最多となる182本のPKを決めている。UEFAチャンピオンズリーグ(CL)やEURO、W杯など、重圧のかかる大舞台でもペナルティスポットから幾多のキックを沈めてきた。PKゴール数に関しては、CL(19点)とEURO(3点)で歴代1位、W杯においても歴代2位タイ(3点)。試合後のPK戦でも14本中12本を成功させている彼は、なぜこれほどまでにPKを得意としているのか。心理面、身体面、そして技術面から掘り下げていく。

「左右中央のどこに蹴ろうか混乱する時もある」PKの難しさ

 ロナウドのPKと聞くと、後方へ下がって深呼吸、肩の力を抜いてから助走に入り、強烈なシュートを放つおなじみの姿が頭に浮かぶ。

 EURO2024ラウンド16のスロベニア戦(○0-0/PK3-0)では、PK戦で計測された彼の心拍数が話題になった。延長前半終了間際のPKは名手ヤン・オブラクに止められ、もう後がない120分の激闘後の極限状態。さらにPKを徹底分析した書籍『膨大な取材とデータが解き明かす12ヤードの攻防に隠された真実(原題:Twelve Yards)』(カンゼン)の著者でもあるジャーナリストのベン・リトルトンによればPK戦は緊張感が異なるといい、「何よりも怖いのがハーフウェイラインからペナルティスポットまでの長い歩み」と指摘するように、その間に仲間のもとを離れて孤独感に襲われるキッカーは迷いや恐れに苛まれやすいことが、彼も登場した『FIFA+』のドキュメンタリー番組で元選手たちの証言からも明らかとなっている。そんな逆境の中、ロナウドは後攻の1番手のキッカーを務めながらも心拍数をPK戦中の最低値にまで下げて今度こそ成功。本人は勝利後にPK失敗の理由を「混乱したため」と明かしていたが、名キッカーとして知られる彼をもいまだ動揺させた事実に、PKの難しさが表れている。

 「時にしてPKを決めるのは難しいものです。私はキャリア通算で200を超えるPKを蹴ってきましたが、左右中央のどこに蹴ろうか混乱する時もあります」(ロナウド)

 それでも彼は常々あえて自らを重圧のかかる状況や環境へと追い込む。2015-16シーズンのCL決勝(1-1/PK5-3)のアトレティコ・マドリーとのPK戦では、自ら5人目のキッカーに志願。オブラクの逆を突き、レアル・マドリーを通算11回目の欧州王者へ導いたこともあった。

 「絶対に決めなければいけませんでしたし、自分が最後にPKを決める予感がありました。(ジネディーヌ・)ジダン監督へ最後のキッカーにするようお願いしたのは私です。結果的にすべてがうまくいきました。個人としても3回目のCL優勝を成し遂げられ、最高の夜になりましたよ」

「緊張は素晴らしいもの」失敗を人一倍恐れるがゆえの練習の虫

 どんな局面でも落ち着きを失わないと思われているロナウドであるが、本人は「緊張」や「失敗への怖れ」を感じているという。ユベントス時代の2019年に母国のTV局をトリノの自宅へ招いたインタビューでは、リポーターから「試合の命運を左右するPKなどを任されることに緊張や恐怖は感じないのですか?」と問われ、こう答えている。

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Profile

ゴンサロ

大学時代にポルトガルのリスボンへ留学。現地エスタディオ・ダ・ルスの熱狂的雰囲気に圧倒され、ベンフィカの虜となる。趣味はベンフィカやポルトガル代表の試合観戦を目的とした海外旅行。ポルトガルサッカーに関するニッチな情報を日々SNSにて発信している。X:@BergkamPutin

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