痛感した1点の重み。会長が明かす胸中、2部ランスと3兄弟の行方はいかに
Allez!ランスのライオン軍団
2024-25シーズン総括 #6
待ち受けていた「地獄」の結末。伊東純也と中村敬斗の両エースが牽引し、冬には関根大輝が加わった今季、スタッド・ランスはフランス・リーグ1で16位、入れ替え戦の末に7季ぶりの2部降格を余儀なくされた。その奮闘模様を定点観測してきた連載コラムの特別編として、若き獅子軍団の、そして3兄弟それぞれの2024-25シーズンを振り返る。
第6回は、“逆転残留”の望みも潰えた今、あらためて考えたいランスの敗因と、続々と主力が流出する中、2025-26シーズンに向けて始動した新チームについて。
「誰もリヨンが本当に降格するとは思っていなかった」
シーズン中もなにかと波乱の連続だったスタッド・ランスのドキドキ、ハラハラは、このオフになっても続いた。
リーグ優勝7回を誇るオランピック・リヨネ(リヨン)が経営状況の悪化により、2部リーグ降格という処分を受けたことで、ランスにまさかの残留の可能性が浮上したのである。
だが当然ながらリヨンは再審査を請求。7月9日に行われた公聴会で、新会長の下、安定した経営状態を維持できることを証明すると、晴れてリーグ1残留が認められ、ランスの大逆転劇も消滅したのだった。
まあしかし、リヨンが降格処分になることを信じていた人はそれほど多くなかった。ランスのジャン・ピエール・カイヨ会長も、
「どうなるのだろう、という不安定な時期を過ごしてはいなかった。なぜなら、誰もリヨンが本当に降格処分になるだろうなどとは思っていなかったからだ。なのでとっくに気持ちは切り替えていた」
と、もとより2025-26シーズンはリーグ2が戦いの場となることを想定して、新シーズンへの準備に取りかかっていると語っていた。
それにしても、あらためて2024-25シーズンの開幕当時を振り返ると、まさか降格するなんて、という気持ちが湧いてくる。
ホームで幕を開けたシーズン初戦、対リール戦後の伊東純也と中村敬斗のコメントも期待に満ちていた。
「個人としてもチームとしても、昨年より良い結果を出すということができればいいと思います」(伊東)
「昨シーズンより良い順位で。目標は6位以内で、ヨーロッパリーグとかに出たいです!」(中村)
2023-24シーズンはトップハーフの9位で終えていた。それよりも上、つまりは欧州カップ戦出場権を狙うのは、この時点では十分現実的に思われた。
開始15分で退場者を出し、試合の大半を10人で戦った開幕戦は0-2で敗れたが、ル・アーブルを2部から1部に昇格させた手腕を買われて新監督に迎えられたスロベニア人指揮官ルカ・エルスナーの下、次のマルセイユ戦には2-2で引き分けると、そこから6試合無敗を継続。4位まで順位を上げる幸先のいいスタートを切った。



前半戦は危機感なし、残り4戦で一安心、それがまさか…
その後、第8節オセール戦から3連敗を喫したが、冬の休暇に入る前の前半戦を消化した時点では、まだ危機感はなかった。
その第15節モナコ戦の後、伊東は、
「3連敗したのが一番痛かったというのがあります。あそこまでは良い流れでこられていたと思うんで、3連敗がなければもっと上の順位にいたかな……」
と10位で終えた前半戦を振り返り、
「どこのチームもそうだと思うんですけど、全体的にそういうの(代表戦での疲れ)はあったと思う」
と9、10、11月の3カ月にわたって続いた代表ウィーク後のコンディション事情を要因に挙げていた。
中村も、
「結果的には昨シーズンを超えている(15試合6ゴール)。取れるだけ点を取りたいし、アシストももうちょっと増やしたいと思うんで、あと19試合で勝ち点を伸ばして、自分のパフォーマンスも腕(第12節リヨン戦での右手骨折)を治して上がってきて……と考えたら、まあまあプラスです」
と自身のパフォーマンスについて充実感をにじませつつ、
「後半戦、チームとして勝ち続けて、どこかで連勝してグッと順位を上げたいですね。6位圏内に入れれば、と思うので。まだまだ19試合あるので、頑張りたいです!」
と年明けからの挽回を誓っていた。
……
Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。
